この記事では、英検1級合格のために必要な情報をまとめて紹介しています。最初に、レベルはどのくらいで合格点は何点か、合格するとどんなメリットがあるかといった英検そのものの解説や、試験日程などの情報を挙げてあります。次に、出題の傾向や特徴、効率的な勉強法、苦手とする人が多いリスニングの対策など、かなめとなる試験対策を詳述します。最後に、試験当日の流れや具体的な問題例と解答のコツ、面接のポイントなどをまとめています。英検1級を受験する方、受験を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事は、2023年3月時点の情報に基づいています。受験の際は、英検ウェブサイトで最新情報をご確認ください。

※本記事は、複数ある試験方式のうち、最も標準的な「従来型」を前提に解説しています。試験方式の詳細は、「英検とは:概要と級別の勉強法・試験対策:試験方式について」をご参照ください。

英検とは

英検とは、実用英語技能検定のことです。公益財団法人 日本英語検定協会が主催し、文部科学省が後援しています。1級、準1級、2級、準2級、3級、4級、5級の7つの級があり、年に3回実施されています。年間の総志願者数は250万人を超える、日本で最大規模の英語検定試験です。

リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングという、英語の運用に不可欠な4技能を堅実に測定する検定で、長年にわたる実施歴により、抜群の知名度と信頼を得ています。検定料は4技能を測って11,700円(1級の場合)です。試験会場も多く受験しやすいのが特長です。小学生から社会人まで幅広い年齢層を対象としているため、職歴や経験によって結果が左右されないよう設計されており、「誰でも受けられる」「英語力そのものを測る」検定という定評があります。

7つの級のどれにチャレンジしてもかまいません。試験後に送付される成績表には、合否判定だけでなく、どのくらい合格ラインを上回ったか、あるいは下回ったかなどが示されることから、習熟度のチェックや学習モチベーションの維持にも活用できます。国際標準規格CEFRに対応した英検CSEスコアによって、自分のレベルをグローバルな視点で把握できることも長所です。

レベル

英検1級は大学上級程度のレベルとされ、「広く社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる」とうたわれています。英語資格試験の中でも屈指の難関として知られ、大学生・社会人を中心に、幅広い層に受験されています。

受験する意義

大学生にとっては、英検1級を持っていると大学によっては、英語科目の単位として認定されます。留学の際、英語力の証明として使えるケースもあります。就職活動においても、例えば教員採用試験で試験の一部免除や点数の加点の対象になるなどの優遇措置を受けられます。英語の運用を求められる職場では、英検2級以上を取得していることが望ましいとされるので、1級を持っていると、採用の際に大変有利です。

社会人にとっては、英検1級を持っていると、グローバル・ビジネスの現場で実務をこなすだけの英語力があるという証明になるでしょう。国家試験である通訳案内士試験(通訳ガイド試験)において、英検1級合格者は筆記(一次)試験の外国語(英語)科目の受験が免除されるなど、優遇措置を受けられるケースもあります。ワールドワイドに働きたい人にとって英検1級は、大きな強みとなるでしょう。

TOEICテストとの違い

英検の問題とTOEICテストの問題は大きく異なります。英検1級では、家庭・学校・職場・地域など社会生活での場面・話題が出題され、時事問題から歴史・文化、自然科学まで読みこなすという、幅広い話題に対応できる語彙力・背景知識が求められます。一方TOEICテストでは、ビジネスでの英語力を測定する試験であるため、ビジネスにおける場面・話題が中心に出題されます。

また英検1級は、一次試験ではリーディング・ライティング・リスニングの3技能、二次試験ではスピーキングの能力を判定する4技能テストです。対するTOEICテストは、リーディングとリスニングの能力を判定するTOEIC L&Rテストと、スピーキングとライティングの能力を判定するTOEIC S&Wテストとに分かれています。近年は、従来重視されていたリーディング・リスニングの技能に加え、スピーキングやライティングの能力も求められる傾向が顕著です。4技能を総合的に判定したい場合は、一度の申し込みで受験でき、検定料も安価な英検1級にメリットがあります。

英検1級とTOEICテストは、そもそもテストの性質が異なるため、単純な比較はできません。しかし、外国語運用能力の評価基準であるCEFR* に基づいて各試験を比較すると、英検1級合格はCEFRのC1にあたり、TOEIC L&Rテストでは945点以上(満点は990点)、TOEIC S&Wテストでは360点以上(満点は400点)にほぼ対応します。

CEFR 英検 TOEICスコア
測定範囲 英検CSEスコア
C1 1級    2600~3299
(1級合格:2630)
L&R:945~
S&W:360~
B2 準1級  2300~2599
(準1級合格:2304)
L&R:785~
S&W:310~
B1 2級  1950~2299
(2級合格:1980)
L&R:550~
S&W:240~
A2 準2級  1700~1949
(準2級合格:1728)
L&R:225~
S&W:160~
A1 3級 1400~1699
(3級合格:1456)
L&R:120~
S&W:80~

(大学入試センターの公開資料とTOEICウェブサイトを基に作成)

* CEFRは、世界中で広く利用されている外国語運用能力の指標です。詳しくは当サイト内の記事「CEFRで見る英語・外国語検定試験」をご参照ください。

試験内容

英検1級には、一次試験(筆記・リスニング)と二次試験(面接)があります。

一次試験

一次試験は、筆記試験とリスニングテストの2部構成です。
筆記試験は100分で、リーディング・ライティングの2技能が判定されます。
リスニングテストは約35分で、筆記試験に続いて実施されます。
解答形式は、英作文のみ記述式で、それ以外はマーク式です。

問題の構成は下記のとおりです。

●筆記試験

測定技能 問題番号 問題形式 詳細 設問数
リーディング 1 短文の語句
空所補充
文脈に合う適切な語句を補う。 25
2 長文の語句
空所補充
パッセージの空所に文脈に合う適切な語句を補う。 6
3 長文の内容
一致選択
パッセージの内容に関する質問に答える。 10
ライティング 4 英作文 指定されたトピックについての英作文を書く。 1

●リスニングテスト

測定技能 問題番号 問題形式 詳細 設問数
リスニング Part 1 会話の内容
一致選択
会話の内容に関する質問に答える。
(放送回数1回)
10
Part 2 文の内容一致選択 パッセージの内容に関する質問に答える。
(放送回数1回)
10
Part 3 Real-Life形式の内容
一致選択
Real-Life 形式の放送内容に関する質問に答える。
(放送回数1回)
5
Part 4 インタビューの内容
一致選択
インタビューの内容に関する質問に答える。
(放送回数1回)
2

