学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

not を使わず否定の意味を表す!?

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

突然ですが問題です!
次の日本語を英語に変えてください。ただし not や no を使ってはいけません。

  • 1)私は彼女の顔がほとんど見えません。
  • 2)彼は自由時間にめったに本を読みません。
  • 3)彼女はほとんど友達がいません。

いかがでしたか?
みなさんの気持ちが想像できます。
「『~ません』と否定している文なのに、not や no を使わないでどうやって作るの?」と思った人もいるんじゃないでしょうか……。

日本語は全て「~ません」となっていますが、実は英語では not や no を使わずに表す方法があるんです!

それぞれの解答をみていきましょう!

  • 1)I can hardly see her face.(私は彼女の顔がほとんど見えません。)
  • 2)He rarely reads a book in his free time.(彼は自由時間にめったに本を読みません。)
  • 3)She has few friends.(彼女はほとんど友達がいません。)

「その方法があったか!」と思った方もいらっしゃると思います!

ここでは、否定語 not を使わずに、準否定語(hardly / rarely / few)を使って否定「~ない」を表しています。

否定語 not は「全く~ない(=ゼロ)」と完全否定を表すのに対し、準否定語の場合は「弱い否定(=ゼロではないがゼロに近い)」を表します。

準否定語(hardly / rarely / few)には既に not の意味が含まれているので not は置きません。しかし、準否定語を使った文は「~ない」という否定的な意図を表す文になる点に注意しましょう!

今回は、この「弱い否定」を表すことができる準否定語を学んでいきます!

1.「程度」を表す準否定語 hardly / scarcely

「ほとんど~ない」のような「程度」を表す場合には、準否定語である副詞 hardly / scarcely を使います。動詞を修飾して「(どの程度)ほとんど~ない」かを表します。

否定語 「程度」を表す準否定語 「ほとんど~ない」
not hardly scarcely

それでは、オンライン会議をしている場面を想像し、次の日本語を英文にしてみましょう。

  • 1)私はあなたの声が聞こえません。
  • 2)私はあなたの声がほとんど聞こえません。

いかがでしたか。解答はこちらです!

  • 1)I cannot hear you.(私はあなたの声が聞こえません。)
  • 2)I can hardlyscarcely]hear you.(私はあなたの声がほとんど聞こえません。)

2)のように、準否定語を使用する場合は not を入れる必要はありません。

また、準否定語の副詞を置く位置は、否定語 don’t や not を置く位置と同じです! 
以下の例で確認しましょう。

<一般動詞の前>
I hardly have time to study. (私は勉強する時間がほとんどありません。)

<be動詞の後ろ>
The room is scarcely used. (その部屋はほとんど使われません。)

<助動詞の後ろ>
I can hardly hear you. (私はあなたの声がほとんど聞こえません。)

2. 「頻度」を表す準否定語 seldom / rarely

「めったに~ない」のように、「動作が行われる頻度」を表す場合は、準否定語である副詞 seldom / rarely を使います。動詞を修飾して「(頻度がどのくらい)めったに~ない」かを表します。

目安として、always(いつも)が頻度100%、sometimes(時々)が頻度30%を表すのに対し、seldom / rarely は頻度5%程度です。

頻度 単語 意味
100% always いつも
30% sometimes 時々
5% seldom / rarely めったに~ない
0% not / never 全く~ない

では次の日本語を英文にしてみましょう!

  • 1)私は放課後にめったに図書館に行きません。
  • 2)私は放課後に図書館に行きません。

いかがでしたか。解答はこちらです!

  • 1)I rarelyseldom]go to the library after school. (私は放課後にめったに図書館に行きません。)
  • 2)I don’t go to the library after school.(私は放課後に図書館に行きません。)

こちらの準否定語である副詞 seldom / rarely を置く位置も、否定語 don’t や not の位置と同じで、「一般動詞の前・be動詞や助動詞の後ろ」です!

3. 「数」や「量」を表す準否定語 few / little

「数」に関しては準否定語 few を用いて「(数が)ほとんど~ない」「量」に関しては little を用いて「(量が)ほとんど~ない」の意味になります。

ただし、a few / a little の場合は<肯定的な意味>になり、意味が異なるため、注意が必要です!


(可算名詞の複数形の前に置く)

(不可算名詞の単数形の前に置く)
肯定的 a few「(数が)少しはある」 a little「(量が)少しはある」
否定的 few「(数が)ほとんど~ない」 little「(量が)ほとんど~ない」

それぞれの使い分けを見てみましょう。

<数を表す a few / few>
a fewfew数えられる名詞(可算名詞)の複数形の前に置いて使います。

【肯定的】A few students attended the class. (数名の(少しの)学生がその授業に出席しました。)
【否定的】Few students attended the class. (ほとんどの学生がその授業に参加しませんでした。)

※ student は可算名詞

<量を表す a little / little>
a littlelittle数えられない名詞(不可算名詞)の前に置いて使います。

【肯定的】There is a little butter in the fridge.(冷蔵庫にバターが少しあります。)
【否定的】There is little butter in the fridge.(冷蔵庫にほとんどバターがありません。)

※ butter は不可算名詞

いかがでしたでしょうか。
今回は、not を使わずに準否定語を使って「弱い否定(=ゼロではないがゼロに近い)」を表せることを学びました!

I hope you won’t say, “I have little interest in this column
(「このコラムに興味がほとんどありません……」なんて、みなさんが言わないことを願っています!)

ではまた次回お会いしましょう!