学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

「道具や手段」を表す with a stone と by a stone、違いがわかるかな?

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

早速ですが問題です!
下記の文の空所には、共通した前置詞が入ります。
その前置詞は何でしょう?

  1. Why don’t you go (   ) him?
  2. He took a picture (   ) his smartphone.
  3. She was standing (   ) her back against the wall.
  4. Don’t speak (   ) your mouth full.
  5. I was sitting in the chair (   ) my legs crossed.

ヒント:[ in / with / on / over / by / until ]の中に正解があります!

いかがでしたか? ちょっと難しかったかもしれませんね。
答えは…

前置詞の with です!

この前置詞 with は用途が多岐にわたります。

今回は上記の例文を1つ1つ解説しながら、前置詞 with の使い方3つを説明していきます!

1. 随伴・同伴を表す

1. Why don’t you go with him?
 (彼と一緒に行ったらどうですか?)

この with は「~と一緒に、~とともに」という意味で、「随伴・同伴」を表します。みなさんにとって、一番馴染みのある使い方かもしれませんね!

<with+人>
Why don’t you go with him?  (彼と一緒に行ったらどうですか?)

<with+物など>
I like coffee with milk. (私はミルクコーヒーが好きです。)
※coffee with milkは「ミルクを伴ったコーヒー」という意味です。

It comes to $100 with shipping. (送料込みで100ドルになります。)
※with shipping は「送料を伴って」という意味です。
※come to ~ は「合計で~になる」という意味です。

このように、with の後ろには「人」以外の単語も置かれる点も覚えておきましょう!

また、あくまでも with 以下に置かれたものが「添え物」になります。
つまり、coffee with milk といえば主体はコーヒーで、ミルクは添え物ということになります。milk with coffee はその逆になりますが、一般的には milk with coffee という言い方はしません。また、tea with lemonといえば主体は紅茶で、レモンは添え物です。

2. 道具・手段を表す

2. He took a picture with his smartphone.
 (彼はスマートフォンで写真を撮りました。)

この with は「(道具)を使って」という意味です。with の後ろには使用される道具や手段が入ります。

この例文では、写真を撮る道具として smartphone(スマートフォン)が入っていますね!

<with+道具:~で、~を使って>
She ate sushi with chopsticks. (彼女は寿司を箸で食べました。)
The speaker pointed at a chart with his pen. (その話者はペンでグラフを指しました。)

ここで「手段を表すことができる with と by、どう違うの?」と思った方もいらっしゃると思います。

確かに I go there by bus.(私はそこにバスで行きます。)のように by も「手段」を表すことができますね。この場合、by の後ろに来ているのは「交通手段」です。

また、I sent you an invitation by e-mail.(メールで招待状を送りました。)のように言うこともできますが、この場合は「連絡手段」を表しています。このように by の後ろには「交通手段」「連絡手段」が多く置かれます。

また、with の場合は、人の意思で人が操りながら使う「道具や手段」の場合に使用されます。

2つの例文を見てみましょう。
a. The vase was broken by a stone.
b. The vase was broken with a stone.

両方とも、「花瓶が石で割れました」という意味です。
例文 a は「花瓶が割れた原因は石だ」という意味になるのに対し、例文 b は「誰かが意図的に石を道具として使って割った」と読み取れます。

そのため、人の意図が関連しない場合は、with ではなく by を使います。
次の例文を見ると、よりイメージしやすくなるでしょう。
The building was struck by lightning.(その建物は雷に打たれました。)

3. 付帯状況を表す

例文3~5をもう一度見てみましょう!

3. She was standing with her back against the wall.
 (彼女は壁を背にして立っていました。)

4. Don’t speak with your mouth full.
 (口をいっぱいにしたまま話してはいけません。)

5. I was sitting in the chair with my legs crossed.
 (私は足を組んで椅子に座っていました。)

これらの例文で使われている with は「~の状態で、~のままで」という意味で、その時に起こっている状況を補足的に説明していることから、「付帯状況の with」と呼ばれています。

<with+O(目的語)+C(補語) : OがCの状態で>
※OとCが「イコールの関係」になっています。

with の後ろに注目しながら、OとCの関係を1つ1つ確認していきましょう!
OとCの関係をわかりやすくするために、OとCの間にbe動詞を挟み込み、<O+be動詞+C>とすると、より解釈がしやすくなります。

She was standing with her back against the wall.
⇒壁を背にして(her back is against the wall / OとCがイコールの関係)

Don’t speak with your mouth full.
⇒口がいっぱいの状態で(your mouth is full / OとCがイコールの関係)

I was sitting in the chair with my legs crossed.
⇒足が組まれた状態で(my legs are crossed / OとCがイコールの関係)

いかがでしょうか? with の後ろの「OとCの関係」がつかめましたか?

ここでCの位置にくることができる語句を整理しておきましょう。

① 形容詞

Don’t speak with your mouth full.
(口をいっぱいにしたまま話してはいけません!)
※形容詞 full

② 過去分詞・現在分詞

I was sitting in the chair with my legs crossed.
(私は足を組んで椅子に座っていました。)
※過去分詞 crossed

They were reading a book with their eyes shining.
(彼らは目を輝かせながら本を読んでいました。)
※現在分詞 shining

③ 副詞

Please enter the room with you shoes on.
(靴を履いたまま、部屋にお入りください。)
※副詞on

④ 前置詞句

He was walking with his hands in his pockets.
(彼は両手をポケットに入れたまま歩いていました。)
※前置詞句 in his pockets

この「付帯状況の with」、少し上級者向けの使い方ではありますが、ニュースの記事やエッセイ、小説、そしてもちろんTOEICや英検の中でも多く使用されています! ぜひ覚えておきましょう!

今回は with の1.随伴・同伴、2. 道具・手段、3. 付帯状況を学びました!

I hope you will come back here and learn with me again!
みなさんが、またここ(このコラム)に戻ってきてくださり、私と学習してくださることを願っております!

ではまた!