この記事では、英検1級の一次試験で出題されるライティング問題について詳しく解説しています。はじめに、どのような問題が出されるのか、ライティングの配点が合否にどの程度かかわるのか、どのような観点から採点されるのか、など試験の概要を述べています。次に、理想的な英文を書くためのコツや解答のノウハウ、役に立つ表現について解説しています。英文の質を上げるために確認すべき事項のチェックリストも載せています。最後に、作文力をつけるための学習方法や、参考書を使った対策を詳述しています。ぜひ参考にしてください。

※本記事は、2024年4月時点の情報に基づいています。受験の際は、英検ウェブサイトで最新情報をご確認ください。

目次

試験概要

以下では、英検1級で出題されるライティング問題の概要と問題例、その解答例を挙げています。どのような観点から採点されるのか、合格点はどの程度と予想されるのか、などについても述べています。

概要

英検1級のライティングは、一次試験・筆記の大問4と大問5に1問ずつ出題されます。英検1級の一次試験に合格するためには、この2問で一定以上の点数を取らなければいけません。というのも、英検の一次試験では、リーディングとライティング、リスニングの各技能にCSEスコアが850点ずつ割り当てられているからです。すなわちこの2問だけで、一次試験の3分の1のウェイトを占めるということになります。

※CSEスコアについては、「英検1級のレベルと合格までの勉強法、面接の対策:合格点・合格率」をご参照ください。

大問4は、英文要約問題です。300語程度のエッセイを読んで、90〜110語のサマリー(要約)を作成します。提示される文章は新聞記事や論文などに見られるようなアカデミックなエッセイで、3パラグラフ程度で構成されています。元の文章を写すのではなく、できるだけ自身の言葉で言い換える力が求められます。目標解答時間は約20分です。

大問5は意見論述問題です。内容は、与えられた TOPIC について、自分の意見とその理由を200~240語程度のエッセイ(英文)にまとめるというものです。与えられる TOPIC は英文10語程度で、解答者の意見を Yes か No かで問うタイプと、Agree か Disagree かを選ばせるタイプの、どちらかであることがほとんどです。多くは、「発展途上国にとって経済発展は環境保護よりも優先されるべきか」など、社会性が高く、賛否の分かれる話題です。自分の主張を支える理由を3つ挙げることと、序論、本論、結論という構成になっていることが要件です。目標解答時間は、約25分です。

英文要約問題の問題例

例題:
● Instructions: Read the article below and summarize it in your own words as far as possible in English.
● Suggested length: 90-110 words

 Following the Korean War in the 1950s, the number of American parents turning to international adoption began to grow rapidly. This trend began with an American couple named Henry and Bertha Holt, who founded the country’s first international adoption agency, Holt International, to bring South Korean orphans to the United States for adoption. At the time, it was believed to be in the children’s best interest to remove them from poverty and unstable living conditions in their home country, and during the second half of the twentieth century, the practice became extremely common in other developing countries, especially China and Guatemala. In recent years, however, the trend has reversed, even though demand for adopted children remains steady.
 One reason for the shift in attitudes is recent criticism involving adoptive parents forcing orphans to adapt to Western cultural norms. There are numerous reports of adopted children being harmed by being subjected to pressure to conform to foreign customs, religion, and diets, sometimes facing harsh discipline if they disobey. There have also been various abuse scandals. In the children’s home countries, there are worries about corruption and exploitation of children by domestic organizations that provide children for adoption. For instance, it was not unknown that some impoverished parents were bribed to give up their children, and organizations hungry to earn adoption fees sometimes put extreme pressure on birth parents to give up their children for adoption.
 In addition to concerns about children’s welfare, the perception that a nation is unable to care for its children can affect a country’s reputation on the global stage. International relations, therefore, have influenced the decision of various countries, including Guatemala and South Korea, to rethink their policies. Today, many nations that once permitted, and even encouraged, adoption of children by foreign couples have either banned it or imposed far stricter regulations on the process.

(『2024年度版 英検1級 過去6回全問題集』収録「旺文社オリジナル予想問題」)

英文要約問題の解答例

International adoption became common in the latter half of the 20th century, when Americans tried to save orphans from poverty and instability in developing nations by bringing them to the US. However, the number of adoptions has been declining. One reason is criticism that adoptive parents may put undue pressure on children to conform to Western customs, or even abuse them. Another factor behind the trend is that children’s home countries worry about corruption and the exploitation of children by domestic organizations, and there can also be embarrassment when countries send their children abroad because they cannot care for them. As a result, many are banning or restricting international adoptions. (112 words)

(『2024年度版 英検1級 過去6回全問題集』収録「旺文社オリジナル予想問題」)

意見論述問題の問題例

● Write an essay on the given TOPIC.
● Give THREE reasons to support your answer.
● Structure: introduction, main body, and conclusion
● Suggested length: 200–240 words

TOPIC
Does the Japanese government have much control over the economy?

