学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

伝える情報を相手が「知っている」か「知らない」かで表現を変える

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

先日、息子が英語のテキストに向かって何やら文句を言っていました。

「since が『~なので』っていう意味で『理由』を表す? いやいや、because を使えばいいでしょ!」と。

「全日本人がうなずいた」と言っても過言ではないくらい、その通りだと思います……。

しかし!

接続詞 since は「~なので」と理由を表しますが、その使い方は接続詞 because と異なります。

今回は、この since と because、それに as も加え、この3つの使い分けについて説明します!

(全日本人に読んでいただきたい! そして息子にも!)

1.because / since / as を場面で使い分ける

because / since / as はすべて「理由を表す」という役割の接続詞であることは共通しています。日本語訳すると「~なので」という意味です。

しかし、「『~なので』なら全部 because を使っとけばいいじゃん!(by息子)」とはいきません!

同じ意味でありながらも、それを使う場面や使い方が異なります。それぞれを比べてみましょう。

【because】
because は、明確な理由や原因を伝えるときに使い、そして、相手にとってそれが新しい情報(新情報)であるときに使います。

「知らないと思うから言うけど、~だからなの!」というようなニュアンスで、相手に理由を説明するときに使うんですね。

I was late for school because the train was delayed this morning.
(今朝、電車が遅れていたので学校に遅刻しました。)

相手は「電車が遅れた」という状況を知らないため、それを理由として相手に伝えています。

She left work early because her daughter got a fever.
(娘が熱を出したので、彼女は早退しました。)

この場合も、相手は「彼女の娘が熱を出した」という状況を知らないため、because を使って理由を説明しています。

【since / as】
since や as は、話し手とその相手の両方がすでに知っている情報、もしくは自明である情報(旧情報)を理由・原因として伝えるときに使います。

「知ってると思うけど~だから!」というニュアンスで、相手が知っていることを補足情報として伝えている感じです。

Since it’s raining, why don’t we see a movie at home?
(雨が降っているから家で映画を見るのはどう?)

外を見たら「雨が降っている」とわかる状況ですね。
お互いの共通認識があるため、この場合は since を使っています。

ちなみに…
since は「~以来」という意味もありますよね。
例えば次のように使います。

I have been learning English since I was 10.
(私は10才から英語を学んでいます。)

なぜ since は「~以来」と「~なので」という全く異なる意味を持っているのだろうと疑問に思うかもしれません。

しかし、「~以来」であれば、出来事が起こった時の起点を表しており、「~なので」であれば、出来事が起こった理由を出来事の起点として表しているわけです。

そんな風に考えると、コアな部分が共通していると考えられますね。

さあ、as の使い方も見てみましょう。

As we’ll have an exam tomorrow, I have to study after school.
(明日テストがあるから、放課後に勉強しなきゃ。)

「we’ll」とあるので、「明日テストがある」というのはお互いにわかっている情報です。それを勉強しなくてはならない理由・原因として補足しています。

このように、because は「新情報」を伝えるときに、since と as は「旧情報」を伝えるときに使います。

ただ、接続詞 as は「理由を表す」という意味以外にも多くの役割(時や様態を表す等)があります。
それゆえ、解釈が曖昧になるのを避けるため、「理由を表す」という意味で使われることがとても少ないのが実情です。

2.since・as とは異なる because の使い方

(1)Why ~? への返答は because だけ

because / since / as は「~なので」という意味を持つことは共通していますが、Why(なぜ)から始まる疑問文に対する応答として使えるのは because だけです。

そもそも相手が Why と聞くのは、その理由を知らないからです。「相手にとって知らない情報(新情報)を伝える場合は because で伝える」というルールに則っているということですね。

例文を見てみましょう。

Why did you come to the office so early?
(なぜそんなに早くオフィスに来たのですか?)
Because I needed to finish the report.
(レポートを終わらせる必要があったからです。)

このように、Why(なぜ)を使った質問に対しては Because で応答することができますが、since や as は使えません。

しかし!

これは、あくまでも Why の質問に対しては Because で応答を始めてもいいということであり、英文のライティングでは、文頭に Because を置く場合に注意が必要です!