英検1級では、社会生活一般、芸術、文化、歴史、教育、科学、自然・環境、医療、テクノロジー、ビジネス、政治などに関する話題が出題されます。

二次試験

二次試験は面接形式のスピーキングテストです。
日本人およびネイティブスピーカーの面接委員と2対1で約10分話します。

出題される問題は下記のとおりです。

測定技能 問題形式 詳細
スピーキング 自由会話 面接委員と簡単な日常会話を行う。
スピーチ 与えられた5つのトピックの中から1つ選び、スピーチを行う。(2分間)
Q&A スピーチの内容やトピックに関連した質問に答える。

英検1級の二次試験では、社会性の高い幅広い分野の話題が出題されます。過去の出題例を挙げると、科学の発展は常に有益か、芸術への財政的支援増加の是非、世界経済における日本の役割、選挙権の行使を義務化するべきか、遺伝子組み換え食品の安全性、公共の場における治安改善の必要性などです。

日程

英検1級は年に3回実施されます。実施月は下記のとおりです。

  一次試験 二次試験
第1回 6月 7月
第2回 10月 11月
第3回 1月 2~3月

個人受験は、下記の日程で実施されます。

●2023年度

  受付期間 一次試験 二次試験*
第1回 3月31日~5月2日
(書店は4月21日締切)
6月4日(日) (A日程)7月2日(日)
(C日程)7月16日(日)
第2回 8月1日~9月8日
(書店は9月1日締切)
10月8日(日) (A日程)11月5日(日)
(C日程)11月23日(木祝)
第3回 11月1日~12月14日
(書店は12月8日締切)
2024年1月21日(日) (A日程)2024年2月18日(日)
(C日程)2024年3月3日(日)

* B日程が実施されるのは、2級、準2級、3級のみです。

二次試験にはA日程とC日程とがあり、英検1級の個人受験では、20歳以下がA日程、21歳以上がC日程に割り振られます。

個人受験でも準会場(団体試験の会場)で受験できる場合があります。その場合は、上記の個人受験(本会場)の日程とは異なり複数の日程があります。詳しくは、英検ウェブサイトで最新情報をご確認ください。また、団体受験の受験日も、個人受験の日程と異なり複数ありますので、ご自身の所属する団体に問い合わせましょう。

過去問

英検1級の問題やレベルを確認するには、過去問を解いてみることが一番です。英検ウェブサイトにて、直近3回分の過去問が公開されています。過去問は、試験終了後1週間程度でアップされます。

過去問で英検1級対策をするなら、日本語訳と丁寧な解説が掲載された旺文社の過去問シリーズがおすすめです。6回分の過去問を収録した『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』をご利用ください。

『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』

英検1級合格を目指すなら、まずは過去問から!

まだ試験のことがよくわからない、という人は、まず試験の中身を知るために使ってください。ひととおり解くことで、自分が今どれくらいのレベルなのか、把握することもできます。そして、6回分収録されていますので、実力の伸びを確認したい、総仕上げとしたいなど、学習の進捗にあわせてさまざまな場面で利用することができます。

また、二次試験・面接では、英検協会から模範解答は発表されていませんが、本書で独自に作成したモデルスピーチを、各回5つ、合計30掲載しています。理想的な解答のイメージがつかめて、学習しやすくなります!

音声は、旺文社リスニングアプリ「英語の友」で無料で聞くことができます(ただし、書籍に記載されたパスワードの入力が必要です)。

合格点・合格率

一次試験

2015年度までは配点は原則1問1点で、筆記大問3は1問2点、筆記大問4は28点、リスニングPart 3、4は1問2点、合計113点満点で、合計点が合格点以上であれば合格でした。しかし2016年度からは、技能ごとに算出されたCSEスコアという指標をもとに合否が判定されるようになり、その結果何問正解すれば合格か、はっきりとはわからなくなりました。ただし日本英語検定協会は、「2016年度第1回*では、各技能7割程度の正答率の受験者の多くが合格した」と発表しており、今後も7割程度の正答率が合格ラインだと予測されます。

* CSEスコアによる合否判定が導入された最初の試験回

CSEスコアでは、リーディング・リスニング・ライティングの技能ごとに850点満点とされており、合格基準スコアは3技能合計で2028点です。英作文問題は筆記試験の中のたった1問ですが、ライティングとして850点満点で評価されるため、一次試験の中で比重は1/3とかなり大きくなります。例えば、リーディング・リスニングで満点を取っても、ライティングが0点だった場合、合計1700点となり、合格基準スコアに328点足りないことになります。つまり、日頃からどの技能もバランスよく高めておくことが、英検1級合格には必要なのです。

二次試験

二次試験の合否もCSEスコアで判定されます。満点は850点で、合格基準スコアは602点です。スピーチ・応答の内容、語彙、文法、発音の正確さなどが評価ポイントとなります。

合格率

2015年度の合格率は12.0%でした。2016年度以降、合格率は公表されていません。

合格までの道のり

受験級の確認

英検を受験する際には、受験すべき級が本当に1級であるか、よく検討しましょう。英検は下の級から順に受験する必要はなく、初めて英検を受験する場合でも、英検1級を受験してかまいません。

英検ウェブサイトで過去問を眺め、自分の実力とかけ離れていないかどうかチェックしましょう。もし歯が立たないと感じたら、今の実力により近い級を先に受験し、ステップアップするというやり方もあります。

ケース別学習手順

英検1級にチャレンジする方のモデルケースを2つ想定しました。ご自分と比較して、学習手順・所要時間の目安にしてください。

ケースA:大学で英語を学んでいる大学生。留学経験もあり

こういう方の場合、普段の勉強でかなりの英語力が身についていると思われます。しかし英検1級の場合、筆記大問1で使用頻度が少ない単語が多く出題されるなど、決して簡単に合格できる試験ではないので、傾向を知り対策をする必要があります。

1. 単語・熟語力をつける

『英検1級 でる順パス単』で単語と熟語の知識を頭に入れましょう。類義語や派生語、反意語など、知識を関連づけてふやしていくことが大事です。英検1級レベルでは語彙力はあればあるほど有利なので、受験を決めたらすぐに勉強を始め、試験直前まで続けましょう。 [学習時間の目安:20時間]

2. 英検対策書で出題の傾向をつかみ、実力を養う

『DAILY30日間 英検1級 集中ゼミ[6訂版]』で、各大問の内容をチェックし、練習問題で問題形式に慣れましょう。 [学習時間の目安:25時間]

3. 自分の弱点を見つけ、補強する

『DAILY30日間 英検1級 集中ゼミ[6訂版]』をやってみて、正答率が低い分野を見つけた場合、または自分で「~が苦手だ」と自覚している場合は、その克服に努めましょう。例えば、リスニングが不得手なら、『英検分野別ターゲット 英検1級 リスニング問題[改訂版]』を使い、リスニング問題を集中的にやりましょう。 [学習時間の目安:6時間]

4. 二次試験の問題演習

二次試験対策として、『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』で過去問に挑戦しましょう。スマホなどで自分の解答を録音し、あとから自己評価すると効果的です。 [学習時間の目安:4時間]

