学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

【利益】と【被害】のhave!?

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

私は先週、美容院へ行き、髪の毛を切ってきました。みなさんは行きつけの美容院はありますか? 私は3年前、車で20分かけて通っていた美容院に行くのをやめて、近所の美容院に変えました。家から一番近い美容院を選んで行ったのですが、なんと、驚いたことに、そこの美容師さん(兼、オーナー)は娘が通っている保育園の違うクラスの子のパパでした。

世間って本当に狭いですよね。

さて、前置きが長くなりましたが、この、「私は先週、髪を切りました」という表現を英語で言えますか? 英会話では、話題にしやすい話なので、覚えておいて損はないはずです!

しかも! この文には、みなさんにぜひ覚えていただきたい文法のポイントがあるので、今回はこちらをテーマにお話しします。まずは、「私は先週、髪を切りました」と、英語ではどう言うのか確認しておきましょう。

・私は先週、髪を切りました。:I had my hair cut last week.

こんなふうに言うことができます。
日本語で「ヘアーカット」と言ったりするので、この文を聞くと、my hair cut がひとくくりの単語のように感じる人もいるのではないかと思います。

でも、そうではないんです!
実はこちらは、次のような文法で成り立っています。

I + have (had)目的語過去分詞

(私は目的語~してもらうしてもらった))

この have は、主に「切ってもらう」のように「~してもらう」という時に使います。よく使われる一般動詞の have「持っている」とは異なる使い方です。

前述の例文をこの文法に当てはめると、下記のような構造になります。

I had my hair cut last week. (私は先週、切ってもらった。)

※cutは動詞cut(切る)の過去分詞

ここでは、先週のことを話しているため、have が過去形の had になっていますね。そして my hair が目的語、cut が過去分詞なので、had が「~してもらった」の役割を果たしています。

さて、この <have + 目的語 + 過去分詞> の使い方をもう少し練習してみましょう。
次の2つの日本文を、have(もしくはhad)を使って英文に書き換えてみましょう。

 1. 私は車を直してもらいました。

 2. 私はスーツを作ってもらいました。

いかがですか? 両方とも、同じ文法を使って書くことができます。

正解は次のようになります。

 1. I had my car fixed. (私は車を直してもらいました。)

  ※fixedは動詞fix(直す)の過去分詞

 2. I had a suit made. (私はスーツを作ってもらいました。)

  ※madeは動詞make(作る)の過去分詞

できましたか?

こんなの簡単! と思っていただけたみなさんへ、もう1つお伝えしたいことがあります。

この <have + 目的語 + 過去分詞>、ほかにも意味があるんです。

今までの例文は全て「~してもらう(もらった)」という意味でしたね。髪を切ってもらうことや、車を直してもらうこと、スーツを作ってもらうことも全て、やってもらって「うれしいこと」ですよね。

つまり、【利益】となることを「してもらう」時に <have + 目的語 + 過去分詞> を使って表現しました。

一方で、<have + 目的語 + 過去分詞> は【被害】となることを「~される(された)」と表現する時にも使うこともできるんです。

例えば…

私はパソコンを壊されました。
実際に私は、当時2歳だった息子に、パソコンのキーボードを剥がされて壊された苦い思い出があります…。(パリパリ剥がすのが当時の彼のブームでした…。)

これは明らかに【被害】ですよね。

この文も、同じような手順で英文にできます。書いてみましょう。

I had my laptop broken. (私はノート型パソコン壊されました。)

※brokenは動詞break(壊す)の過去分詞

いかがでしたか。

では、もう少し【被害】を表現する文をみてみましょう。

 1. I had my wallet stolen yesterday. (私は昨日、財布盗まれました。)

  ※stolenは動詞steal(盗む)の過去分詞

 2. I had my house damaged by typhoon. (私は台風で家が損傷しました[損傷させられた]。)

  ※damagedは動詞damage(損傷を与える)の過去分詞

このように、<have + 目的語 + 過去分詞> を使って【利益】と【被害】の両方を表現することができます。

「なぜ目的語の後に過去分詞を置くんだろう?」と疑問を持った方もいると思いますが、目的語と過去分詞の関係を見れば納得がいきますよ。

 My hair was cut. (私の髪の毛は切られた。)

 My wallet was stolen yesterday. (私の財布が昨日盗まれた。)

こんなふうに、目的語と動詞の関係が「受動態」の文の主語と動詞に対応しているからだと考えると、文法のポイントも理解しやすいかと思います。ただし、「受動態」の場合は事実を客観的に述べているのに対し、have を用いた文では、当事者が主語であり、当事者から見た表現になります。

さて、最後に文法事項のおさらいをして終わりましょう!

<have + 目的語 + 過去分詞> の使い方

I + have (had)目的語過去分詞

(私は目的語~してもらうしてもらった))

【利益】I had my hair cut. (私は髪の毛切ってもらいました。)

【被害】I had my laptop broken. (私はノート型パソコン壊されました。)

今日もよくがんばりました!