次の誤った文を見てみましょう。

(誤)I chose the restaurant. Because it has good reviews.
(レビューが良かったのでこのレストランを選びました。)

何が間違っているかわかりますか。
これは、英文のライティングで多発するミスです。

この場合、1つ目の文にピリオドが打たれ、その後に続く2つ目の文が Because で始まっていますね。

これがよくあるミスなのです。

because は接続詞なので以下の2つの形で使います。

① <Because S+V, S+V>

Because I was really tired, I went to bed early.
(とても疲れていたので、早く寝ました。)

➁ <S+V because S+V>

I went to bed early because I was really tired.
(とても疲れていたので、早く寝ました。)

(誤)I went to bed early. Because I was really tired.

接続詞 because は主節と従属節をつなげる役割をしているため、あくまでもピリオドは1つ。ピリオドを使って主節と切り離すことはできないため要注意です!

なお、一般的に because に続く節は、主節の後ろにつなげた方が自然であると考えられています。
いきなり知らない情報を渡されると情報処理が大変ですよね!
そのため、英語では基本的に「新情報は後ろに置く」という構造が一般的です。

(2)強調構文に使えるのは because だけ

理由を強調する際、<It is because>の形で表現できます。
この強調構文では since や as は使いません

そもそも because は「新情報」を伝える働きがあるので「実はさ…」とその後に述べることを強調するニュアンスを帯びていますよね。

2つのパターンを見てみましょう。

① 主張(または結果)を述べた後に It is because. と続ける。

I always carry a water bottle. It is because I get thirsty easily.
(私はいつも水筒を持ち歩いています。それは、喉が渇きやすいからです。)

I didn’t go running this morning. It is because I woke up late.
(今朝はランニングに行きませんでした。それは、遅く起きたからです。)

because を文頭に出し、主節を省略して英文を書くことは文法ルールとして間違いですが、このように強調構文として It is because から始めて作文するのは正しい方法です。

➁ Why から始まる疑問文に対する答えとして It is because.と応答する。

Why did you choose this hotel?
(なぜこのホテルを選んだのですか?)
It is because it has a great view of the ocean.
(それは、海の眺めが素晴らしいからです。)

もちろん、Because it has a great view of the ocean. としても正しい応答です。

(3)副詞で修飾できるのは because だけ

例えば、「単に塾に行っているからというだけで、テストの点数が上がりました」と言いたい場合、どのように言えるでしょうか。

この「単に~からというだけで」というニュアンスをしっかりと文に入れたいですね!

次のように言うことができます。

My test scores went up just because I attended a cram school.
(単に塾に行っているからというだけで、テストの点数が上がりました。)

because に副詞 just を付け加えると、「単に~からというだけで」という意味になります。

また、カジュアルなやり取りの場面ではこんな風に使うこともできます。

Why did you skip class yesterday?
(なんで昨日、授業をさぼったの?)
I don’t know. Just because.
(さあね。ただ何となく。)

ネイティブは、この I don’t know. Just because.(さあね。ただ何となく。)と、セットフレーズのように日常会話の中で使っています。

また、少し難しい文ではありますが、「~という理由だけで…ということではない(…という意味にはならない)」という言い方もご紹介します!

この言い方、とても利便性が高いのでマスターできる人はぜひ使ってください!

<Just because ~ doesn’t mean .>

Just because you go to cram school doesn’t mean your test scores will go up.
(単に塾に行っているからといって、テストの点数が上がるわけではありません。)

Just because a dish is expensive doesn’t mean it’s delicious.
(料理が高いからといって、美味しいとは限りません。)

こちらは just because が節をつくって主語になり、後にくる主節が否定語をともなっている例です。

このように、副詞(just など)が修飾できるのは because だけで、since や as は使えません

では、他の例も見てみましょう。

<主に~なので:mainly because>

She started going to the gym mainly because she wanted to lose weight.
(彼女がジムに通い始めたのは、主に体重を減らしたかったからです。)

<1つには~が理由で:partly because>

I didn’t buy the jacket partly because it was too expensive.
(1つには高すぎるという理由で、私はそのジャケットを買いませんでした。)

<おそらく~が理由で:probably because>

He’s not answering his phone probably because he’s in a meeting.
(彼は電話に出ません。おそらく会議中だからです。)

just / mainly / partly / probably などの副詞を付け足すとニュアンスが変わり、よりバラエティー豊かな表現ができるようになりますね!

いかがでしたか。

ぜひ、理由を表す because / since / as の使い分けを意識しながら使ってみてください! また副詞で異なるニュアンスを付け加えた because の使い方も試してみてくださいね。

I always put a lot of effort into writing this column because I want to help you enjoy learning English!
(みなさんに英語学習を楽しんでいただきたいので、私はいつも、このコラムを一生懸命書いています!)

See you next time!
(ではまた!)