学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

仮定法過去と仮定法過去完了の違いって何?

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

いきなりですが、みなさんに質問です。
アニメや漫画の主人公で、自分がなってみたいキャラクターはいますか。

ちなみに、私はドラえもんになってみたいです。
あれだけ多種多様な道具を使いこなせたらきっと楽しいですよね。のび太君と予期せぬハプニングを経験するのも、また面白そうです。

もしドラえもんになったら、まず何がしたいかというと……
未来に行くのは怖いので(自分の老いに直面したくありません!)、タイムマシンで過去に戻って「もっと勉強しなさい!」と自分に言いたいです(バイト三昧だったので……)。

みなさんはいかがですか。

こんな話をしていると、「そんな妄想はやめなさい!」と言われそうですが、「もし~なら」のように、空想や叶えられない願望を口にすることはよくありますよね。

今回は、そんな「空想」や「願望」を英語で話す時に使う「仮定法」をご紹介します!

1. 仮定法過去とは?

「仮定法」とはその名の通り、「仮定の話をする時に使用する文法」のことです。「もしドラえもんだったら……」というのは空想、つまり「現在の事実に反する仮定の話」をしていますよね。

先ほどの私の空想は、こんな風に英語で言うことができます。

If I were Doraemon, I would go back to the past.<仮定法過去>
(もし私がドラえもんなら、過去に戻るだろうに。)
 →(でも実際は、ドラえもんではない。だから過去に戻らない。)

  • <仮定法過去>
  • if+主語+動詞の過去形 ~, 主語+would[could / might]動詞の原形
  • (もし~なら、…するだろうに[…できるのに/…かもしれないのに]。)

ポイントは、if などで始まる条件節(if節)は過去形、そして結論を表す帰結節は過去形助動詞+動詞の原形になっている点です。
「今、話しているのは仮定の話です!」「これは空想の話です!」と明示するために、過去形を用いるんですね。そして、条件節の主語が何であってもbe動詞は were を使うのも「仮定法過去」の特徴です(最近は、くだけた表現では was もよく使われるようです)。

ちなみに、なぜ過去形を用いるのかというと……
「過去」というのは、「現実」から少し離れたところにある時制だと考えられます。そこで、過去形を用いることで「現実」世界から距離を取り、「仮定(空想)の話だ」と伝えることができるのです。そのため、「仮定法過去」と呼ばれています。
「現在の空想」は「過去形で語る」と覚えましょう! 

いくつか例文を見てみましょう。

If I had enough money, I could buy a car.
(もし私が十分にお金を持っていたら、車を買えるだろうに。)
 →(でも実際は、お金を持っていない。だから買えない。)

If I could speak English, I would move to America.
(もし私が英語を話せたら、アメリカに引っ越すだろうに。)
 →(でも実際は、英語を話せない。だから引っ越さない。)

If my parents agreed, I might have a pet.
(もし両親が賛成してくれたら、私はペットを飼うかもしれないのに。)
 →(でも実際は、両親は賛成していない。だからペットは飼わない。)

上記はすべて「仮定法過去」の文で、「現在の事実とは反対の仮定・想像」をしています。
条件節(if節)は過去形、帰結節は過去形助動詞+動詞の原形になっていますね!

2. 仮定法過去完了とは?

冒頭で、「ドラえもんになったらタイムマシンで過去に戻りたい」と言いました。
それでは次に、過去のあるときを思い出して、「もし(過去に)~していたら…していただろうな、けれどもそうはならなかった」という想いはありませんか?

そこで、少し想像してみましょう。
みなさんには試験に受からなかった過去があり、
その過去を振り返りながら「もしもっと勉強していたら、試験に受かっていただろう」と「過去の事実とは反対の仮定・空想」をしています。英語で表現してみましょう。

If I had studied harder, I would have passed the exam. <仮定法過去完了>
(もし私がもっと勉強していたら、試験に受かっていただろう。)

  • <仮定法過去完了>
  • if+主語+had+過去分詞 ~, 主語+would[could / might]have+過去分詞
  • (もし~だったら、…しただろう[…できただろう/…かもしれなかった]。)

先ほど説明した「仮定法過去(現在の空想)」から「仮定法過去完了(過去に対する空想)」へと時制が1つ過去の方に移動し、表現方法も変化したことに気が付きましたか。

では、それぞれの表現方法を整理してみましょう。
下線部分の違いに注目してみてください。

  • 仮定法過去:現在の空想(もし~なら…するだろうに[…できるのに/…かもしれないのに]。)
  • ⇒ if+主語+過去形 ~, 主語+would[could / might]動詞の原形
  • 仮定法過去完了:過去に対する空想(もし~だったら…しただろう[…できただろう/…かもしれなかった]。)
  • ⇒ if+主語+過去完了形 ~, 主語+would[could / might]have+過去分詞

「過去に対する空想(もし~だったら、…しただろう。)」は、if節に過去完了形(had+過去分詞)が用いられていることから「仮定法過去完了」と呼ばれています。

この「仮定法過去完了」は「過去の後悔」のニュアンスも表せます。

If I had eaten breakfast, I wouldn’t have been hungry during the test.
(もし朝ごはんを食べていたら、テスト中にお腹が空くことはなかったのに。)
 →(でも実際は、朝ご飯を食べなかったのでお腹が空いてしまった。)

こんな風に、「朝ごはんを食べていたら……」という、日常生活でよくある小さな後悔も表すこともできます。

3. If を使わない仮定法

ここまで、「仮定法」では 条件節(if節)と帰結節によって、「現在の空想」(仮定法過去)や「過去に対する空想」(仮定法過去完了)を表すと説明しました。

実は、if という形を使わなくても、他の語句で仮定を表現することが可能です!
今回は、よく使われる2つをご紹介します。

1つ目は with / without を用いる文です。

  • With a little more patience, you would succeed.
  • (= If you were a little more patient, you would succeed. )
  • (もう少し注意深かったら、あなたは成功するだろうに。)
  • <would+動詞の原形(~するだろうに)>という形で「現在の空想」を表しています。
  • I couldn’t have succeeded without your cooperation!
  • (= If I had not got your cooperation, I couldn’t have succeeded. )
  • (みなさまのご協力なしでは、私は成功できなかったでしょう。)
  • <could+have+過去分詞(~できただろう)>という形で「過去のことについての空想」を表しています。

if節の代わりに with / without を使って「もし~があったら/もし~がなかったら」と表現できるんですね!

2つ目は I wish を用いる文です。
I wish を伴う文は、実現できそうにない「願望」を表現する時に使います。

  • I wish I could play the piano.
  • (ピアノが弾けたらいいなぁ。)
  • <could+動詞の原形>で「(今)~ならなぁ」となり、「現在の願望」を表しています。
  • I wish you could have joined my birthday party.
  • (あなたが私の誕生日会に参加できたらよかったなぁ。)
  • <could+have+過去分詞>で「(過去に)~だったらなぁ」となり、「過去に対する願望」を表しています。

1つ目の例文は、現在の実現困難な願望、2つ目の例文は、過去の実現しなかった願望をそれぞれ表していますね。

いかがでしょうか。
「仮定法」には今の空想を語る「仮定法過去」過去に対する空想を語る「仮定法過去完了」があることを学びましたね!

I wish I could give you a lecture in person!
(直接、みなさんに講義ができたらいいのになぁ!)

でも、こうしてコラムの中だけでも十分学んでいただけたら幸いです!

ではまた!