以上の手順1~4で、約55時間必要です。

ケースB:英検準1級にだいぶ前に受かった社会人。1級にチャレンジしたい

学生時代は英語をかなりがんばったけれど、就職後は英語を使う機会があまりない…。そのような方の場合、語彙力を取り戻し、ブラッシュアップする時間を見込まなくてはなりません。また、二次試験の面接で2分間話し続けることはハードルがかなり高いでしょう。となると、英語を話すことに慣れておく必要があります。

1. 単語・熟語力をつける

『英検1級 でる順パス単』で、単語と熟語を覚えましょう。状況によっては、書いて覚えることができる『英検1級 でる順パス単 書き覚えノート』や、カギとなる語彙・イディオムを集めた『英検分野別ターゲット 英検1級 単語・熟語問題[改訂版]』も、一緒に使うといいでしょう。受験勉強の開始当初から取り組み、試験前までコンスタントに積み上げていきましょう。 [学習時間の目安:40時間]

2. リーディング力、リスニング力をきたえる

ダウンロード音声や旺文社リスニングアプリ「英語の友」で長文と単語を聞くことができる『英検1級 文で覚える単熟語[4訂版]』を使い、語彙力だけでなくリーディング力とリスニング力も併せてブラッシュアップしましょう。 [学習時間の目安:18時間]

3. スピーキング力を磨く

二次試験対策として、ネイティブスピーカー、あるいは英語を話し慣れている教師・友人などとディスカッションする機会を設けましょう。マンツーマンの英会話レッスンに通うのもよいでしょう。月2回、1回1時間のセッションを5カ月間行うと見込みます。 [学習時間の目安:10時間]

4. 出題形式に慣れる

『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』で過去問を解き、出題形式に慣れましょう。答え合わせも入念に行い、間違った箇所は解説を十分に読み込む必要があります。 [学習時間の目安:24時間]

5. 自分の弱点を見つけ、補強する

『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』を解いていて正答率が低い分野を見つけた場合、また自分で「~が苦手だ」と自覚している場合は、その克服に努めましょう。例えば、ライティングが苦手なら、『英検1級 英作文問題[改訂版]』で英作文を基礎から学び、様々なトピックについてエッセイを書いて数をこなしましょう。 [学習時間の目安:15時間]

6. 二次試験の問題演習

『14日でできる! 英検1級 二次試験・面接 完全予想問題[改訂版]』で二次試験対策をしましょう。英語を話し慣れている教師・友人などに頼み、本番同様の演習を積むとより効果的です。 [学習時間の目安:10時間]

以上の手順1~6で、約117時間必要です。

もちろん個人差もありますので、上記の時間はあくまで目安です。日頃、大学などで英語の授業を受けている方は、その分、英語力が日々高まっているはずですので、個人学習にここまでの時間は必要ないかもしれません。逆に、社会人などで独学されている方は、十分な学習時間を確保できるよう、しっかり計画を立てることが大切です。

勉強法

単語

英検1級によくでる単語は、社会性の高い幅広い話題で使われる語彙が中心です。レベルは極めて高く、新聞や雑誌でもあまり見かけないような語が出題されることもあります。特に筆記大問1は、25問中最初の21問程度が単語の知識を問う問題です。品詞別に見ると動詞・名詞・形容詞がほぼ同数ずつ大半を占め、副詞も出題されています。

大問1によくでる単語を例に挙げると、allay(~を和らげる)、conjecture(推測)、caustic(辛らつな)などです。

参考書

おすすめの参考書は、『英検1級 でる順パス単』です。過去の英検問題を分析し、よく出題される単語を「でる順」に掲載した、リスト型単語集です。

『英検1級 でる順パス単』の音声は、旺文社リスニングアプリ「英語の友」で無料ダウンロードできます。収録された見出し語のリストを見ながら発音を確認できるので、英検1級レベルの単語を、効率的に耳で覚えられます。

勉強法

英検1級レベルの単語を学習するには、幅広い分野についての社会性の高い英文に日頃から触れることが大事です。TIME や Newsweek などネイティブ向けの、内容的に高度な記事を積極的に読むようにしましょう。見慣れない単語があったら意味を調べるだけでなく、コロケーション(他の単語との、よく使われる組み合わせ)や、覚えやすいように短いフレーズにしたものをメモして、自作の単語帳を作ると効果的です。大問1の対策にもなりますし、英作文(ライティング)や面接(スピーキング)の際に、自然な英語表現を使えるようにもなります。

英語の記事などを読むのと並行して、単語集も活用するとよいでしょう。英検1級の大問1に出題される単語は、ジャンルが幅広い上、使用頻度が少ないので、読書だけを通して覚えようとすると膨大な量を読まなくてはならなくなります。したがって単語集を使った方が、効率的に覚えられるでしょう。早い時期から『英検1級 でる順パス単』を使い、他の学習と並行して取り組むことをおすすめします。知らない単語があまりに多いようであれば、まずは「でる度A」の語彙を集中的に覚え、それから「でる度B」へ、と順々に攻略していきましょう。

単語集は、「覚えている」「覚えていない」を仕分けるチェックリストととらえましょう。まず、載っている単語を覚えているか覚えていないかを基準に、すべてを短時間で仕分けていきます。単語集の見出し語にはチェックボックスがありますから、「覚えていない語にチェックを入れる」とルールを決めて(逆に覚えている語にチェックを入れてもかまいません)、チェックを入れていきましょう。それから暗記に移ります。この勉強方法の利点は、すでに覚えている語に時間を奪われず、覚えていない語だけに集中できることです。勉強時間は有限ですから、効率よく学べるよう工夫しましょう。

旺文社リスニングアプリ「英語の友」は「単語モード」機能を使えば、『英検1級 でる順パス単』の見出し語の音声を聞きながらチェックを入れて、「覚えている」「覚えていない」をアプリ上で仕分けることができます!

単語の意味を、接頭辞や接尾辞、語根から推測できるだけの知識を身につけておくことも大事です。例えば credential の意味が思い出せなくても、cred が「信」の意であることを知っていれば、「信用を証明するもの→資格」とイメージできたり、「問題文の主旨に合わない」と選択肢から除外できたりします。また単語を暗記する際にも、「frag は壊れるという意味だから fragile は壊れやすい→はかない」と理論的に覚えた方が記憶に残りやすく、fragility(もろさ)とも関連づけられるなど、効率的に頭に入れられるでしょう。『英検1級 総合対策教本[改訂版]』には、このような接頭辞・接尾辞・語根についての解説を始め、語彙問題を解くために役立つ情報や効率的な勉強方法がまとめられています。

熟語

英検1級の熟語は、社会性の高い話題で使われるものが中心で、レベルの高いものです。大問1の25問中4問程度が熟語の問題で、「動詞+前置詞/副詞」の句動詞が主に出題されます。

大問1によくでる熟語を例に挙げると、crack down(厳しく取り締まる)、run up((借金など)を重ねる)、rub off on(~によい影響を与える)などです。

