学校で習ったはずの英文法。日常会話にもよく出てくる使い方なのに、すっかり忘れていませんか? 身近にあるのに意外と知らない「習ったつもり」の英文法を、大学や専門学校、企業で教鞭をとるTOEIC人気講師・駒井亜紀子先生が解説してくれるコラムです。

「現在分詞」と「過去分詞」は、「する側」か「される側」かで使い分けよう

“夏”と言われる季節が過ぎて数か月経ちますが……
みなさんは夏休みに何か楽しかったイベントはありましたか。

私はこの夏に行われた SUMMER SONIC という音楽フェスに参加するのを、仕事の都合で断念しました……

“推し”のアーティストが出ていましたが、行けなくて非常に残念です! 今度から「遊びのスケジュールを優先しながらも仕事もカンペキにこなすこと」を徹底すると誓います(各関係者の皆様への宣言)。

ところで……
その SUMMER SONIC のホームページに、とある英文が書いてありました。
問題形式でみなさんにご紹介します(いかなる時も学びを提供する精神)。

  • 空所に当てはまる単語は、次の2つのうちどちらでしょうか。
  • Notice to customers (   ) SUMMER SONIC
     1) attending
     2) attended

日本語に直訳すると「SUMMER SONIC に参加しているみなさまへご連絡」というような内容になるはずです。

さて、みなさんは attending と attended のどちらを選んだでしょうか。

これは、現在分詞 attending と過去分詞 attended のどちらを当てはめるのが正しいかという、文法を問う問題です。

答えは、現在分詞 attending を入れ、
Notice to customers attending SUMMER SONIC
とするのが正解です。

この問題で迷った多くの人のために(分詞を苦手とする人が多いことを私は知っています!)、今回は分詞について説明します!

1. 分詞の役割

そもそも、分詞とは「動詞形容詞の性質を分かち持っている」ことから名づけられたもので、「現在分詞」と「過去分詞」の2種類があります。

この2つの基本的な形と意味は以下の通りです。

現在分詞 基本的には動詞に ing をつけ、「~している、~する」という進行中の動作や能動的な意味を持つ。
過去分詞 基本的には動詞に ed をつけ、「~された」という受け身の意味を持つ。

もともとは動詞ですし、意味合いを見ても「~している、~する」「~された」と動詞のように捉えるので、「動詞の性質を持っている」のはわかりますね。では、「形容詞の性質を持っている」とはどういうことかを説明します。
まずは、こちらの英文を見てください。

I received a long letter from him.
私は彼から長い手紙を受け取りました。

文中の形容詞 long は名詞 letter を修飾し、「長い手紙」という意味にしていますね。
一方、こちらの英文も見てみましょう。

I received a typed letter from him.
私は彼からタイプされた手紙を受け取りました。

この過去分詞 typed は名詞 letter を修飾し、「タイプされた手紙」という意味になっています。

ここでお気づきでしょうか。
この過去分詞も、形容詞と同じように名詞を修飾しています。つまり、分詞は形容詞と同じ役割ができるということです!

さて、分詞による名詞の修飾の方法は2パターンあります。

(1)分詞を「名詞の前」に置いて修飾
分詞のみで修飾する場合は、「名詞の前」に置きます。

The singing woman is from Brazil.(現在分詞で修飾)
歌っている女性はブラジル出身です。

The broken window should be fixed soon.(過去分詞で修飾)
割れた窓はすぐに直さなければなりません。

(2)分詞を「名詞の後ろ」に置いて修飾
他の語句を伴って修飾する場合には、「名詞の後ろ」に置きます。

The woman singing on the stage is from Brazil. (現在分詞で修飾)
ステージで歌っている女性はブラジル出身です。

The window broken by the storm should be fixed soon.(過去分詞で修飾)
嵐で割れた窓はすぐに直さなければなりません。

分詞は「動詞の意味を表しながら形容詞の役割ができる」ということがわかり、2つの「名詞の修飾の仕方」が整理できましたね!

2. 現在分詞と過去分詞の選び方

学習者がもっとも混乱するのが、現在分詞と過去分詞の選び方です!

