駒井先生の習ったつもり!? の英文法 #14 仮定法 if「もし~なら」をマスターしよう!
学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。
仮定法過去と仮定法過去完了の違いって何?
みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。
いきなりですが、みなさんに質問です。
アニメや漫画の主人公で、自分がなってみたいキャラクターはいますか。
ちなみに、私はドラえもんになってみたいです。
あれだけ多種多様な道具を使いこなせたらきっと楽しいですよね。のび太君と予期せぬハプニングを経験するのも、また面白そうです。
もしドラえもんになったら、まず何がしたいかというと……
未来に行くのは怖いので(自分の老いに直面したくありません!)、タイムマシンで過去に戻って「もっと勉強しなさい!」と自分に言いたいです(バイト三昧だったので……)。
みなさんはいかがですか。
こんな話をしていると、「そんな妄想はやめなさい!」と言われそうですが、「もし~なら」のように、空想や叶えられない願望を口にすることはよくありますよね。
今回は、そんな「空想」や「願望」を英語で話す時に使う「仮定法」をご紹介します!
1. 仮定法過去とは?
「仮定法」とはその名の通り、「仮定の話をする時に使用する文法」のことです。「もしドラえもんだったら……」というのは空想、つまり「現在の事実に反する仮定の話」をしていますよね。
先ほどの私の空想は、こんな風に英語で言うことができます。
If I were Doraemon, I would go back to the past.<仮定法過去>
(もし私がドラえもんなら、過去に戻るだろうに。)
→(でも実際は、ドラえもんではない。だから過去に戻らない。)
- <仮定法過去>
- if+主語+動詞の過去形 ~, 主語+would[could / might]+動詞の原形 …
- (もし~なら、…するだろうに[…できるのに/…かもしれないのに]。)
ポイントは、if などで始まる条件節(if節)は過去形、そして結論を表す帰結節は過去形助動詞+動詞の原形になっている点です。
「今、話しているのは仮定の話です!」「これは空想の話です!」と明示するために、過去形を用いるんですね。そして、条件節の主語が何であってもbe動詞は were を使うのも「仮定法過去」の特徴です(最近は、くだけた表現では was もよく使われるようです)。
ちなみに、なぜ過去形を用いるのかというと……
「過去」というのは、「現実」から少し離れたところにある時制だと考えられます。そこで、過去形を用いることで「現実」世界から距離を取り、「仮定(空想)の話だ」と伝えることができるのです。そのため、「仮定法過去」と呼ばれています。
「現在の空想」は「過去形で語る」と覚えましょう!
いくつか例文を見てみましょう。
If I had enough money, I could buy a car.
(もし私が十分にお金を持っていたら、車を買えるだろうに。)
→(でも実際は、お金を持っていない。だから買えない。)
If I could speak English, I would move to America.
(もし私が英語を話せたら、アメリカに引っ越すだろうに。)
→(でも実際は、英語を話せない。だから引っ越さない。)
If my parents agreed, I might have a pet.
(もし両親が賛成してくれたら、私はペットを飼うかもしれないのに。)
→(でも実際は、両親は賛成していない。だからペットは飼わない。)
上記はすべて「仮定法過去」の文で、「現在の事実とは反対の仮定・想像」をしています。
条件節(if節)は過去形、帰結節は過去形助動詞+動詞の原形になっていますね!
2. 仮定法過去完了とは?
冒頭で、「ドラえもんになったらタイムマシンで過去に戻りたい」と言いました。
それでは次に、過去のあるときを思い出して、「もし(過去に)~していたら…していただろうな、けれどもそうはならなかった」という想いはありませんか?
