駒井先生の習ったつもり!? の英文法 #17 不定代名詞の使い方①
学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。
one / other / another… ぼんやりイメージをスッキリさせよう!
みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。
今回のテーマは「不定代名詞」です。
さて、皆さんは「代名詞」と言われてどんなものを思い浮かべますか?
ほとんどの人が、「これ」「あれ」のような指示代名詞か、「彼」「彼女」のような人称代名詞を想像すると思います。
例えば「スティーブがクッキーを食べています。彼はそれが好きです」という文の中では、代名詞「彼」は「スティーブ」、代名詞「それ」は「クッキー」を指しています。
このように、「代名詞」とは、一度言及されたモノや人を、同じ言葉を繰り返さずに示すために使われる言葉でしたね。
さて先日、こんなことがありました。
お土産でいただいた箱詰めのクッキーをあとで食べようと楽しみにしていたのですが、箱を開けたら1つしか残っていませんでした……。
ガーン……(昭和の表現)
息子によると、「クッキー1枚だけ残して、他のは全部食べちゃったよ」。
これを英語で表すと、
“I left only one cookie, but I ate the other cookies.”
となります。
この文では、cookie(s) が重複しています。スッキリとした文にするために、2つ目の cookie(s) を代名詞に変えて表すとしたらどうなるか、考えてみてください。
答えは、
“I left only one cookie, but I ate the others.”
です!
「他のクッキー(the other cookies)」と言う代わりに、「他のモノ(the others)」と表現できます。
「えっ? other って「他の」という意味の形容詞じゃないの?」と思った方もいるかもしれませんね。実際に the other cookies の other は形容詞です。
ですが、実は other には形容詞としての意味と、「もう一方のモノ、その他のモノ[人]」という代名詞としての意味もあります。
このような不特定の人やモノを表す代名詞を「不定代名詞」と呼びます。
今回は、英語ネイティブでないとなかなか理解しにくいこの「不定代名詞」に焦点を当てて、使い方や混乱しやすいポイントを一緒に学んでいきましょう!
1. 不定代名詞とは?
不定代名詞とは、不特定の数や量の人やモノを表す代名詞です。
(不定代名詞の中には、other のように代名詞・形容詞のどちらにも用いられるものもあります)
<不定代名詞の例>
one / ones | 1つのモノ(人)/ 複数のモノ(人) |
other / others / another | 他のモノ(人) / 複数の他のモノ(人) / もう1つのモノ(人) |
all / some | すべてのモノ(人) / いくつかのモノ(何人かの人) |
いくつか例文を見ながら使い方を確認してみましょう。
1)one :<a+単数名詞>に相当する代名詞
I forgot to bring a pen. Can I borrow one?
(ペンを持ってくるのを忘れてしまいました。1本(のペンを)、貸していただけますか?)
※one は a pen(単数形)を指し、どのペンと決まったわけではなく、「ペンというものを1本」を意味しています。
All the flowers on display look very beautiful. Can I take some yellow ones?
(展示された花はどれもとてもきれいです。何本か黄色の(花)をいただけますか?)
※複数形の単語を指す時は ones になり、必ず<修飾語+ones>の形で用いられます。ここでは flowers(複数形)を指しています。
2)others:「他の人・他のモノ」を表す代名詞
I know Ms. Ishida in this room, but I don’t know the others.
(この部屋の中では、私は石田さんを知っていますが、残りの他の人たちは知りません。)
※others の前に the が付くと、「残りすべての人・モノ」を指します。
3)all :人やモノをひとくくりにして「すべて」と表す代名詞
All (of) my team members should attend the weekly meeting.
(チームメンバーの全員が週会議に出席すべきです。)
※All my team members のように of を省略することもできます。
4)some :不特定の数量を表して「いくつかのモノ・いくらかのモノ・何人かの人」を指す代名詞
If you need more paper, I’ll give you some.
(もっと紙が必要なら、何枚か(の紙)をお渡しします。)
※不可算名詞を指す場合、one(s) では受けられないため some を用います。ここでは some は paper(不可算名詞)を指しています。
このように、不定代名詞は、「名詞」の代わりとなる単語なので、文構造の中では「名詞」と同じ位置に置いて使用することができます。
2. one と it の違い
one(不定代名詞)と it(人称代名詞)は両方とも「それ」と訳されることがあります。しかし、それぞれの指しているものや使い方が異なるので注意が必要です!
みなさんは下記の2つの例文の意味の違いを説明できますか?
- 1)Did you buy a new model of smartphone? I want to buy one!
- 2)Did you buy the new model of smartphone? I want to buy it!
「新しいモデルのスマートフォンを買ったのですか? 私はそれが欲しいんです!」
例文1)の one は「新しいモデルのスマートフォン」を指しています。「不特定のモノ」を意味し、「相手の持っている新しいモデルのスマートフォンならどれでもOK」ということです。one = a smartphone となります。
一方、例文2)の it は「まさに相手の持っているスマートフォンそのもの」を指しています。「特定のモノ」を意味し、この場合、「それ以外のスマートフォンはNG」ということです。it = the smartphone となります。
3. others と the others の違いを整理しよう!
