学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

とっさの will と、計画的な be going to

みなさん、こんにちは。駒井亜紀子です。

第22回のコラムでは、because / since / as の使い分けに焦点を当てました!

このように似た意味の単語(または語句や文法)を適切に使い分けられるようにするには、次の2つの方法を組み合わせて学ぶことが非常に大事です。

【1】「使い方の違い」や「使い方のルール」を理解すること。
【2】「トライアンドエラー」を実践の中で繰り返し、適切な使い方を体で習得していくこと。

ちなみに、「トライアンドエラー」という言葉は「試行錯誤」という意味ですが、和製英語です。
英語では「trial and error」と表すので気をつけましょう!

話がそれましたが(いつものことですね…)、
言語習得においては、理論だけ頭に入れていても実際に使えるようにはなりません。

「道具は、実際に使ってみて初めて、その本当の使い方がわかる」という考え方は、英語という「道具」にも当てはまります。

たとえば、まっすぐ切りたいときには「カッター」が便利ですし、曲線的に切りたいなら「ハサミ」が適しています。似たような道具でも、実際にその違いを理解するには、実際に使って体感してみるしかありません。

話がそれましたが(2回目)、
今回は、「使い方の違いがわかりません選手権」のランキング1位(駒井調べ)である、「未来を表す語句の will と be going to の違い」を取り上げます。
どちらも「未来の動作を示す表現」じゃないの? と思われたかもしれません。確かに、どちらも単純に言い換えることができるケースも多いですが、実は違いもあるんです。

will と be going to の使い方の違いを一緒に学んでいきましょう!

1. 意志を表す will と be going to

will と be going to は、未来を表す働きがあることは共通していますが、will には主語の未来への意志を表した「意志未来」と、単純に未来を表現した「単純未来」という2つの使い方があります。また、be going to にも「未来」だけではなく「意図・予定」や「予測」の意が含まれます。

まずは「意志未来」の will から説明していきます!

【とっさにその場で決めたなら → will】
さっそく例文を見てみましょう!

<家で>
A : Oh, it’s starting to rain!(わぁ、雨が降ってきた!)
B : I will bring in the laundry!(洗濯物を取り込むね!)

<レストランで>
A : Are you ready to order?(ご注文はお決まりですか?)
B : I’ll have the extra spicy curry, please.(この激辛カレーをお願いします。)

<家で>
A : The phone is ringing.(電話が鳴ってるよ。)
B : I’ll get it!(私が出るね!)

これらの例文では、全て will を使って応答していますね。

この will の使い方に共通しているのは、話し手が「とっさに決めたことを伝えている」という点です。

洗濯物を取り込むと決めたのも、激辛カレーを注文しようと決めたのも、電話に出ようと決めたのも、全てその場で「こうしよう!」と即決し、話し手の意志を示した内容になっています。

このように、その場で決めたことを口にする場合には will を使うのが一般的です。
もう少し例文を見てみましょう。

<買い物の場面で>
A: Which bag do you want?(どちらのかばんが欲しい?)
B: Hmm I think I’ll go with the red one.(うーん、赤の方にしようかな。)

※go with ~ は「~を選ぶ」という意味です。

<仕事場で>
A: Do you think 10 copies is enough?(コピーは10枚で足りそう?)
B: I think it’ll be fine.(足りると思うよ。)

※fine は「十分に用が済ませられる」という意味です。

どの状況も、相手の発言に対して瞬発的に思ったことを口に出して返答していることがわかります。

このように、その時の相手の発言に対して、「たった今、そう決めた。そう思った。」というニュアンスで、話し手の意志を表すのによく使われるのが「意志未来」の will です。

【強い意志を表すなら → will】

「強い意志」や、「約束」、「決意」を表す時に使うのも will です。

先程の「とっさに思いついたことを口にする場合」とは相反するニュアンスですよね。

will は「話し手の弱い意志(とっさに思いついた場合)から強い意志までを表す」ととらえておきましょう。

弱い意志なのか、それとも強い意志を表すのかは、その時の場面・状況によって異なります。

ルールだけでは決められないのが言語学習の難しいところ。
そのため、冒頭で挙げた「使って慣れる」という2つ目の方法が必要なんですね!

例えば、2020年にバイデン氏がアメリカ合衆国大統領選挙で勝利を宣言した際のスピーチでは次のように will を使っています。

I will spare no effort, none, or any commitment to turn around this pandemic.
(私はこのパンデミックを好転させるために、いかなる努力や献身をも惜しみません。)

演説や政治の世界では、プレゼンターは自分の強い意志を表現するために will を使うことが多く、この発言以外でも何度も will が使われています。

また、昔流行ったホイットニー・ヒューストンの歌に “I Will Always Love You”という曲がありますが、And I will always love you~♪(私はこれからもずっとあなたを愛し続けます。)という歌詞が出てきます。

これも「愛し続ける」という強い気持ちが感じられますよね。

日常的な場面に話を戻しましょう!

意志や決意を表す will が使われるのは次のようなセリフです。
強い意志を表す時は I will のように、省略せずに使うのが一般的です。

I will do my best!(全力を尽くします!)
I will try hard!(一生懸命やります!)
I will not forget this lesson!(この教訓を忘れません!)

