駒井先生の習ったつもり!? の英文法 #16 oneself 再帰代名詞の使い方
学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。
oneself「~自身」で表現できること
みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。
早速ですが、みなさんに見ていただきたい英文があります。
それはこちらです!
Mika’s mother looked at her in the mirror.
この英文はどう解釈するのが正しいでしょうか。
「ミカの母親が鏡で自分を見ている姿」を思い浮かべた人もいるかもしれませんね!
しかし、ミカの母親が「自分を見た」と解釈するのは間違いです。
この場合、her(彼女を)と言っているので、自分自身ではなく「他の女性(この場合はミカと考えられます)を見た」という意味です。
「え、それってどんな状況?」と思うかも知れませんが、自分の娘の髪を結ぶ時など、鏡の中の娘を見ることがあります(私もそうします)。そんな状況です。
解釈の大きな違いは、母親は鏡で「自分を」見たのか、「他者を」見たのかという点です。
では、「鏡で自分を見た」とする場合の英文はどうでしょう。
Mika’s mother looked at herself in the mirror.
(ミカの母親は鏡に映る自分自身を見ました。)
「鏡で自分を見た」とする場合は再帰代名詞を使う必要があります!
再帰代名詞とは人称代名詞の所有格、または目的格(例文では her)に -self / -selves を付けたものです。下の表で、人称代名詞と再帰代名詞を確認しましょう。
【人称代名詞】
単数形 | 複数形 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
主格 | 所有格 | 目的格 | 主格 | 所有格 | 目的格 | |
1人称 | I | my | me | we | our | us |
2人称 | you | your | you | you | your | you |
he | his | him | ||||
3人称 | she | her | her | they | their | them |
it | its | it |
【再帰代名詞(~自身)】
単数形 | 複数形 | |
---|---|---|
1人称 | myself | ourselves |
2人称 | yourself | yourselves |
himself | ||
3人称 | herself | themselves |
itself |
1人称、2人称は人称代名詞の所有格の語尾に、3人称の場合は目的格の語尾に -self / -selves を付けると覚えましょう!
ちなみに、oneself は、一般的に「人」を表す one に self が付き「自分自身」という意味になり、再帰代名詞の代表として用います(辞書や問題集の語句の見出しでよく用いられます)。 文の中では one の部分を変えて myself(私自身)、yourself(あなた自身)などと、状況に応じて使い分けます。
ではなぜ、先程の例文の場合は再帰代名詞を使うのか。
今回は、再帰代名詞の使い方を丁寧に学んでいきましょう!
1. 目的語として使う再帰代名詞
こちらの例文を見てみましょう。
Tom is telling himself that he can do it.
(トムは自分ならそれをできると自分自身に言い聞かせています。)
直訳すると、「トムは彼自身に、自分ならそれをできると言っている」という意味ですね。ちなみにこの状況は、テスト前の私の息子と同じです(勉強していないので根拠のない自信を吹き込んでいます…)。
この文では主語の人物(Tom)と目的語の人物(himself)が同一人物です!
「主語=目的語」ということです。
このように、主語と目的語が同一である場合、目的語の位置には代名詞の目的格ではなく、再帰代名詞を置きます。
再帰代名詞は、主語の行なった動作が自分自身に帰ってくる(向けられる)ことを表し、文字通り「再び(自分の行なった行動が)帰ってくる」というイメージです。
他の例文を見てみましょう!
I’ll buy myself an ice cream as a reward.
(私はご褒美としてアイスを自分自身に買うつもりです。)
主語と目的語が同一であることを表すため、目的語には再帰代名詞 myself が置かれています。この状況は、ジョギングを終えた時の私です(ダイエットが台無しですね)。
ちなみに、冒頭の例文(Mika’s mother looked at herself in the mirror.)のように、他動詞の目的語だけでなく、前置詞の後ろに目的語として再帰代名詞を用いる場合もあります。
【前置詞+再帰代名詞】
Mika’s mother looked at herself in the mirror.
(ミカの母親は鏡に映る自分自身を見ました。)
Please take care of yourself!
