よく見かける表現だけど、実は使い方が「あいまい」な英語ってありませんか? そんな「あいまい英語」を、東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科の人気講師・大岩秀樹先生がスッキリ整理整頓してくれるコラムです。もうこれで「あいまい英語」とサヨナラできる!

誰が行動するかがポイント

誰かに何かを頼みたいとき、誰かを何かに誘いたいとき、正しく伝えて前向きな返事をもらうためにも、伝え方ってとっても大事ですよね。これは、家族や友人との会話でももちろん、ビジネスの現場でも重要であることは言うまでもありません。以下の2つの内容を比べてみましょう。

 (A)この機密文書、コピーしてもいいですか?

 (B)この機密文書、コピーしてもらってもいいですか?

(B)は(A)に「もらって」という表現が加わっただけですが、意味は全く違いますよね。(A)では「自分が機密書類をコピーする」ことの許可を求めている一方で、(B)は「相手が機密書類をコピーする」ことを依頼しています。見た目はほとんど変わらないのに、完成品はまるで塩と砂糖を入れ間違ってしまった卵焼きのように別物です(どちらの卵焼きも美味しいですけどね。ちなみに、私は醤油味派です)。言葉って本当に面白いですよね。

しかし、「面白い」で済めばいいのですが、例えば外国の企業と英語で取引をしていて、許可と依頼の表現を間違えてしまう……もう、想像すらしたくない事態へと発展していく予感しかしません。そこで今回は、「外に出てもいいですか?」と許可を求めたつもりが、「外に出てってもらえますか?」と伝わってしまうというような、状況によってはホラー映画よりも怖い場面を回避するためにも、「見た目は似ているのに、伝わる内容が全然違ってしまう英語表現」を確認していきましょう。具体的には「許可」「依頼」「提案」「勧誘」の4つの表現を確認していきたいと思います!

(1)「許可を求める」表現

 ・May I 動詞の原形 ?

 ・Can I 動詞の原形 ?

許可を求めたい場合は、これらの表現を使えばOKです。主語が I ですので、行為主は I(自分)。つまり、相手に尋ねているのは「自分がする行為の許可」になるわけですね。こんな感じで使用します。

 May I open the window? (その窓を開けてもいいですか)

これは、話し手である I がその窓を開ける許可を求めています。また、Can I を使って “Can I open the window?” としても同じく許可を求めていることを相手に伝えることができます。これらの許可の表現を使うと、冒頭(A)の文章もこのように英語で表現することができます。

 (A)May[Can]I make a copy of this confidential document?

(2)「相手に依頼する」表現

 ・Will you 動詞の原形 ?

 ・Can you 動詞の原形 ?

相手に何かを依頼したい場合は、これらの表現を使って伝えます。(1)とは異なり、主語が you。つまり、行為主は you(話し相手)となるので、相手に求める行為を伝えることができるんですね。

 Will you open the window? (その窓を開けてもらえますか)

これは、相手にその窓を開けることを依頼しています。また、Can you を使って “Can you open the window?” としても同じ意味になります。また、Will や Can の代わりに Would や Could を使うと、より丁寧なニュアンスで依頼することができます。

 Would [Could] you open the window? (その窓を開けていただけますか)

そして、これらの依頼の表現を使えば、冒頭(B)の内容を英語で伝えることができます。

 (B)Will [Can] you make a copy of this confidential document?

 (より丁寧)→ Would [Could] you make a copy of this confidential document?

当たり前といえば当たり前ですが、I と you が違うと、行為の主が変わってしまうので、こんなにも違う意味になるんですね。要注意ですけど、本当に便利な表現ですね。

(3)「相手に提案する」表現

 ・Why don’t you 動詞の原形 ?

 ・Why don’ we 動詞の原形 ?

相手に何かを提案したい場合は、これらの表現を使うと伝わります。しかし、これらはどちらを使うかで相手に伝わる意味が少し違うので、使い分ける必要があります。どのような違いかわかりますか? ……そうです! 上の表現は主語が you。つまり、行為主は you(話し相手)になるので、相手がする行為の提案になります。ところが、下の表現は主語が we ですよね。つまり、行為主は we(話し相手+自分)になるので、「一緒にやりましょう!」のような提案になります。

 Why don’t you take a break? (休憩をとってはいかがですか)

これは、相手に休憩をとることを提案しています。主語が you なので、休憩をとるのは話し相手ですね。

 Why don’t we take a break? (休憩をとりませんか)

これは、相手と自分が休憩をとることを提案しています。主語が we なので、休憩をとるのは話し相手と自分になるわけですね。

また、「一緒にやりましょう!」と提案する場合は、“Let’s 動詞の原形 .” を使って “Let’s take a break.” とすることもできます。さらに、ビジネスなどで使用する際に、もう少しバリエーションがほしい場合は、“What do you think about 動詞のing形 ? ”(あなたは〜することをどう思いますか=〜してはいかがですか)のような表現を使っても、提案することができますよ。

 What do you think about taking a break?
 ※動詞の take は taking になる点に注意。

(4)「相手を勧誘する」表現

 ・Shall we 動詞の原形 ?

 ・Let’s 動詞の原形 .

相手を勧誘したい場合は、これらの表現が使えます。勧誘は「相手と自分が何かを一緒に行う」場合に使う表現ですから、主語は we が基本です。

 Shall we go for a drink? (飲みに行きませんか?)

これは、相手と自分が飲みに行くことを勧誘しています。また、この表現は「一緒にやりましょう!」のニュアンスですから、(3)と同様に Let’s を使って “Let’s go for a drink.” とすることもできます。……ここで気がついたでしょうか? 厳密には違いがあるのかもしれませんが、我々は日常的に「相手と自分がする行為の提案」「勧誘」とも言っていますよね? ですので、やはり(3)の Why don’t we を使って、“Why don’t we go for a drink?” と言っても大丈夫です。また、もっとバリエーションを増やしておきたい方は、“How about 動詞のing形 ? ” を覚えておくと便利です。

 How about going for a drink?
 ※動詞の go は going になる点に注意。

(1)〜(4)は、基本的に誰がその行為をするのかを意識することで誤使用を回避することができます。他にも、Do you want to come with us? のように、実際に行動するのは we なのに you を使ったりするややこしい表現もあるのですが、そういうのは使用しなければいいだけの話ですので、誤解を生まない上の(1)から(4)の表現をまずはしっかり身につけてみてはいかがでしょうか。簡単な表現ですが、日常会話やビジネス会話での使用頻度は非常に高いので、何度も音読を繰り返して、自然に口から出てくるまで練習してみてくださいね。“Why don’t you enjoy reading English sentences aloud repeatedly?”(くり返し英語文の音読を楽しんではいかがですか)

それでは、今回はここまでとなります! お疲れ様でした。