参考書

おすすめの参考書は、単語集『英検1級 でる順パス単』です。過去の英検問題を分析し、よく出題される重要熟語300語を掲載しています。黙々と暗記するのが苦手という方には、『英検1級 文で覚える単熟語[4訂版]』がおすすめです。文脈の中で単語・熟語が身につきます。

旺文社リスニングアプリ「英語の友」を使えば、『英検1級 でる順パス単』の音声をダウンロードすることができます。収録された見出し語のリストを見ながら発音を確認できるので、英検1級レベルの熟語を、効率的に耳で覚えられます。

勉強法

単語と同様、覚えていない熟語と出会うたびにひとつひとつ覚えていくのでは、必要な量を覚えきれないでしょう。ここでも単語集『英検1級 でる順パス単』を使った学習が効率的です。詳しくは、単語の項をご参照ください。

また熟語を覚える際には、以下のやり方がおすすめです。
①熟語を構成する単語の、それぞれの語義・ニュアンスをチェックする。
②それらの語義・ニュアンスを結びつけ、イメージを膨らませて意味を想像する。
③熟語としての意味と関連づける。
④例文を読み、記憶にインプットする。

(例)nose around(~を捜し回る)の場合
①nose(鼻;くんくんにおいをかぐ)と around(あちこちに)の意味をチェックする。
②nose と around のイメージを結びつける。
③nose around で「辺りをかぎ回る、捜し回る」と関連づける。
④例文(He hated it when his boss started nosing around his desk.)を読み、記憶にインプットする。

この、単語の語義から熟語の意味を想像する方法は、大問1の選択肢を絞り込むときだけでなく、読解で知らない熟語があったときにも役立ちます。

長文読解

英検1級の長文読解では、歴史・文化から時事問題、テクノロジーまで多岐にわたるテーマの論説文を読んで、理解することができるレベルが求められます。傾向としては、新聞や雑誌で取り上げられるような題材や、欧米の歴史・政治にかかわる内容が多くなっています。

長文読解は、一次試験・筆記の大問2と3で出題されます。大問2では、約350語の長文2つに、空所が3カ所ずつ(計6カ所)あります。それぞれの空所にあてはまる語句を4つの選択肢から選びます。約15分で解きたいところです。

大問3では長文が3つあります。最初の2つは約500語のパッセージで、設問はそれぞれ3問です。3つめのパッセージは約800語で、設問は4問です。問われるのは主に長文の細部の内容ですが、全体の主旨・結論を問う出題もあります。全部で1800語程度、計10問を、できれば40分ほどで解きたいところです。

参考書

長文読解を基礎から学びたい方には『英検1級 総合対策教本[改訂版]』がおすすめです。長文の構成や、必要な情報のみの読み取り方など、短時間で正確に文脈を把握する方法を指導しています。数をこなして読解力をつけたい方には、120問解いて実力を練成する『英検分野別ターゲット 英検1級 リーディング問題[改訂版]』がおすすめです。

勉強法

英検1級の長文読解では、アカデミックな文章や専門用語が使われた記事など、高度な英文が出題されます。背景知識があると解きやすくなるので、欧米の歴史・文化、政治などについての知識を身につけるよう心がけましょう。時事的な話題も多いので、新聞やニュースに触れることも大事です。

英検1級レベルの長文読解で必要なのは、メリハリをつけて読むスキルです。量のある文章を時間内に読んで正答するには、設問にかかわる箇所は精読し、そうでない箇所はさらっと読むという「読みの使い分け」が要るからです。そのような読み方はどうすればできるようになるのか? おすすめの方法は問題集で数をこなすことです。目標解答時間があるので緊張感を持って取り組むことができ、Questionを多く解いているうちに長文の「どの辺りが重要なのか」がつかめるようになってきます。おすすめの問題集は、『英検1級 総合対策教本[改訂版]』『英検分野別ターゲット 英検1級 リーディング問題[改訂版]』です。『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』『英検1級 予想問題ドリル[5訂版]』も、長文の収録数が多いので役に立ちます。

わからない単語があったとしても、パラグラフごとに大意をつかんで全体の論理展開を追えるよう、つなぎ言葉から論旨を理解する訓練を積みましょう。難解に見える語句も、文中に繰り返し現れる言い換え表現に注目すれば、意味を類推できたりするものです。このように辞書なしで一度読んでから、辞書を引いたり解説を読んだりして精読しましょう。最後にもう一度全文を、できれば時間を限って読み、英文の構造を再確認します。このような練習の積み重ねによって、英検1級合格に必要な読解力が身につくでしょう。

英作文(ライティング)

英検1級の英作文(ライティング)では、社会性の高い幅広い話題について、まとまりのある文章を書くことができるレベルが求められます。

英作文は、一次試験・筆記の大問4として出題されます。トピックは「発展途上国にとって経済発展は環境保護より優先されるべきか」など、賛否両論があるグローバルな社会問題です。

  • 指定されたトピックについてエッセイを書く。
  • 自分の意見の根拠となる理由を3つ挙げる。
  • 序論・本論・結論の構成で書く。
  • 語数の目安は200~240語。

が要件です。

参考書

英作文を基礎から学びたい方には、エッセイの基本構造から学べる『英検1級 総合対策教本[改訂版]』がおすすめです。ライティング力をしっかりつけたい方には、2016年度以降の英検1級リニューアルに対応しており、オリジナル問題が13問収録されている『英検1級 英作文問題[改訂版]』がおすすめです。

勉強法

英検1級の英作文問題は、二次試験の面接と異なり、自分の答えやすいトピックを選ぶことができません。したがってどんなトピックが出題されても、「この問題に対する自分の意見は~だ。理由は~、~、そして~だからだ」と、即座に答えられるだけの知識と思考力が求められます。日頃からニュースや新聞に触れ、幅広い社会常識を身につけておきましょう。また、ニュースでコメンテーターが意見を述べたときなどに、「自分も賛成だ、なぜなら…」と理由をいくつか挙げてみたあとにすぐ、今度は反対の立場から理由を考えてみるなど、賛否双方の立場から考える頭の体操をしておくとよいでしょう。

英検1級のライティングでは、論理的にまとまったエッセイを書けないと、高得点は望めません。最初のうちはいきなり書き始めるのではなく、日本語でもよいので、まずは論理展開の骨子となるキーワードだけを書き出してみましょう。目標時間は2、3分です。
例えば「発展途上国にとって経済発展は環境保護より優先されるべきか」というトピックであれば、
①[序論]自分の意見。(環境優先/environmental protection)
②[本論]その意見の根拠3つ。(環境汚染、生態系破壊、食料供給→危うい/pollution, destruction of ecosystems, threat to food supply)
③[結論]全体のまとめ。(環境を優先すべき/prioritize the environment)
となります。

