よく見かける表現だけど、実は使い方が「あいまい」な英語ってありませんか? そんな「あいまい英語」を、東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科の人気講師・大岩秀樹先生がスッキリ整理整頓してくれるコラムです。もうこれで「あいまい英語」とサヨナラできる!

「冠詞のaとthe、どっちを使う?」

「私は犬が好き」は英語で ① I like a dog. でいいのかな?いや、② I like the dog. の方がいいような気もする……。

英語の a と the の使い分けって、なんだかややこしい。ややこしいというよりも、ハッキリ言って全くわからない。そんな人が実はとても多いのが、この a と the の使い分けだったりします。さて、あなたは「私は犬が好き」を①と②のどちらで伝えるタイプでしょうか? もちろん、中には①でも②でもなく、③ I like dogs. や ④ I like the dogs. で表現するという方もいらっしゃるかもしれませんね。うーん……結局、どの表現が正しいのでしょう?

実は、この英文の場合は①~④の全てが正解です。つまり、あまり細かな違いを気にするよりも、「英語を使うことを楽しむ」ことの方が何倍も重要だということがわかるスバラシイ例題でしたね! ただし、「伝わるイメージ」に違いはありますが……。あれですか? このサイトを閲覧しているということは、あなたは「英語を使うことを楽しむ」の次のステージ、「英語をより正確に使うことを楽しむ」へ進みたいということでしょうか? もしそうであれば、一緒に進んでまいりましょう。より楽しい英語の世界へ!

では、初回となる今回は、a と the の簡単な使い分けと、その向こう側(?)についてお伝えしたいと思います。まず、次の説明を見てみてください。

a

初めて登場する数えられる名詞[人・物・事]が「1人・1つ」のときに、名詞の前に付ける。「a dog → one dog」のように one と言い換えることができるのが特徴。また、a の直後の単語が「アイウエオ(母音)」の発音で始まる場合は、「an orange」「an old man」のように a ではなく an を使用する。

the

すでに一度出てきた名詞の前に付ける。a は数えられる名詞にのみ付くが、the は数えられる名詞だけでなく、数えられない名詞にも付く。数えられない名詞とは、water(水)のように一般的に量で表される名詞のこと。「例:The water looks freezing.(その水は凍ってしまいそうだよ)」

と、これが一般的な説明ですが、私には難しくてよくわからないんですよね。「結局どう使い分けるの???」って。では、もっとシンプルに、別の角度から見てみましょう。今度はどうでしょうか?

a(お互いに「ああ、あれね!」とならない名詞)

相手と同じイメージが持てない情報[共通認識していない名詞]に付く。

the(お互いに「ああ、あれね!」となる名詞)

相手と同じイメージが持てる情報[共通認識している名詞]に付く。

ほほう──では、この視点で「私は犬が好き」を見直してみましょうか。

① I like a dog.(犬が好き)
② I like the dog.(お互い知っているあの犬が好き)
③ I like dogs.(犬が好き)
④ I like the dogs.(お互い知っているあの複数の犬が好き)

②と④は、お互いに「昨日の犬、かわいかったよねぇ~、好きだわぁ~」みたいに、お互いに「ああ、あれね!」とわかる犬について話をしていることがわかりますよね。では、①と③は何が違うのでしょう? ということで、もう1つ追加説明(その向こう側へ)いっちゃいましょう。

-s(theがない複数形の名詞)

不特定多数を表すため「dogs(犬というもの)」「books(本というもの)」のように、一般論になる。

自分は「ああ、あれね!」となる犬ということではなく「犬というものが好き=犬好き」と伝えたい場合は、「③ I like dogs.」のように、the が付かない複数名詞を使えば、特定の犬種などではなく不特定多数の犬が好き[=犬というものが好き]であることが伝わります(なので、自分が無類の犬好きであることを伝えたい場合は、①よりも③の方が正確に伝わります)。

では、最後に何問かクイズをしてみませんか? その名も、「a、 an、 -s、 the クイズ!」。5問ほど挑戦してほしいのですが、今回の内容を踏まえて、(   )内の名詞に「a、 an、 -s、 the」のいずれかを付けて、適切な形に直してみてくださいね。では、Ready go!

1)窓を開けてもらえますか?
Would you mind opening(window)?

2)ペン持ってる?
Do you have(pen)?

3)あそこの猫見て!
Look at(cat)over there!

4)地球は太陽の周りをまわっている。
(Earth)goes around(Sun).

5)兄弟いる?
Do you have(brother)?

さて、いかがでしたでしょうか? もちろん、どういうイメージを伝えたいかで表現が変わってくることもありますが、ここでは一般的な解答を確認していきましょう!

1)「窓を開けてもらえますか」という状況は、お互いに「あれだよ、あれ」「ああ、あれね!」となりますよね。よって、Would you mind opening the window? がいいかと。もちろん、窓が複数ある部屋を想定した場合は Would you mind opening the windows? でもいいですよね。

2)「ペン持ってる?」と尋ねている人は、わからないから尋ねているので、共通認識になってないですよね。そして、状況にもよりますが、普通は1本を想定すると思いますので、今回は Do you have a pen? でいいかと。

3)「あそこの猫見て!」 「え? どこどこ? ああ、あれね!」というわけで、 Look at the cat over there! でいいですよね。複数なら Look at the cats over there! となりますね。

4)「地球は太陽の周りをまわっている」の地球も太陽も、我々には「ああ、あれね!」ですよね。ですから The Earth goes around the Sun. でバッチリです。

5)「兄弟いる?」は Do you have a brother? でもいいのですが、「なぜ1人って決めつけてるの? 1人しかいないって知ってるの?」みたいな雰囲気が感じられますよね。ですので、 Do you have brothers? とした方が、「兄弟というものはいますか」というイメージが正確に伝わりますよね。

というわけで、「a と the の使い分け」の基本はいかがでしたでしょうか? もちろん、今回の内容だけで全て完璧な使い分けができるわけではありませんが、今回のポイントが身につけば、日常生活の多くの場面で困ることもないはずです。ぜひ、これから出会うさまざまな英文の a と the を味わってみてくださいね。それでは、また次回、お目にかかりましょう! 今回はここまで! お疲れ様でした。