学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

「背が高い」と「より背が高い」、どう言い分ける?

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

最近、小学校6年生の息子の背がどんどん伸びてきました。
きっと近々、「息子は私より背が高い」という状況になることは間違いありません。

そして、一番の恐怖は「息子の方が背が高いのに、体重は私の方がかなり重い」となることです…。

さて、身の上話はこの辺にして…
もう今回のテーマは察しがつきますね!
今回は、この「…より~だ」と、何かと何かを比較する時の表現を学んでいきましょう!

1. 基本的な比較級の作り方

動詞の元の形を「原形」といいますが、形容詞と副詞の元の形は「原級」と呼びます。

「息子は背が高い」の「高い」が形容詞ですが、日本語の場合、「息子は私より背が高い」のように比べる時、形容詞の形(高い)を変更する必要はありませんね。

しかし、英語の場合、何かと何かを比較する時には、この形容詞を「原級」から「比較級」に変える必要があります!
この場合、英語では <S+V+比較級+than+比較対象:Sは(比較対象)よりも~だ> のように文を作ります。

基本的な「比較級」の作り方はこちら。
規則的なルールに従って比較級を作るので「規則変化」と呼ばれます。

① 原級の語尾に –er をつける語

原級 比較級
1音節*の単語 tall(高い) / cool(涼しい)
fast(速い) / hard(難しい)
taller / cooler
faster / harder

* 「音節」というのは単語を発音する時の音のまとまりの単位です。(例)1音節: tall 、2音節:famous (有名な)/ useful(役に立つ)など。辞書を引くと、famous は fa・mous、useful は use・ful のように、音節ごとに区切った表記が書いてあります。

ただし、一部の2音節の語も -er をつけて比較級を作る場合があります。
(例)語尾が -y で終わる語 hap・py(幸せな) → happier
   語尾が -er で終わる語 clev・er (利口な)→ cleverer

▼ 語尾に -er をつけるときに注意すべき語

原級 比較級の作り方 比較級
発音しない -e で終わる語 nice(良い)/ large(大きい) -e を取って、-er をつける nicer / larger
子音字+y で終わる語 easy(易しい)/ busy(忙しい)/ pretty(きれいな) -y を i に変えて -er をつける easier / happier / prettier
短母音+子音字1つで終わる語 big(大きい)/ hot(暑い) 子音字を重ねて
-er をつける
bigger / hotter

② 前に more をつける語

原級 比較級
2音節の語の大部分 famous(有名な)/
useful(役に立つ)
more famous /
more useful
3音節以上の語 beautiful(美しい)/ expensive(高価な) more beautiful /
more expensive
-ly で終わる副詞* slowly(ゆっくり)/ carefully(注意深く) more slowly /
more carefully

* -ly で終わる副詞にも例外があり、-erをつける単語もあります。

では、さっそく英作文をしてみましょう!
カッコ内の単語を比較級に変えて、文を作ってみてくださいね。

  1. 息子は私よりも背が高い。(tall)
  2. いつもより仕事にもっと注意深くなった方がいいですよ。(careful)
  3. 私の夫は私よりも早く起きます。(early)

いかがでしたか。
では、1つ1つ正解を見てみましょう。

1. My son is taller than I.(息子は私よりも背が高い。)

これは冒頭で出てきた例文ですね。

形容詞 tall を比較級 taller に変え、than (…よりも)を加えています。
この than は比較対象となる語句をつなげる時に用いるんでしたね!