それから、この構成で書けるかどうか検討します。具体的には、上記①~③のキーワードを以下の
①自分の意見を述べる。(第1パラグラフ)
②その意見の根拠を3つ展開する。(第2~第4パラグラフ)
③第1~第4パラグラフを別の表現でまとめて締めくくる。(第5パラグラフ)
という5段落にあてはめてみて、論理展開に無理がないか検討するのです。4、5分でできるとよいでしょう。

そのあとは15~20分ほどの目標時間で、実際にエッセイを英語で書いてみましょう。途中で別の観点が頭をよぎって意見がぐらつくこともあるかもしれませんが、この段階で大きく意見を変えようとするとまとまりのないエッセイとなる恐れがあるので、迷わず書き上げることが大事です。それから全体を見直してみて、スペルミスや文法の誤りがないか確認しましょう。近年はパソコンに頼って書くことが多くなり、いざ手書きするとスペルを間違えたり思い出せなかったりするので、手で書く練習も忘れないようにしましょう。

英検1級では、英語の表現の質も大事! 簡単すぎる単語は言い換えましょう。

 

例:

  • get → obtain, acquire
  • say → state, maintain, claim
  • important → essential, significant
  • good → effective, adequate

1つのエッセイの中で、同じ言い回しを多用するのもNGです。類語辞典あるいは類語情報の豊富な英英辞典で語彙力をつけ、多彩な表現ができるようになっておきましょう!

英検1級の英作文(ライティング)について、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級ライティングの問題と解答のコツ・ノウハウ」をご覧ください。

リスニング

英検1級のリスニングでは、社会性の高い幅広い内容を聞いて理解できるレベルが求められます。

リスニングテストには、Part 1、Part 2、Part 3、Part 4があり、放送回数はすべて1回です。

Part 1では、日常の様々な場面における男女の会話が読み上げられます。日常会話であっても話題は仕事や家計、税金、景気などで、内容も重要な情報交換だったり複雑な状況での頼みごとだったりと高度です。ビジネス上の会話も多く、ネゴシエーションも見られます。話者の間柄は家族や友人、同僚、企業と顧客などです。

Part 2では、200語前後の説明文が読み上げられます。文章のジャンルは医療・心理、時事・社会、動物・自然、海外・文化、テクノロジー、経済・ビジネスなど多岐にわたります。

Part 3では、アナウンスや音声ガイダンスなど実生活で耳にする英文が読みあげられます。直接話しかけられる諸連絡・説明が多数を占めますが、電話のメッセージも出題されます。臨場感のある効果音が入っていることもあります。

Part 4では、3分ほどのインタビューの模様が放送されます。ゲストは本の著者や様々な会社の社員など多岐にわたります。その仕事についた理由や仕事のよい点と悪い点、仕事柄注意していることなどをインタビュアーが聞き、ゲストが答える形式になっています。

実際に音声を聞いてみて、英語が読み上げられるスピードを確認しましょう。

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より)

参考書

英検1級のリスニングの出題パターンを知り、それに即応したノウハウを身につけたい方には、『英検1級 総合対策教本[改訂版]』がおすすめです。問題の数をこなして高得点を狙いたい方には、『英検分野別ターゲット 英検1級 リスニング問題[改訂版]』が役立つでしょう。『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』も、過去問6回分のリスニング問題をすべて収めています。

勉強法

英検対策用のリスニング素材を使った演習が絶対的におすすめです。英検1級のリスニングでは膨大な英文が放送されます。特に、Part 4では約3分(500~600語程度)の放送中に、あとで何を質問されても答えられるようなレベルのメモをとるスキルが必要です。したがって、たとえリスニングに自信のある人であっても、ぶっつけ本番で漏らさず正答するのは難しいでしょう。点を確実に取るためには演習を重ね、解き方に習熟しておきましょう。

なんとなく聞き取れるのだけれど、試験になると点数がいまひとつ伸びない―そういう方は、細部の聞き取りができていない恐れがあります。試しに次のようなリスニングをしてみましょう。キーワードをメモしながら聞いて、聞き終わったらそのキーワード群を使って、内容を再構成してみるのです。話の内容は「なんとなく」わかったけれど、主題(Main idea)を明示できない、支持文(Supporting details)が何と何だったか挙げられない…そんな事態になってはいませんか? つなぎ言葉は聞き取れたけれども、それによって対比されていたものが何と何かは、メモできていなかったりしませんか? そのような場合は一度スクリプトを読み、内容の構造を理解した上で、再度リスニングにトライしましょう。メモしたキーワードを筋道立てて再構成し、話の内容を頭の中で復元できてこそ、「リスニングができた」と言えるのです。

ダラダラ聞きでは、英検1級レベルはツライ! 演習の際は本番のつもりで、緊張感を持って臨みましょう。集中力を高める訓練も受験勉強のうちです!

英検1級のリスニングについて、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級リスニングの問題と解答のコツ」をご覧ください。

スピーキング(二次試験・面接)

英検1級のスピーキングでは、社会性の高い幅広い話題について、自分の意見を論理的にプレゼンテーションし、さらに質疑応答できるレベルが求められます。

スピーキングテストは、二次試験において面接形式で行われます。
まず、トピックが5つ書かれたトピックカードを受け取ります。その中の1つのトピックについて2分間でスピーチをします。それから、そのスピーチについて質問がされます。
過去の出題例は、科学の発展は常に有益か、芸術への財政的支援増加の是非、世界経済における日本の役割、選挙権の行使を義務化するべきか、遺伝子組み換え食品の安全性、公共の場における治安改善の必要性などです。

参考書

面接の流れをあらかじめ知っておけば、不安も解消! 11セットの予想問題に加え、面接をリアルに体験できる動画の付いた『14日でできる! 英検1級 二次試験・面接 完全予想問題[改訂版]』がおすすめです。予想問題11回分をこなしているうちに、出題パターンとスピーチのコツがつかめてくるでしょう。

勉強法

英検1級のスピーキングでは、首尾一貫した英語スピーチを1分間で準備し、2分にわたって話し続ける力が求められます。語数にして150語程度を目標にしましょう。まず必要なのは、自分の主張とその根拠を短時間で整理し、論理的に話す能力です。最初は日本語でも構わないので、社会問題について実際にプレゼンテーションしてみましょう。その際、できれば人に聞いてもらい、主旨が伝わったか、声や話し方は聞き取りやすかったか、講評してもらうのです。適当な人がいない場合は、音声を録音したり動画を撮ったりして、あとで自分で客観的に確認しましょう。

次に必要なのは発話慣れです。英語は話さないと発話力がどんどん落ちてくるので、問題演習をする余裕がない日はせめて音読などをして、口を英語に慣らしておきましょう。ネイティブスピーカーの友人・同僚と英語で話す機会を設けたり、英会話学校・オンライン英会話に参加したりするなどして、スピーキング力の維持・底上げを図る努力も大事です。