コラム冒頭の例文では、「残りのクッキー」を the others で表しました。この不定代名詞 others に付く「the」 は、どのような役割を担っているか考えてみましょう。
定冠詞 the は、話している人たちがお互いに「それ」と理解できるものを特定する役割があります。
不定代名詞に付く場合、この the は「残り全部」を意味します。以下で、the が付く場合と付かない場合の違いを見てみましょう。
<some と the others>
●●●(some)
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯(the others)
例)
There are ten students in the classroom.
Some are reading books, the others are listening to music.
(教室に10人の生徒がいます。何人かは本を読み、他の人は音楽を聞いています。)
※ some は不特定な複数の人(具体的な人数はわかりません)を意味しており、「残り全部の人」を表す時は定冠詞 the を付けて the others を使います。
<some と others>
▲▲ ●●●(some)
△△△ ◯ ◯ ◯ ◯(others)
例)
There are twelve students in the classroom.
Some are reading books, others are listening to music.
(教室に12人の生徒がいます。本を読んでいる人もいれば、音楽を聞いている人もいます。)
※ <some+動詞 ~, others+動詞 ….>は「~する人もいれば、…する人もいる」という定型表現です。
others には定冠詞 the がついていませんね。そのため、「残り全部の人」ではなく、「不特定な複数の人」を指します。上の例文では、12人の中には「本を読んでもいなければ音楽も聞いていない生徒たちがいる」と考えられます。some(いくつか)も others(残りのうちのいくつか)も、集団のある一部分を指し、「複数」というだけで、明確な数は表現していません。
4. another と the other の違い
さて、次の文には、another と the other のどちらを使うでしょうか?
店で黄色いTシャツを勧められた場面です。
I really like this T-shirt, but I don’t like yellow.
Could you show me <another / the other>?
(このTシャツを凄く気に入りましたが、黄色は好きではありません。
他のものを見せていただけますか?)
この場合は、another を使う方が自然です。
another は、<an+other(他のモノ[人])>からできた語なので、「不特定の1つ[1人]」を表します。
上の文では、黄色は好きではないけれど、Tシャツの色は複数あるので、どれでもいいから「他の色の(不特定の)Tシャツ」を見せてほしいとお願いしている状況です。
黄 | 黒(another) 白(another)
緑(another) 赤(another)
一方、the other を使う場合を見てみましょう。
それは、Tシャツの色が2色(例えば黄色とピンクの2色)しかない場合です。
その場合、「もう一方の色を見せて欲しい」とお願いすることになります。
(黄色とピンク、なかなか難しい選択ですよね…)
黄 |ピンク(the other)
このように、「残りのもう一方」を表す時には the other を使います。
5. 知識を整理しよう!
最後に知識を整理するために、これまでに学習した不定代名詞の文を解釈してみましょう。< >の中にある2つの不定代名詞や指示代名詞の違いを意識しながら、それぞれどのような意味になるか訳し分けてください。
1)Some of my students can speak English and <the others / others> can speak French.
(答え)
the others の場合:(私の生徒の何人かは英語を話せて、それ以外の生徒は全員フランス語を話せる。)
others の場合:(私の生徒の何人かは英語を話せて、フランス語を話せる生徒もいる。)
⇒ the が付いている the others の場合、英語が話せる生徒以外は、全員フランス語を話せる人という意味です。一方、the が付いていない others の場合、英語を話せる生徒以外の、他の何人かはフランス語を話せるけれど、英語やフランス語以外の言語を話す人もいる可能性があることを示しています。
2)The copy machine doesn’t work well, so you should try <another / the other>.
(答え)
another の場合:(そのコピー機はちゃんと動かないので、他の(コピー機)を試してください。)
the other の場合:(そのコピー機はちゃんと動かないので、もう1台の(コピー機)を試してください。)
⇒another を使った場合は、コピー機は3台以上あり、1台が動かず、他のコピー機のどれかを試すように伝えています。一方、the other の場合は、コピー機は2台あり、1台が動かず、もう一方のコピー機を試すように伝えています。
3)I’ve lost my watch, so <I have to buy one / I have to find it>.
(答え)
one (不定代名詞)の場合:(時計を失くしてしまったので、それ(時計)を買わなければいけません。)
it (指示代名詞)の場合:(時計を失くしてしまったので、それ(時計)を見つけなければいけません)
⇒いずれも「それ」と訳せると学習しましたが、one は「不特定の時計」を意味し、「新しい時計なら何でもいいから買わなければいけない」という意味です。一方、it は「失くしてしまった時計そのもの」を指しているので、他の時計ではだめだということです。
いかがでしたか。
不定代名詞は慣れるまで難しいかもしれませんが、ぜひ知識を整理して使い分けましょう。
次回のコラムでは不定代名詞の both / either / neither を扱いますのでお楽しみに!
That’s all for today!
(本日はこれで終わりです!)
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See you next time!
(ではまた!)
TOEIC 990点(満点)、英検1級。神田外語学院、共立女子大学講師。大手企業でもTOEICの指導にあたる。外資系企業勤務を経て、英語講師へと転身。著書に『TOEIC(R) L&Rテスト はじめて受験のパスポート』(旺文社)、『TOEIC L&R TEST 200問音読特急 瞬発力をつける』(朝日新聞出版)、『1か月で復習するTOEIC(R) L&Rテスト 基本の500単語』(語研)などがある。