冒頭の「Notice to customers (   ) SUMMER SONIC」では、現在分詞 attending(参加している)を当てはめるのが正解でしたね。

このように現在分詞か過去分詞、どちらを使ったらいいかを選ぶ際の2つのポイントを説明します。

(1)修飾される名詞を見極める

分詞は形容詞のように名詞を修飾します。まずは「その分詞が修飾する名詞は何か」を見極めましょう。

先程の文を見てみます。(何度も登場させてすみません!)
Notice to customers attending SUMMER SONIC

文中には customers(お客様)、SUMMER SONIC の2つの名詞がありますね。
attending が修飾しているのはどちらの名詞なのかを考える必要があります。

attend には他動詞・自動詞の用法がありますが、この文では attend の直後に名詞(SUMMER SONIC)が置かれています。よって、 attend は他動詞として「~に参加する」の意味で使われており、SUMMER SONIC はその目的語であるとわかりますね。
そして、この「attending SUMMER SONIC(SUMMER SONIC に参加している)」というひとかたまりの語句が名詞 customers を後ろから修飾していると判断できます。

案外、「どの名詞を修飾しているか問題」は頻繁に起こるので、分詞を問われた場合は、まず、どの名詞を修飾しているかを判断する意識を必ず持ちましょう。

(2)修飾される名詞と分詞の関係を見る

修飾される名詞が判断できたら次に進みましょう!

修飾される名詞と分詞のあいだには、「主語」と「述語」の関係があります。
その関係が「能動」か「受動」か、を考えます。
実は、現在分詞・過去分詞と呼ばれるものの、「現在」や「過去」といった時制とはほぼ関係ありません。それよりももっと意識したいのは、その名詞と分詞の関係が、「能動」なのか「受動」なのかという点で、それによってどちらの分詞を選べばよいかが決まります。

能動関係 名詞が~している、~する → 現在分詞を使用する
受動関係 名詞が~される → 過去分詞を使用する

冒頭の例文は、customers(お客様)と、それを修飾する分詞 attending が主語と述語の関係になっています。
その関係が能動なのか受動なのか、どちらであるかを考えます。

  (正) customers attend SUMMER SONIC
上記の文は文法的にOKですね。「お客様がサマーソニックに参加する」という、能動の意味になります。
反対に、下記の文はどうでしょうか。
  (誤) customers are attended SUMMER SONIC
このように受動態にすることはできません。

つまり、customers を修飾するのは「現在分詞(=能動関係を表す)」だと判断できますね!

修飾される名詞が「~する側(能動)」であれば現在分詞を使う、修飾される名詞が「~される側(受動)」であれば過去分詞を使うというポイントで見極めるようにしましょう。

いかがですか。
この2つのポイントをおさえることで、現在分詞か過去分詞かが選びやすくなります!

ちなみに……
現在分詞は「~している、~する」、過去分詞は「~された」という意味合いになるので、それぞれの意味を英文に当てはめてみて、「正しく意味が成り立つ方を選ぶ」という方法もあります。

例えば、<printing / printed> documents で、現在分詞か過去分詞を選ぶ場合を考えてみましょう。

現在分詞 printing を入れて「印刷している資料」とするのか、過去分詞 printed を入れて「印刷された資料」とするのか、どちらの言い方が正しいかで判断するという方法ですね。

この場合は、後者の過去分詞を入れるのが正しいと意味から判断できます。

このように、「それぞれ当てはめた日本語訳で判断する」というのも1つの方法ですが、注意しなければいけないことが1つあります。

それは「日本語は自由度が高く、どのようにも解釈できてしまう柔軟性がある」ので、日本語訳を軸に分詞を選ぶと間違える可能性があるということです。

みなさん、次の日本語に違和感はありますか。

「日本で作っているワインを買いました」

これを読んで、違和感がある人の方が少ないかもしれません。
日本語では受動と能動をあまり意識せずに表現しても、なんとなく意味が通じてしまうことがあるんですよね。

そのため、このような日本語訳(「作っているワイン」)を軸にすると、(誤)I bought a bottle of wine making in Japan.のように、間違った文を作りかねません。

これは「作っているワイン」という日本語をベースとして判断した結果、現在分詞 making を間違って選んでしまったケースです。

やはり、「訳を当てはめてみる」という判断の他に、名詞が「~する側(能動)」と「~される側(受動)」のどちらなのかを判断するという方法のほうが確実ですね。

この場合、修飾されるのは名詞 wine(ワイン)なので、ワインは「作る側(能動)」なのか「作られる側(受動)」なのかを判断します。

当然、ワインは「作られる側」なので、過去分詞 made を入れ、I bought a bottle of wine made in Japan. とするのが正解だとわかります!

いかがでしたか。
現在分詞と過去分詞の基本的な使い方が整理できたのではないでしょうか。

Thank you for reading this column written with all my heart.
(私が心を込めて書いたこのコラムを読んでくださってありがとうございます!)
See you next time!
(ではまた!)