(ご自身をいたわってね!)
Mike is talking to himself in the class.
(マイクは授業中に自分自身に話していました(独り言を言っていました)。)
このように、表したい状況の主語と動作が向けられる対象(目的語)をしっかり見極め、同一である時には再帰代名詞を使用しましょう!
2. 強調の意味を表す再帰代名詞
次に、この英文を見てみましょう。
The teacher cleaned the whiteboard after the class.
(授業の後、先生はホワイトボードをきれいにしました。)
では、こちらはどうでしょうか。
The teacher herself cleaned the whiteboard after the class.
(授業の後、先生は自身でホワイトボードをきれいにしました。)
再帰代名詞を入れることで、「先生が自ら」という強調のニュアンスが加わりました。
この文では「通常は学生や清掃員が拭くはずが、先生がわざわざ自分できれいにした 」というニュアンスが出ています(ちなみに私も自分でやります!)。
- 強調を表す再帰代名詞のポイントは2つ!
- ① 主語・補語・目的語などの(代)名詞を強調します。主に、強調したい語の直後に置かれますが、文末に置かれることもあります。
- ② 強調を表す再帰代名詞はあくまでも修飾語であり、仮に省略しても文は成り立ちますが、強調の意味はなくなります。
強調表現の他の例文も見てみましょう!
- 1)The president himself reserved a meeting room.
(社長が自らミーティングルームを予約しました。)
※ 主語の The president を強調しています。 - 2)The bag itself is really heavy.
(バッグ自体がとても重いです。)
※ 主語の The bag を強調しています。 - 3)The father talked with Maria herself.
(父親はマリア本人と話をしました)
※ 前置詞の後ろの目的語 Maria を強調しています。
3. 再帰代名詞を使ったさまざまな慣用表現
ここからは「目的語として使う再帰代名詞」や「強調の意味を表す再帰代名詞」の他に、再帰代名詞を使ったさまざまな表現をご紹介していきます! これらは慣用句としてよく用いられます。
① 前置詞+再帰代名詞
●by oneself : ひとりぼっちで、自力で
例)My daughter lives by herself.
(私の娘はひとりぼっちで暮らしています。)
●for oneself :自分のために、独力で・自力で
例)She cooked for herself.
(彼女は自分のために(自分の利益のために)料理をしました。)
●beside oneself with ~ : ~で我を忘れて
例)He is beside himself with anger.
(彼は怒りで我を忘れています。)
前置詞 beside は「~の脇に」という意味です。
「我を忘れる」というのは、文字通り、核となっている自分自身を脇に置いた状態のイメージと重なります。
●in oneself : それ自体は
例)Passing the exam is not the goal in itself.
(試験に受かることそれ自体は目標ではありません。)
例)She is not bad in herself.
(彼女自身は悪くありません。)
② 動詞+再帰代名詞
●help oneself to ~ :~を自由に飲食する[使う]
例)Please help yourself to drinks.
(飲み物をご自由に飲んでください。)
●enjoy oneself : 楽しむ
例) I really enjoyed myself!
(私はとても楽しかった!)
●lose oneself : 夢中になる
例) He lost himself in a book.
(彼は本に夢中になりました。)
いかがでしたか?
ぜひ英会話や英作文の時に使ってみましょう!
The winter has come and it’s getting colder.
Please take care of yourself!
It may be a good idea to warm yourself in a hot bath!
(冬が来て寒くなってきましたね。
どうぞご自身をいたわってください!
温かいお風呂でご自身を温めるのがいいかもしれませんね!)
ではまた次回お会いしましょう!
TOEIC 990点(満点)、英検1級。神田外語学院、共立女子大学講師。大手企業でもTOEICの指導にあたる。外資系企業勤務を経て、英語講師へと転身。著書に『TOEIC(R) L&Rテスト はじめて受験のパスポート』(旺文社)、『TOEIC L&R TEST 200問音読特急 瞬発力をつける』(朝日新聞出版)、『1か月で復習するTOEIC(R) L&Rテスト 基本の500単語』(語研)などがある。