英検1級の面接では、グローバルな社会問題・時事問題について、意見とその理由を述べなければなりません。提示された5つのトピックの中に、よく知っているジャンルや考えてみたことのあるトピックがあれば、大きな強みになります。日頃からニュースや新聞に目を通し、社会・時事問題についての知識を蓄えるようにしましょう。知識だけでなく問題意識も持ち、何事に対しても「自分は賛成か反対か、その理由は」と考える習慣をつけておけば、本番で話すことがなくて困ったり、意見がまとまらずしどろもどろになったり、という事態を防げるでしょう。

英検1級の二次試験・面接について、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級面接の問題と流れ・合格のコツ・使えるフレーズ」をご覧ください。

過去問・予想問題

実際に試験を受けてみたら、時間が飛ぶように過ぎてしまい、最後の問題までたどり着かなかった―そんな経験をしたことはありませんか? ほんの少し答えを悩んだつもりでも、驚くほど時間が経ってしまっていることがあります。試験当日、こんな失敗をしないためには、普段から実際の試験と同じ分量の問題を時間内に解くトレーニングをしておくことが大事です。過去問や予想問題はこのトレーニングに最適な素材です。

参考書

英検1級は、2016年度第1回から英作文問題の出題形式が変わりました。『2023年度版 英検1級 過去6回全問題集』では、新しくなった英作文問題の過去問5回分に加え、予想問題1問を解くことができます。一次試験直前の総仕上げには、筆記・リスニング合わせて5セット分の予想問題を収録した『英検1級 予想問題ドリル[5訂版]』がおすすめです。

勉強法

過去問や予想問題を解くときには、下記の「試験当日の試験対策/一次試験」の問題ごとの時間配分を参考に、各大問にどれくらいの時間をかけるか、決めておきましょう。大問がひとつ終わるごとに時計を見て、時間どおりに進められているか確認しながら解き進めることが大事です。わからない問題に時間を割きすぎては、時間内に解き終わることはできません。マーク式の部分であれば、あとで時間が余ったら見直せるように問題冊子に印をつけた上で、マークシートには勘で答えを記入してしまいましょう。このように本番の試験と同じ気持ちで、過去問・予想問題に取り組むことが大事です。

答え合わせが終わったら、大問ごとに正解率が何パーセントであったのか、算出しましょう。合否判定はCSEスコアで行われるため、何問正解したら合格なのかははっきりしませんが、およその合格ラインは7割程度と予測されます。もし正解率が7割を切る大問があったら、それは苦手な大問ですから、入念に復習しましょう。『英検1級 総合対策教本[改訂版]』で苦手な大問の解説を読み、基礎知識をしっかりと固めるのもよいでしょう。

試験当日の試験対策

試験会場に自動車やバイクで行くことは禁止されています。必ず、電車やバスなどの公共交通機関を利用して会場に向かってください。会場には早めに着き、トイレも済ませ、愛用の参考書で最終確認をしながらリラックスして試験開始を待ちましょう。

一次試験(筆記・リスニング)

一次試験は、筆記試験、リスニングテストの順で行われます。筆記試験開始前に、リスニングテストの音量チェックが行われます。リスニングテストの直前には音量チェックは行われませんので、音量が小さいなど聞こえづらい場合は、必ずこのタイミングで試験監督者に申し出るようにしましょう。

筆記試験は100分です。大問ごとの目標解答時間は下記のとおりです。

問題番号 問題形式 詳細 設問数 目標解答時間*
1 短文の語句
空所補充
文脈に合う適切な語句を補う。 25 15分
2 長文の語句
空所補充
パッセージの空所に文脈に合う適切な語句を補う。 6 15分
3 長文の内容
一致選択
パッセージの内容に関する質問に答える。 10 40分
4 英作文 指定されたトピックについての英作文を書く。 1 25分

* 見直しのために5分余るように設定しています。

時折、時計を見て、進み具合を確認しましょう。試験には腕時計の携帯が許可されています(ただし、Apple Watchなどのウェアラブル端末の携帯は禁止されています)。

筆記 大問1:短文の語句空所補充

文中の空所に、文脈に合う適切な語句を4つの選択肢から選んで入れ、文章を完成させる問題です。25問のうち、20問程度が文章形式、5問程度が会話形式となっています。単語の知識を問う問題が大半で、最後の4問程度は熟語についての出題です。

例題:
Choose the best word or phrase from among the four choices for the blank.

An agreement between the two leading parties appears (        ). The negotiators are working late into the night to bridge the few remaining differences.

1 contingent 2 contagious 3 imminent 4 derisive

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より)

答え:3

合格ラインの目安は、25問中18問正解です。知らない単語は接頭辞や接尾辞、語根から、熟語は動詞や前置詞、副詞から意味を推測できることがあります。しかし、大問1は悩んでも答えがひらめくことはあまりないので、わからない問題は早々に見切りをつけて、長文読解や英作文に十分な時間を取るのが得策です。

大問1に限りませんが、わからない問題でも解答欄には答えをどれか記入しておきましょう。「英作文まで終わったら、大問1に戻ってマークしよう」と思っていても、実際には時間切れでマークができないこともありますから、ご注意を。

筆記 大問2:長文の語句空所補充

350語程度の長文2つにそれぞれ空所が3カ所ずつ(計6カ所)あり、空所に入る適切な語句を4つの選択肢から選んで文章を完成させる問題です。

例題:
Read the passage and choose the best answer from among the four choices for the blank.

The Mystery of Shakespeare

In spite of his fame and peerless celebration, William Shakespeare remains somewhat of a mystery with regard to his personality. Although some official documents surviving from Elizabethan times provide a skeletal history of the Bard, there is very little information available that attests to what kind of person he really was. One would expect Shakespeare’s voluminous literary output to shed substantial light on the man himself. However, scholars have long alleged that his works and other records of the time (        ) to do so.(以下略)

1 stimulate efforts
2 provide the keys
3 raise vital issues
4 elude attempts

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より抜粋)

答え:4

合格ラインの目安は、6問中5問正解です。まず速読して論旨の展開を理解し、それから空所の前後を丁寧に読んで解答を選びましょう。大問2では文脈を追うことが正解につながるので、つなぎ言葉(however, consequentlyなど)に特に注意しましょう。

筆記 大問3:長文の内容一致選択

大問3では、パッセージが3つ出題されます。最初の2つは500語程度の英文で、設問数はそれぞれ3問です。3つめの英文は800語程度で設問数は4問です。原因や根拠、理由などを問う問題が多く、全体の主旨・結論を問う出題もあります。

例題:
Read the passage and choose the best answer from among the four choices for the question.