元々は than I am というのが正しい表現でしたが、今ではbe動詞 am が省略されています。また、口語では than me のように目的格を置くネイティブも少なくありません。

2. You should be more careful with your work than usual.(いつもより仕事にもっと注意深くなった方がいいですよ。)

形容詞 careful を比較級 more careful に変えています。careful は2音節の単語なので、more をつけるのでしたね。

3. My husband gets up earlier than I. (私の夫は私よりも早く起きます。)

-ly のつく副詞は基本的には more をつけて比較級を作りますが、early の場合は、比較級 earlier となる点に注意しましょう。

2. 不規則変化で作る比較級

ここまで「規則変化をする形容詞・副詞の比較級の作り方」を学んできましたが、単語そのものの形を不規則に変化させて比較級を作る場合があります。
こちらは「不規則変化」と呼ばれます。

  • good(良い)/ well(上手に)→ better
  • bad(悪い)/ badly(下手に)→ worse
  • many / much(たくさんの)→ more
  • little(小さい・少ない)→ less
  • far(遠い)→ further / farther

早速、これらの単語を使って英作文してみましょう。

今回は、2つのステップで比較級の文を作ります!
ステップ1:「比較する部分を除いた文」を作ります。
ステップ2:比較する情報を付け加えて、比較級の文に変えてみましょう。

1.
ステップ1:彼女はたくさん本を持っています。
ステップ2:彼女は私よりもたくさん本を持っています。

2.
ステップ1:彼はピアノを上手に弾きます。
ステップ2:彼はピアノを彼の妹よりも上手に弾きます。

3.
ステップ1:天気が悪い。
ステップ2:天気はさらに悪くなるだろう。

いかがでしたでしょうか。それぞれ答えを見ていきましょう!

1.
ステップ1:She has many books. 彼女はたくさん本を持っています。
ステップ2:She has more books than I. 彼女は私よりもたくさん本を持っています。
※many を比較級 more に変更

2.
ステップ1:He plays the piano well. 彼はピアノを上手に弾きます。
ステップ2:He plays the piano better than his sister. 彼はピアノを彼の妹よりも上手に弾きます。
※well を比較級 better に変更

3.
ステップ1:The weather is bad. 天気が悪い。
ステップ2:The weather will get worse. 天気はさらに悪くなるだろう。
※bad を比較級 worse に変更

※動詞 get は「~になる」という状態の変化を表します。ぜひ第7回のコラムを復習してみてくださいね!

3. 比較級の強調表現

私のスマホはAndroidですが、先日iPhoneを使っている友人に「iPhoneの方がめちゃくちゃ(ずっと)使い勝手がいいよ」と激推しされました。

この「…の方がずっと~だ」を、英語でどのように表現できるでしょうか。上記で学んだ比較級の表現方法では、「ずっと」という強調部分が足りません。

iPhone is very useful.(iPhoneはとても使い勝手がいい。)
※副詞 very(とても)を入れ、強調しています。

これでは比較対象がなく、あくまでも普通の文です。
では、比較級を使った文では、どのように強調できるのでしょうか。

iPhone is much (× very) more useful than Android.
(iPhoneはAndroidよりもずっと使い勝手がいい。)

比較の文では very は使えません!
その代わりに much を使います。
これはよくある間違いなので覚えておきましょう。

much 以外にも比較級に使える強調語句があります。

<比較級に使える強調語句:ずっと~だ>
much / far / way+比較級

冒頭の話で出てきた「息子の方が背は高いのに、体重は私の方がかなり重い」は、My son is taller than I, but I’m much heavier than he. のように言うことができます。(書いたら現実になりそうで恐怖しかありません!)

また、強調語句として even を使うと、「さらにいっそう~だ」というニュアンスが加わります。

<比較級に使える強調語句:さらにいっそう~だ>
even+比較級

This computer is even lighter than yours.
(このコンピューターはあなたのコンピューターよりもいっそう軽い。)

この場合は、このコンピューターとあなたのコンピューターの重さの差が大きいわけではありません。「あなたのコンピューターも十分軽いのだが、このコンピューターはそれよりもさらに軽い」というニュアンスが伝わります。

さて、いかがでしたか。
今回は比較級について学びました!

I’m sure you became smarter after reading this column!
(このコラムを読んだ後はより賢くなっていること間違いありません!)

ではまた!