そこで、少し想像してみましょう。
みなさんには試験に受からなかった過去があり、
その過去を振り返りながら「もしもっと勉強していたら、試験に受かっていただろう」と「過去の事実とは反対の仮定・空想」をしています。英語で表現してみましょう。
If I had studied harder, I would have passed the exam. <仮定法過去完了>
(もし私がもっと勉強していたら、試験に受かっていただろう。)
- <仮定法過去完了>
- if+主語+had+過去分詞 ~, 主語+would[could / might]+have+過去分詞 …
- (もし~だったら、…しただろう[…できただろう/…かもしれなかった]。)
先ほど説明した「仮定法過去(現在の空想)」から「仮定法過去完了(過去に対する空想)」へと時制が1つ過去の方に移動し、表現方法も変化したことに気が付きましたか。
では、それぞれの表現方法を整理してみましょう。
下線部分の違いに注目してみてください。
- 仮定法過去:現在の空想(もし~なら…するだろうに[…できるのに/…かもしれないのに]。)
- ⇒ if+主語+過去形 ~, 主語+would[could / might] +動詞の原形
- 仮定法過去完了:過去に対する空想(もし~だったら…しただろう[…できただろう/…かもしれなかった]。)
- ⇒ if+主語+過去完了形 ~, 主語+would[could / might]+have+過去分詞
「過去に対する空想(もし~だったら、…しただろう。)」は、if節に過去完了形(had+過去分詞)が用いられていることから「仮定法過去完了」と呼ばれています。
この「仮定法過去完了」は「過去の後悔」のニュアンスも表せます。
If I had eaten breakfast, I wouldn’t have been hungry during the test.
(もし朝ごはんを食べていたら、テスト中にお腹が空くことはなかったのに。)
→(でも実際は、朝ご飯を食べなかったのでお腹が空いてしまった。)
こんな風に、「朝ごはんを食べていたら……」という、日常生活でよくある小さな後悔も表すこともできます。
3. If を使わない仮定法
ここまで、「仮定法」では 条件節(if節)と帰結節によって、「現在の空想」(仮定法過去)や「過去に対する空想」(仮定法過去完了)を表すと説明しました。
実は、if … という形を使わなくても、他の語句で仮定を表現することが可能です!
今回は、よく使われる2つをご紹介します。
1つ目は with / without を用いる文です。
- With a little more patience, you would succeed.
- (= If you were a little more patient, you would succeed. )
- (もう少し注意深かったら、あなたは成功するだろうに。)
- ※<would+動詞の原形(~するだろうに)>という形で「現在の空想」を表しています。
- I couldn’t have succeeded without your cooperation!
- (= If I had not got your cooperation, I couldn’t have succeeded. )
- (みなさまのご協力なしでは、私は成功できなかったでしょう。)
- ※<could+have+過去分詞(~できただろう)>という形で「過去のことについての空想」を表しています。
if節の代わりに with / without を使って「もし~があったら/もし~がなかったら」と表現できるんですね!
2つ目は I wish … を用いる文です。
I wish … を伴う文は、実現できそうにない「願望」を表現する時に使います。
- I wish I could play the piano.
- (ピアノが弾けたらいいなぁ。)
- ※<could+動詞の原形>で「(今)~ならなぁ」となり、「現在の願望」を表しています。
- I wish you could have joined my birthday party.
- (あなたが私の誕生日会に参加できたらよかったなぁ。)
- ※<could+have+過去分詞>で「(過去に)~だったらなぁ」となり、「過去に対する願望」を表しています。
1つ目の例文は、現在の実現困難な願望、2つ目の例文は、過去の実現しなかった願望をそれぞれ表していますね。
いかがでしょうか。
「仮定法」には今の空想を語る「仮定法過去」、過去に対する空想を語る「仮定法過去完了」があることを学びましたね!
I wish I could give you a lecture in person!
(直接、みなさんに講義ができたらいいのになぁ!)
でも、こうしてコラムの中だけでも十分学んでいただけたら幸いです!
ではまた!
TOEIC 990点(満点)、英検1級。神田外語学院、共立女子大学講師。大手企業でもTOEICの指導にあたる。外資系企業勤務を経て、英語講師へと転身。著書に『TOEIC(R) L&Rテスト はじめて受験のパスポート』(旺文社)、『TOEIC L&R TEST 200問音読特急 瞬発力をつける』(朝日新聞出版)、『1か月で復習するTOEIC(R) L&Rテスト 基本の500単語』(語研)などがある。