(旺文社作成予想問題)

意見論述問題の解答例

 Though Japan operates under a free market economy, in which private spending has the largest impact on the economy, the Japanese government does exercise considerable control. The government has numerous tools at its disposal to adjust the direction of the overall economy. I will highlight three of the most powerful of these.
 The Ministry of Finance influences the Bank of Japan (BOJ), which controls the availability of credit by adjusting interest rates. The BOJ lowers interest rates when the economy requires stimulation, and raises them when inflation needs to be suppressed. Access to cheap credit enables companies to purchase, invest and hire employees, all of which boost the economy.
 The Ministry of Finance also prepares the budget, including suggestions for setting tax rates and outlining government spending. Lowering tax rates and increasing government spending also stimulate the economy. The government willingly goes into debt during times of recession to provide a boost to the economy.
 Finally, the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) actively steers business activity in Japan, including production, trade and distribution of products. METI works closely with businesses to shape trade policies, predict future economic trends and identify growth industries for investment.
 All of these government measures are taken with the goal of maintaining steady growth and price stability while keeping unemployment at a minimum. We can see from recent events that the government is not always successful in its efforts, but it still maintains a powerful hold on the economy nonetheless. (246 words)

(旺文社作成)

採点の観点と配点

英検1級のライティングは、以下の4つの観点から採点されます。それぞれの観点に0~8点が配点されており、合計32点満点です。各技能をバランスよく得点して合格するには、24点以上を目標とするとよいでしょう。

①内容 課題で求められている内容が含まれているかどうか
②構成 英文の構成や流れがわかりやすく論理的であるか
③語彙 課題に相応しい語彙を正しく使えているか
④文法 文構造のバリエーションやそれらを正しく使えているか

第1の観点「内容」で最も大事なポイントは、与えられた課題に適切に応答しているかどうかです。課題とは異なる趣旨の英文を書くと、英語としては正しい文章を書いていても、0点になることもあります。ですから読み違えないよう、出題内容は慎重に読みましょう。指示された要件も満たさなければいけません。

次の観点は「構成」です。英文要約問題の場合は、提示された文章と同じ論理展開で書かれているかが審査されます。パラグラフ同士のつながり方を見極め、適切なディスコースマーカー(つなぎ語、論理マーカーとも言う)を使うことが大事です。意見論述問題の場合は、自分の意見とその理由を論理的に、序論、本論、結論という構成で書くことがポイントです。各パラグラフは、核となるトピック・センテンスと、それを支えるサポーティング・センテンスで構成されているのが理想的です。

3つめの観点「語彙」は、課題にふさわしい語彙を適切な語法で使えているかを見ます。同じ語句や表現を繰り返さずに、別の表現などで言い換えていることが評価されます。

最後の観点「文法」は、文法的に正しい文を書けているかです。文型やパンクチュエーションの観点からも評価されます。文構造のバリエーションも重要なので、同じ主語を連続して使うことは避け、無生物主語や受動態など多様な文型を駆使しましょう。

英文要約問題 解答のコツ

以下では、英検1級の英文要約問題で、理想的な英文を書くためのコツを挙げています。

全体と各パラグラフの主旨をしっかり読み取る

要約とは、文字数をひたすら減らして分量を圧縮することではありません。「筆者がこの文章/パラグラフを通じて言おうとしていることは、要するに何か」を、はっきり示すことです。

例えば、上に挙げた例題の第1パラグラフを見てみましょう。America の人々が前世紀後半に international adoption 活動を行った話が大半を占めます。文章全体の主旨を考えずに「このパラグラフを縮めなきゃ!」と思ってしまったら、Some American groups devoted themselves to internal adoption activity in the late twentieth century, based on the belief that it saved orphans in developing countries. などと書きたくなってしまうでしょう。しかし、続く段落を読んでみると、国際養子縁組の問題点や禁止の動きについて書かれています。したがって、第1パラグラフの最終文 the trend has reversed, even though demand for adopted children remains steady が重要だったことがわかります。