Heinrich Schliemann

Although most people may not know the name Heinrich Schliemann, few have not heard of the ancient city of Troy that he is credited with discovering. His story as a self-educated man from a poor family who went on to amass a large fortune in business before becoming the patriarch of modern archaeology is one that both inspires and mystifies. Although Schliemann claimed his interest in archaeology dated back to his early childhood—he is alleged to have had at the age of 12 a premonitory vision of finding Troy—some historians suggest his ambitions to unveil what at that time in the early nineteenth century was considered a largely mythical city began with his study of Classical Greek later in his life. Reading Homer, the pinnacle of Greek literature, no doubt would have sparked his curiosity about whether or not the Trojan War actually occurred.(以下略)

What is one way in which the views of some historians differ from Heinrich Schliemann’s own recollection?
1 They argue that Schliemann’s obsessive desire to discover Troy stemmed from his interest in Greek literature.
2 They believe that Schliemann’s early childhood experiences meant he was destined to discover a mythical city.
3 They think that Schliemann’s success as trader was due to the connections he gained while working as an archaeologist in Greece.
4 They say that Schliemann would have located Troy much earlier had he not been forced to give up his linguistics education when he did.

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より抜粋)

答え:1

合格ラインの目安は、10問中7問正解です。大問3の長文は量が多いので、最初に設問を読んで問われるポイントを理解し、その上で速読するとよいでしょう。設問にかかわる箇所にさしかかったら、その周辺を入念に読みます。また、複数の意見・理論を対比して論じる文章が多いので、つなぎ言葉に注意すると、それらの意見・理論を混乱せずに読み解けます。正答肢は本文の内容をまとめたり、別の表現で言い換えたりしていることが多くなっています。

筆記 大問4:英作文(ライティング)

指定されたトピックについて200~240語程度の英文エッセイを書きます。自分の意見と、そう考える理由3つを明示し、序論・本論・結論の構成で書く必要があります。

例題:
● Write an essay on the given TOPIC.
● Give THREE reasons to support your answer.
● Structure: introduction, main body, and conclusion
● Suggested length: 200-240 words

TOPIC
Should elderly parents be cared for at home?

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より)

英作文は、下記の4つの観点から採点されます。それぞれの観点に0~8点が配点されており、合計32点満点です。合格ラインは、23点程度だと思われます。

①内容 課題で求められている内容(意見とそれに沿った理由)が含まれているかどうか
②構成 自分の意見とその理由をわかりやすく示した構成になっているか
③語彙 適切な語彙を正しく使っているか
④文法 文法的に正しい英文になっているか

解答が要件を満たしていない場合や、理由が矛盾している場合は、文法的に正しい英文を書いたとしても0点や減点になる恐れがあるので、気をつけましょう。

語数の目安は200~240語と多く、語数を数えるのも大変です。解答欄に記入する際、1行あたり何語程度で書くか、何行程度書けば解答として十分な語数になるかなどを事前に確認しておくと、試験当日、語数のカウントに時間をとられずに済みます。

英検1級の英作文(ライティング)について、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級ライティングの問題と解答のコツ・ノウハウ」をご覧ください。

筆記試験が終わると、続けてリスニングテストが行われます。

問題番号 問題形式 詳細 設問数 放送回数
Part 1 会話の内容
一致選択
会話の内容に関する質問に答える。 10 1回
Part 2 文の内容一致選択 パッセージの内容に関する質問に答える。 10 1回
Part 3 Real-Life形式の内容
一致選択
Real-Life 形式の放送内容に関する質問に答える。 5 1回
Part 4 インタビューの内容
一致選択
インタビューの内容に関する質問に答える。 2 1回

解答時間は、設問ごとに10秒間です。

リスニング Part 1:会話の内容一致選択

設問数は10問です。No. 1~No. 9では男女2人の会話が、No. 10では3人の会話が放送されます。質問は会話のあとに放送され、問題冊子に印刷された選択肢4つの中から答えを選びます。会話と質問は1度しか放送されません。

例題:
Listen to the dialogue and choose the best answer from among the four choices.

(問題冊子に記載される選択肢)
1 Ted will make a purchase.
2 Ted will withdraw money from an ATM.
3 Janice will pay Ted’s debt for him.
4 Janice will pay back Ted some money.

(放送文)
A: Say, Janice, I’ve been looking for you. Remember that 50 dollars I lent you the other day? I need it back to pay a few bills, like garbage and a few utilities.
B: That’s right, Ted. But remember, I already paid you back 20 last week.
A: Oh, you’re right. So you just owe me 30, then.
B: If you have a few minutes now, we can stop at the automatic teller down the street and I’ll get it for you.
A: That would be great, Janice. I hate to bother you about it now but I’m completely broke myself this week.

Question: What will most likely happen next?

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より)

答え:4

合格ラインの目安は、10問中7問正解です。あらかじめ選択肢に目を通し、内容を予測しておくといいでしょう。選択肢にある人名などの固有名詞は、必ず会話に出てくるので、意識しておくと内容がつかみやすくなります。

リスニング Part 2:文の内容一致選択

放送される英文と質問を聞き、その答えを、印刷されている4つの選択肢から選ぶ問題です。約200語の説明文5つに対して2問ずつ、計10問出題されます。英文と質問は1度しか放送されません。

例題:
Listen to the passage and choose the best answer from among the four choices.

(問題冊子に記載される選択肢)
1 As an interior designer of sounds.
2 As a lover and creator of music.
3 As a business person who understands other business persons.
4 As an inventor of business identities.

(放送文)

The Power of Sound

Sounds, including music, can alter emotions and behavior. Julian Treasure, a former drummer for punk bands in the 1970s and 80s, knows the power of sound well. Today, Treasure is the head of Sound Agency, a consultancy that helps businesses profit from tailoring sounds to please customers. Treasure sees himself as an audio interior designer, who removes unpleasant sounds and music and replaces them with more appealing sounds. Sometimes, the sounds are used to boost a business’ identity or capture the essence of a particular brand.(以下略)

Question: How does consultant Julian Treasure basically perceive himself?

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より抜粋)

答え:1

合格ラインの目安は、10問中7問正解です。最初に読まれるタイトルは、内容の予測に役立ちます。難しい専門用語がでてきても、そのあとで説明されたり、言い換え表現が繰り返し現れたりするので、あきらめずに聞き続けるようにしましょう。パッセージの前半から1問、後半から1問出題されるパターンが多くなっています。

リスニング Part 3:Real-Life形式の内容一致選択

問題冊子に印刷された「状況」「質問」「選択肢」を10秒で読んだ後、実生活を想定した音声を聞きます。そして、質問に対する解答を4つの選択肢から選びます。設問数は5問です。英文と質問は1度しか放送されません。

例題:
Read the situation and question. Listen to the passage and choose the best answer from among the four choices.

(問題冊子に記載される内容)
Situation: You have just moved into a dormitory at the university. You hear a phone message explaining how to use voicemail.
Question: What is one step you need to do to create your main mailbox?