内容からも意志の強さが伝わってきますね。

【すでに計画していたなら → be going to】

一方、すでに予定を立てていた場合や、前から考えられていた未来の出来事を表す場合、一般的に be going to を使います

例文を見てみましょう。

Tomorrow is a national holiday, but I‘m going to work.
(明日は祝日ですが、仕事します。)

We’re going to hold a charity event next month.
(来月、私達はチャリティーイベントを開催する予定です。)

I’m going to move to Tokyo next week.
(来週、東京に引っ越す予定です。)

このように、前から決まっていた用事の場合には be going to を使います。
予定がカレンダーに入れられ、実行するための計画や準備がすでに進行しているイメージです。

2つの例文を見てみましょう。

I will be a doctor.
I’m going to be a doctor.

どちらも「医者になります」という意味ですが、I will be a doctor. は「医者になるんだ!」という強い意志を持って将来の夢を語っていると考えられるのに対し、be going to の場合は、実際に医学部で学んでいて、近い将来に医者になるというニュアンスが感じられます。

She is going to have a baby next month.
(彼女は来月出産する予定です。)

出産のように事前に決まっている予定で、すでに「お腹に赤ちゃんがいる」という根拠がある未来を表すため、will は使わずに be going to を用います。

2. 単に未来を表す will と be going to

【単純な未来を表すなら → will】

「単純未来」の will は、文字の如く、確実に起こりそうな未来のことを単純に表しています。

例文を見てみましょう。

The construction will be completed within a month.
(工事は1カ月以内に終わるでしょう。)

I will be seventeen tomorrow.
(明日、17歳になります。)

特に、天気予報やニュースの場合、will が多く使われます。

It will rain tonight and the temperature will go down.
(今夜は雨が降り、気温が下がるでしょう。)

なお、次のような場合には少し注意が必要です。

He will come here by 5 o’clock.
(彼は5時までに来ます。)

この例文では話し手が他人の行動に対して確信を持ち過ぎているという印象を与える可能性があります。
「絶対に来る」、または「無理矢理にでも来させる」というニュアンスにもなりかねないため、I think he will come here by 5 o’clock.(彼は5時までに来ると思います。)のように、I think などの表現を挟み、断定を避けるようにするのが無難です。

【現在の兆候に基づいて予測するなら → be going to】

一方、状況を踏まえた上で、話し手が予測して話す場合には be going to が使われます

天気予報は will を使う場合が多いと説明しましたが、天気に関しては次のように言うこともできます。

It’s getting dark. I’m afraid it’s going to rain.
(徐々に暗くなってきたね。雨が降りそうだ。)

この場合は雲が出てきて暗くなった様子を見て、話し手の判断で「雨が降る」と言っています。

There are tears in her eyes. I think she’s going to cry.
(目に涙をためているよ。彼女は泣いてしまうと思うよ。)

目に涙を浮かべている様子を見て、話し手が「泣いてしまう」と判断しています。

いかがでしたか。
will と be going to の使い方の違いやニュアンスの違いはわかりましたか。

ただし、will と be going to の使い方の違いを知っても、その使い方はその時の場面・状況に依存することも多く、どちらを使えばいいか迷う場合もあるでしょう。

例えば…

雲を見て天候を予測する場合、① It is going to rain this afternoon. と② It will rain this afternoon. のそれぞれの文のネイティブの使用率を見てみると、①は100%で、②は86%という調査結果があり(『オーレックス英和辞典 初版』より引用)、どちらも高い割合で使われることがわかります。

また、「今から散歩に行ってくるね。」と言いたい場合、思いつきで言っているように感じられるため、上記で説明したルールに則ると will を使うような気がします。しかし、あるネイティブは、I’ll go for a walk now.(今から散歩に行ってくるね。)のように will を使うと「決心をしたような硬い表現のように感じる。」と話しており、I’m going to go for a walk now. の方が自然な言い回しだと言っています。

なぜ be going to の方が自然に感じるのか、その理由を探ろうとすれば、何かしらの理由はあるかもしれませんが、言語というものは、全てがルールに沿って用いられているわけではありません。

大事なのは、冒頭でお話したように「トライアンドエラーを実践の中で繰り返し、最終的に適切な使い方を体で習得していくこと」です。
ちなみに、言語習得について書かれた本には以下のように書かれています。

  • 大事なのは、文法規則だけで全てが割り切れるわけではないことをまず理解しておくことです。
    (中略)
    言語というものは非常にソフトなものなので、文法規則だけで全て割り切れないことをまず理解しておかないと、フラストレーションが溜まる。
  • (『英語教師のための第二言語習得論入門 改訂版』より引用)

いったん、簡単なルールは頭に入れておき、そのルールに従って使ってみて、体でその違いを学び、徐々に使い慣れていくことが言語習得では必要です。

また、映画や YouTube などで、実際にネイティブが will や be going to を使っている場面を考察し、「この場合には will」「この場合には be going to」というように「使い分けの感覚を養う」というのも1つの方法です。

文法を学びながら、かつ、柔軟に練習していきましょうね!

I will come back here and share an informative column with you in a few months!
(数カ月後にまた戻ってきて、役立つコラムをお届けします!)

※ここでは強い意志を will で表しています!

See you next time!
(ではまた!)