世界中で報道されるニュースを、英語で読んでみたくありませんか?

このコラムでは、旬なニュースを写真で紹介し、そのテーマについて解説しながら、英語でニュースを読む手助けになるように関連する単語や表現を取り上げます。環境問題やジェンダー平等など、世界中が抱える課題に触れながら、英語学習にお役立てください!

増え続ける空き家を活用するには?

「尾道空き家再生プロジェクト」が手掛けたみはらし亭。別荘や旅館として使われていた建物を、2016年にゲストハウスとして生まれ変わらせた。2021年11月2日。広島県尾道市。渕脇直樹撮影。毎日新聞社 / アフロ

みなさんが住む地域でも、近年 vacant homes「空き家」が目につくようになったかもしれません。高齢者世帯が亡くなったあとに居住者のない家屋が abandon「放置」されるなど、空き家は全国的に増加しています。管理されていない空き家が増えれば、anti-crime「防犯上の」問題や illegal dumping「不法投棄」の増加、あるいは disaster preparedness「防災」の脆弱化にもつながります。日本が直面している declining birthrate「少子化」と aging society「高齢化社会」の問題点の一つが、目に見える形で現れつつあります。

OECD「経済協力開発機構」が昨年に発表した世界の空き家状況に関する統計では、日本の空き家率は13.6%で世界一でした。実に、7戸に1戸が空き家の状態です。空き家の絶対数ではアメリカが1500万戸を超えてトップでしたが、それでも日本は800万戸超と世界で2番目に空き家が多い国となりました。アメリカとは国土や人口が大きく異なる日本でこの空き家の数ですから、問題は非常に深刻だと考えられます。

総務省の「平成30年・住宅・土地統計調査」による都道府県別の空き家率では、山梨、和歌山、長野、徳島、鹿児島などが上位を占めました(ただし、山梨と長野には vacation house「別荘」としての二次的住居も多くあります)。このように、空き家は地方になるほど顕著であり、rural depopulation「地方の過疎化」と深く関連していることがわかります。

OECD統計が示すように、海外にも空き家問題は存在しています。しかし、アメリカの空き家率は日本より低い11.1%です。その違いは、idle properties「遊休資産」の活用が上手くできているかという点にあるようです。アメリカの used home market「中古住宅市場」には、中古住宅を買い取ってリフォーム後に再販する flipper「フリッパー(転売業者)」と呼ばれる業者が数多く存在し、中古住宅の流通を促す一因となっています。

一方、日本の住宅市場では newly built houses「新築住宅」が好まれます。国交省の統計によれば、2018年に流通した住宅全体の中で中古住宅が占める割合は14.5%にとどまります。これに対して、欧米では住宅流通のメインは中古住宅で、70~80%台に上るとされています。

なぜ日本では中古住宅の活用が進まないのでしょうか? fixed property tax「固定資産税」や inheritance「相続」という制度的な要因が指摘されています。

この状況を間接的に支えてきたのが land tax system「土地税制」です。住宅が建っている土地には住宅用地特例という tax relief「税の減免」が適用され、200平米までは固定資産評価額が6分の1に、200平米超は3分の2に減免されます。このため、人の住まなくなった家を更地にするよりも、そのままにした方が税の負担が軽くて済むのです。

また、日本人の real-estate ownership「不動産所有」への執着は強く、空き家の heir「相続人」が所有権を持ったまま土地家屋を管理せずに放置するケースが多々あります。このとき、property rights「財産権」に阻まれて third party「第三者」は介入できずに家屋が荒廃していくのです。

こうした状況を受けて、近年では行政側にも空き家問題にメスを入れる動きが広がりつつあります。その法的根拠となるのが2014年に成立した「空家等対策特別措置法」です。この法律では、「特定空家」に指定することで行政は所有者に対して空き家の適正管理を促すことが可能になります。そして管理を怠れば、先に述べた土地にかかる固定資産税の preferential treatment「優遇措置」が適用されなくなるという仕組みです。

実際、一部の自治体は特定空家の指定に舵を切っています。例えば、神戸市は放置された空き家について、2021年度から固定資産税の優遇措置を順次廃止しています。一方で、市はこの対策を流通促進にもつなげたい考えです。

こうした取り組みが全国的に広がるかどうかは、今後を見きわめていく必要があるでしょう。筆者としては、このような tax disincentive「税制上の不利」によって空き家を市場に吐き出させることには複雑な思いがありますが、これもコミュニティの活性化を図る上では必要なのかもしれません。日本人は伝統的に土地や家屋を所有することに熱心な国民とされていますが、住む人が誰もいなくなった時、次に誰かが利用できるように制度を整えるのが将来のためになるでしょう。

最近では、空き家を再生し地域活性化や観光を促すプロジェクトを実施する地域も出てきました。例えば、瀬戸内海と山に囲まれた広島県・尾道市は独特の町並みで知られていますが、空洞化と高齢化のために空き家が増えています。「NPO法人尾道空き家再生プロジェクト」は、それらの空き家を再生して新たな活用方法を模索しています。こういった活動が全国に広がることが期待されます。

著者の紹介
内藤陽介
翻訳者・英字紙The Japan Times元報道部長
京都大学法学部、大阪外国語大学(現・大阪大学)英語学科卒。外大時代に米国ウィスコンシン州立大に留学。ジャパンタイムズ記者として環境省・日銀・財務省・外務省・官邸などを担当後、ニュースデスクに。英文ニュースの経験は20年を超える。現在は翻訳を中心に、NHK英語語学番組のコンテンツ制作や他のメディアに執筆も行う。旬な時事英語を解説する「内藤陽介のサイバー英語塾」で情報発信中。