1 Press 9.
2 Enter a passcode.
3 Enter your name.
4 Press 0.

(放送文)
You have 10 seconds to read the situation and question.
Welcome to University Voice Mail! To create your main mailbox, press the sharp key, enter your student identification number, press the sharp key again, enter a secret six-digit passcode, and press the sharp key a third time. Your information will be repeated back for your confirmation. Confirm by pressing 1, or revise by pressing 2. After creating your main mailbox, you can add up to four sub-mailboxes at any time so callers can leave messages for particular individuals. Mailbox owners can create sub-mailboxes now by pressing zero. To repeat these instructions, press 9.
Now mark your answer on your answer sheet.

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より)

答え:2

合格ラインの目安は、5問中4問正解です。「状況」の主語が You で、「質問」は「あなたはこれから何をするべきか」というものがほとんどです。放送前の10秒で、「状況」「質問」「選択肢」をしっかり読み取り、放送中は不要な情報をふるい落としながら、必要な情報を抽出するようにしましょう。自分がその「状況」に置かれている、と想像しながら聞くと集中できます。

リスニング Part 4:インタビューの内容一致選択

3分500~600語程度のインタビューが放送され、そのあと、質問が2問読み上げられます。答えは印刷されている選択肢から選びます。英文と質問は1度しか放送されません。

例題:
Listen to the interview and choose the best answer from among the four choices.

(問題冊子に記載される選択肢)
1 He read about Central Asia in National Geographic when he was a boy.
2 He had read some interesting books on Mongolia before planning the trip.
3 He had heard that Central Asian people were friendly and generous.
4 He wanted to film a documentary of the trip for several television networks.

(放送文)
I (Interviewer): Today we have with us a very distinguished travel writer and lecturer, Mr. Kenneth Stevenson. Welcome to the program.
K (Kenneth Stevenson): I’m glad to have the chance to talk with you and your audience.
I: To start with, could you give us a little background information about your career as a world traveler and writer?
K: Well, um . . . since I was very small, I’ve wanted to see new places and experience different cultures. I think I first became attracted to travel from looking at copies of National Geographic my parents had subscribed to for years.
I: And the writing?
K: Well, it just came naturally, and it was a perfect way to support my travels. I always liked to read travel magazines and travel books, even before I had ever left my home country.
I: Could you give us some idea of one of those early books you read that . . . uh . . . really impressed you?
K: Sure, um . . . one book I always remember is a book titled The Royal Road to Romance, written by Richard Haliburton. It’s a classic of travel writing.
I: You’ve just finished a book about hiking through Central Asia. Could you comment on that trip and on writing the book?
K: Yes, well, one of my hobbies is reading historical novels and straight history. I’d read some fascinating books on Mongolia several months before the trip and that persuaded me to go. It was a wonderful experience and the Mongolian people were so friendly and . . . and generous. It’s a vast country with an ancient, proud culture.
I: Well, it certainly looks to be a wonderful, wonderful book. My best wishes for its success.(以下略)

Question: Why did Mr. Stevenson decide to travel through Central Asia for his latest book?

(『英検1級 予想問題ドリル[新試験対応版]』より抜粋)

答え:2

合格ラインの目安は、2問中2問正解です。インタビュー冒頭で行われるゲストの紹介は、内容の予測に役立つので注意して聞きましょう。質問がわかるのはインタビューのあとなので、インタビューの放送中は、できるだけ細かくメモをとることが大事です。

英検1級のリスニングについて、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級リスニングの問題と解答のコツ」をご覧ください。

二次試験(面接)

二次試験の会場は、一次試験の会場とは異なりますので、二次試験受験票をよく確認しておきましょう。会場では、受付を済ませたら、控え室で待機します。長く待たされる場合もありますので、なるべくリラックスして過ごすようにしましょう。順番が近づくと、面接室の近くの席に案内されます。試験後は控え室に戻ることはできませんので、荷物はすべて持って移動しましょう。係員に入室するよう指示されたら、面接室のドアをノックして入室します。

問題形式 詳細
自由会話 面接委員と簡単な日常会話を行う。
スピーチ 与えられた5つのトピックの中から1つ選び、スピーチを行う。
(2分間)
Q&A スピーチの内容やトピックに関連した質問に答える。

英検準1級までの面接試験にはアティチュード(態度)という採点項目があり、積極的にコミュニケーションしようとする姿が評価の対象になっています。英検1級ではアティチュードは評価ポイントとされていませんが、評価に影響がないとは言い切れません。面接委員の指示に適切に従い、聞き取りやすい明瞭な声で、積極的に答える姿勢を心がけましょう。

自由会話

2名の面接委員と、簡単な日常会話をします。氏名確認の延長上で、「今日はここまで何で来ましたか?」「お仕事は?」など、カジュアルなやりとりが行われます。自由会話はウォームアップで、採点には含まれません。ですから考え過ぎず、気楽に応答し、舌と心をほぐすようにしましょう。

スピーチ

トピック5つが書かれたトピックカードを渡されます。考慮時間1分間の間に、1つのトピックを選び、スピーチを構想します(メモを取ることはできません)。それから2分間でスピーチを行います。

例題:
(トピックカード)
1. Should the Internet be censored?
2. Is adopting orphans from other countries a good thing?
3. How can Japan best provide assistance to less developed countries?
4. Agree or disagree: It is too late to prevent climate change
5. Can Japan’s rural communities be revitalized?

『14日でできる! 英検1級 二次試験・面接 完全予想問題[改訂版]』より)

トピック5つを素早く見比べ、自分にとってスピーチしやすいものを選びましょう。その分野についての知識があり、根拠や理由を挙げやすいトピックが最適です。それから自分の立場を定め、①自分の主張、②その根拠や理由を2つか3つ、考えます。スピーチの内容のほか、語彙、文法、発音も評価ポイントです。正確な文法、話題に適した語彙、明瞭な発音を心がけましょう。

Q&A

2名の面接委員は、1名がネイティブスピーカー、1名が日本人です。それぞれの面接委員から、スピーチの内容やトピックに関連した質問がなされるので応答します。

例題:
(トピック“Should the Internet be censored?”に対して)
Has the Internet affected people in negative ways?

『14日でできる! 英検1級 二次試験・面接 完全予想問題[改訂版]』より)

「質問に応答し、会話が続けられる」スキルは、英検1級の面接で重要なポイントです。Yes / No だけをぽつんと答えるのではなく、そう考える根拠や理由を続けて、自分の主張を説明する英語力があることをアピールしましょう。あくまでも試験なので、Yeah や I got you. など、くだけすぎた表現は避け、Yes や I understand. など、場にふさわしい言葉づかいをすることが大事です。

英検1級の二次試験・面接について、さらに詳しく知りたい方は、「英検1級面接の問題と流れ・合格のコツ・使えるフレーズ」をご覧ください。

まとめ

英検1級の全貌が把握できたでしょうか? 英検は問題形式が決まっていますので、ひとつひとつの形式をよく把握しておけば、それぞれの正解率を上げることができます。合格ラインは7割程度。地道な対策が合格のカギです。合格を目指してがんばってください!