学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

oneself「~自身」で表現できること

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

早速ですが、みなさんに見ていただきたい英文があります。
それはこちらです!

Mika’s mother looked at her in the mirror.

この英文はどう解釈するのが正しいでしょうか。

「ミカの母親が鏡で自分を見ている姿」を思い浮かべた人もいるかもしれませんね!

しかし、ミカの母親が「自分を見た」と解釈するのは間違いです。
この場合、her(彼女を)と言っているので、自分自身ではなく「他の女性(この場合はミカと考えられます)を見た」という意味です。

「え、それってどんな状況?」と思うかも知れませんが、自分の娘の髪を結ぶ時など、鏡の中の娘を見ることがあります(私もそうします)。そんな状況です。

解釈の大きな違いは、母親は鏡で「自分を」見たのか、「他者を」見たのかという点です。

では、「鏡で自分を見た」とする場合の英文はどうでしょう。

Mika’s mother looked at herself in the mirror.
(ミカの母親は鏡に映る自分自身を見ました。)

「鏡で自分を見た」とする場合は再帰代名詞を使う必要があります!
再帰代名詞とは人称代名詞の所有格、または目的格(例文では her)に -self / -selves を付けたものです。下の表で、人称代名詞と再帰代名詞を確認しましょう。

【人称代名詞】

単数形 複数形
主格 所有格 目的格 主格 所有格 目的格
1人称 I my me we our us
2人称 you your you you your you
he his him
3人称 she her her they their them
it its it

【再帰代名詞(~自身)】

単数形 複数形
1人称 myself ourselves
2人称 yourself yourselves
himself
3人称 herself themselves
itself

1人称、2人称は人称代名詞の所有格の語尾に、3人称の場合は目的格の語尾に -self / -selves を付けると覚えましょう!
ちなみに、oneself は、一般的に「人」を表す one に self が付き「自分自身」という意味になり、再帰代名詞の代表として用います(辞書や問題集の語句の見出しでよく用いられます)。 文の中では one の部分を変えて myself(私自身)、yourself(あなた自身)などと、状況に応じて使い分けます。

ではなぜ、先程の例文の場合は再帰代名詞を使うのか。
今回は、再帰代名詞の使い方を丁寧に学んでいきましょう!

1. 目的語として使う再帰代名詞

こちらの例文を見てみましょう。

Tom is telling himself that he can do it.
(トムは自分ならそれをできると自分自身に言い聞かせています。)

直訳すると、「トムは彼自身に、自分ならそれをできると言っている」という意味ですね。ちなみにこの状況は、テスト前の私の息子と同じです(勉強していないので根拠のない自信を吹き込んでいます…)。

この文では主語の人物(Tom)と目的語の人物(himself)が同一人物です!
「主語=目的語」ということです。

このように、主語と目的語が同一である場合、目的語の位置には代名詞の目的格ではなく、再帰代名詞を置きます

再帰代名詞は、主語の行なった動作が自分自身に帰ってくる(向けられる)ことを表し、文字通り「再び(自分の行なった行動が)帰ってくる」というイメージです。

他の例文を見てみましょう!

I’ll buy myself an ice cream as a reward.
(私はご褒美としてアイスを自分自身に買うつもりです。)

主語と目的語が同一であることを表すため、目的語には再帰代名詞 myself が置かれています。この状況は、ジョギングを終えた時の私です(ダイエットが台無しですね)。

ちなみに、冒頭の例文(Mika’s mother looked at herself in the mirror.)のように、他動詞の目的語だけでなく、前置詞の後ろに目的語として再帰代名詞を用いる場合もあります。

【前置詞+再帰代名詞】
Mika’s mother looked at herself in the mirror.
(ミカの母親は鏡に映る自分自身を見ました。)

Please take care of yourself!
ご自身をいたわってね!)

Mike is talking to himself in the class.
(マイクは授業中に自分自身に話していました(独り言を言っていました)。)

このように、表したい状況の主語と動作が向けられる対象(目的語)をしっかり見極め、同一である時には再帰代名詞を使用しましょう!

2. 強調の意味を表す再帰代名詞

次に、この英文を見てみましょう。

The teacher cleaned the whiteboard after the class.
(授業の後、先生はホワイトボードをきれいにしました。)

では、こちらはどうでしょうか。

The teacher herself cleaned the whiteboard after the class.
(授業の後、先生は自身でホワイトボードをきれいにしました。)

再帰代名詞を入れることで、「先生が自ら」という強調のニュアンスが加わりました。

この文では「通常は学生や清掃員が拭くはずが、先生がわざわざ自分できれいにした 」というニュアンスが出ています(ちなみに私も自分でやります!)。

  • 強調を表す再帰代名詞のポイントは2つ!
  • ① 主語・補語・目的語などの(代)名詞を強調します。主に、強調したい語の直後に置かれますが、文末に置かれることもあります。
  • ② 強調を表す再帰代名詞はあくまでも修飾語であり、仮に省略しても文は成り立ちますが、強調の意味はなくなります。

強調表現の他の例文も見てみましょう!

  • 1)The president himself reserved a meeting room.
     (社長が自らミーティングルームを予約しました。)
    ※ 主語の The president を強調しています。
  • 2)The bag itself is really heavy.
     (バッグ自体がとても重いです。)
    ※ 主語の The bag を強調しています。
  • 3)The father talked with Maria herself.
     (父親はマリア本人と話をしました)
    ※ 前置詞の後ろの目的語 Maria を強調しています。

3. 再帰代名詞を使ったさまざまな慣用表現

ここからは「目的語として使う再帰代名詞」や「強調の意味を表す再帰代名詞」の他に、再帰代名詞を使ったさまざまな表現をご紹介していきます! これらは慣用句としてよく用いられます。

① 前置詞+再帰代名詞

by oneself : ひとりぼっちで、自力で

例)My daughter lives by herself.
 (私の娘はひとりぼっちで暮らしています。)

for oneself :自分のために、独力で・自力で

例)She cooked for herself.
 (彼女は自分のために(自分の利益のために)料理をしました。)

beside oneself with ~ : ~で我を忘れて

例)He is beside himself with anger.
 (彼は怒りで我を忘れています。)

前置詞 beside は「~の脇に」という意味です。
「我を忘れる」というのは、文字通り、核となっている自分自身を脇に置いた状態のイメージと重なります。

in oneself : それ自体は

例)Passing the exam is not the goal in itself.
 (試験に受かることそれ自体は目標ではありません。)

例)She is not bad in herself.
 (彼女自身は悪くありません。)

② 動詞+再帰代名詞

help oneself to ~ :~を自由に飲食する[使う]

例)Please help yourself to drinks.
 (飲み物をご自由に飲んでください。)

enjoy oneself : 楽しむ

例) I really enjoyed myself!
 (私はとても楽しかった!)

lose oneself : 夢中になる

例) He lost himself in a book.
 (彼は本に夢中になりました。)

いかがでしたか?
ぜひ英会話や英作文の時に使ってみましょう!

The winter has come and it’s getting colder.
Please take care of yourself!
It may be a good idea to warm yourself in a hot bath!
(冬が来て寒くなってきましたね。
どうぞご自身をいたわってください!
温かいお風呂でご自身を温めるのがいいかもしれませんね!)

ではまた次回お会いしましょう!