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このコラムでは、旬なニュースを写真で紹介し、そのテーマについて解説しながら、英語でニュースを読む手助けになるように関連する単語や表現を取り上げます。環境問題やジェンダー平等など、世界中が抱える課題に触れながら、英語学習にお役立てください!

エリザベス女王の死で問われる「君主制」のあり方

国葬が行わるウェストミンスター寺院へと運ばれるエリザベス女王の棺。2022年9月19日。ロンドン、イギリス。ロイター / アフロ

イギリスの君主として歴代最長の70年間に渡って reign「在位」した、Queen Elizabeth II「女王エリザベス 2 世」の state funeral「国葬」が9月19日、ロンドンの Westminster Abbey「ウェストミンスター寺院」で営まれました。エリザベス女王は、9月8日にイギリス北部スコットランドのバルモラル城で死去しました。96歳でした。

イギリス政府は国葬の日を bank holiday「公休日」(イギリス英語)とし、公共の広場に設置されたスクリーンなどで葬儀の模様が中継され、女王とのお別れは国を挙げての mourning event「追悼イベント」となりました。日本からは Emperor and Empress「天皇皇后」両陛下が渡英し、アメリカのジョー・バイデン大統領を含めて、世界から2000人以上が offer their condolences「弔意を示し」ました。

イギリスは、2022年現在で世界に40以上存在する monarchy「君主制」を持つ国の一つです。monarchy とは一人の支配者が統治する国家形態で、monarch「君主」が唯一の sovereign「主権者」となる統治体制です。イギリス君主が統合の象徴となっている Commonwealth of Nations「イギリス連邦」には現在56の国・地域が加盟しており、カナダやオーストラリアなども含まれます。他にもヨーロッパではオランダ、スペイン、デンマーク、ノルウェーなどに royal family「王室」が存在し、アジアではタイ、カンボジア、マレーシアなどが、そして中東では多くの国が王制を敷いています。日本の天皇は、憲法の規定により symbol「象徴」として主権者の枠外にあります。

「君主」という言葉の響きにもかかわらず、現在の君主制のほとんどは power「権力」から切り離されたものだと言えるでしょう。近世の absolute monarchy「絶対王政」、つまり君主が統治の全権能を所有して自由に権力を行使していた時代とは全く異なります。歴史的には、近代の civil revolution「市民革命」によって feudal monarch「封建君主」の権力に憲法で制限をかける constitutional monarchy「立憲君主制」などを経て、実質的な主権は国民へ移っていきました。

今を生きる私たちは、君主制に一体何を感じるでしょうか? 現代国家の主権者は国民であり、国によって実現の度合いに差はありますが、sovereignty of the people「国民主権」は世界的な潮流となっています。エリザベス女王の死は、現代社会における君主制の意義について、改めて考える機会を私たちに与えているのかもしれません。

王室や皇室を持つ国においてしばしば論じられてきたのは、象徴的な権威の存在による社会の安定化です。国民が敬愛する国王や天皇といった存在が、国難の時代においても political divide「政治的な分断」を克服し、国をまとめる求心力になり得るというものです。

しかし、この考え方も過去のものになりつつあるのかもしれません。エリザベス女王が逝去した翌日、イギリスの「エコノミスト」誌は、Some of the new king’s realms may become republics「(チャールズ)新国王の領土のいくつかは、共和国になるかもしれない」と題した記事を掲載しました。republic「共和制」は monarchy に対する概念で、一人の君主ではなく、民が主権を有して国を統治する仕組みです。近代以降、世界の多くの国が君主制から共和制へと移行しています。

また、この流れを証明するかのように、カリブ海の島国で英連邦の一員である Antigua and Barbuda「アンティグア・バーブーダ」のブラウン首相は、英国王を元首とする君主制から共和制への移行を問う referendum「国民投票」を、3年以内に実施する方針をエリザベス女王の死後に明らかにしています。3月にはウィリアム王子とキャサリン妃が英連邦に所属するベーリーズ、ジャマイカ、バハマを訪問しましたが、その際にも現地では連邦からの離脱を求める声が上がりました。

イギリス連邦拡大の歴史は、colonial rule「植民地支配」と切り離すことはできません。連邦内でもっとも多い 20の加盟国があるアフリカでは、エリザベス女王の死に関連して「女王は一度も謝罪をしなかった」と批判の声が出ています。ただ、彼女はまだ王女であった21歳の時に南アフリカで行ったスピーチで、自身の whole life「生涯」を英連邦のすべての人々のために devote「捧げる」と語ったことも事実です。

このように、君主制の意義について近年では多くの疑問が投げかけられていますが、君主制とは国民主権という統治体制が得られるまでの人間社会の発展の歴史そのものであり、現代社会に生きる私たちがその歴史的意義を一刀両断に否定できるものではありません。しかし、どのような国の在り方を選択するかも、今では国民の意思次第なのです。

著者の紹介
内藤陽介
翻訳者・英字紙The Japan Times元報道部長
京都大学法学部、大阪外国語大学(現・大阪大学)英語学科卒。外大時代に米国ウィスコンシン州立大に留学。ジャパンタイムズ記者として環境省・日銀・財務省・外務省・官邸などを担当後、ニュースデスクに。英文ニュースの経験は20年を超える。現在は翻訳を中心に、NHK英語語学番組のコンテンツ制作や他のメディアに執筆も行う。