このように、目先の単語や文章に気を取られるのではなく、筆者の主張を意識しながら、各パラグラフを注意深く読むことが大事です。

自分の言葉で表す

英文要約問題の指示文には、summarize it in your own words as far as possible とあります。また実際、丸写ししたのでは明快な英文にならないよう、問題が工夫されています。例えば、例題第1パラグラフのキーセンテンスが the trend has reversed, even though demand for adopted children remains steady であるのを見てください。the trend が何なのかを具体的に書かなければ、初めて読む人には意味が通じません。要するに、別の言い回しに変換できる語彙やコロケーションの知識と、趣旨を把握して英語で明瞭に表現できる力とが求められているのです。
「どうやったら要約できるかわからない!」ということであれば、本文を利用して考えをまとめましょう。重要な文章を「それだけで意味が通じる英文」に言い換えていくのです。例えば例題の第1パラグラフを見てみましょう。このエッセイ全体の趣旨が「国際養子縁組は問題・事情があり減少している」であることを踏まえて読むと、第1パラグラフで要点は、Following the Korean War in the 1950s, the number of American parents turning to international adoption began to grow rapidly. と、In recent years, however, the trend has reversed, even though demand for adopted children remains steady. の2文だとわかります。ですからこの2文を、ダイレクトな表現に置き換えていけばよいのです。

in the 1950s はthe latter half of the twentieth century、前述の the trend は、the number of American parents turning to international adoption began to grow rapidly です。began to grow rapidly だったものが has reversed したということを、ズバリ言い換えるなら has been declining などとなるでしょう。また、この2文以外にも it was believed to be in the children’s best interest など重要な情報が散見されますから、それも織り込んでいくと情報量の多い要約に仕上がります。つまり、「遠回しな表現を端的なものに言い換えていく」ことで、文意を可視化できるのです。

英文要約問題 解答のノウハウ

何行めまで書くべきか把握する

英検で使用される解答用紙の見本は、英検ウェブサイトからダウンロードできます。指定の語数は90~110語なので、1行に8語書くとすると12~14行弱です。事前に実際に書いてみて、自分の書き方なら1行にだいたい何語入るか、したがって何行程度書く必要があるかを把握しておきましょう。

元の英文を手掛かりにする

おすすめは、元の英文の流れに沿ってサマライズ(要約)するやり方です。まずは全体をよく読み、作者が言いたいことを特定しましょう。それから、キーセンテンス同士/パラグラフ同士のつながり方を見極めます。例題の場合、第1段落で「国際養子縁組が最近は減少した」と主題が示され、第2段落ではその理由(子の福祉の観点からの問題)、第3段落では別の側面の理由(国レベルの事情・措置)が語られるという構造です。したがって、

  1. 各パラグラフのキーセンテンスを1、2文の明快な英文に言い換える。
  2. 元の英文の構造に合うディスコースマーカー(つなぎ語)を考える。
  3. 1.の文章を2.のディスコースマーカーで連結しつつ記入する。

ことで、適切なサマリーを作成できます。

解答欄に記入する前には、一度見直しをしましょう。あとの「英文要約問題解答のチェックリスト」を参考にしてください。ライティング問題は何よりも、書き上げることが肝要なので、このあとはもうあれこれ考えず、書ききってしまうことが大事です。

使える表現(ディスコースマーカー)

要約を作る際は、元の英文の構造どおりに文と文をつなぐ必要があります。以下は、それに役立つディスコースマーカー(つなぎ語)です。

順接・添加

  • therefore
  • in addition
  • additionally
  • besides

逆接

  • however
  • although
  • despite
  • yet

対比

  • on the other hand
  • while
  • whereas
  • meanwhile

結論

  • as a result
  • in conclusion
  • thus
  • ultimately
  • in the end

言い換えの要点

言い換えに当たっては、以下の点を念頭に置くとよいでしょう。

具体的な情報は抽象化・一般化する

列挙されている具体的な事物の名称は、それらの総称に当たる抽象的な語に言い換えましょう。例題の解答例では、adoptive parents forcing orphans to adapt to Western cultural norms が adoptive parents may put undue pressure on children to conform to Western custom と言い換えられ、There are numerous reports 以下は具体例なので省略されています。

英文要約問題 解答のチェックリスト

重要な情報だけを拾っているか

事物の名称が具体的に列挙されている場合、多くは例示です。削除するか、それらの総称に当たる抽象的な語に言い換えるかして、結論だけを書くようにしましょう。書き手は、印象を強める文章テクニックとして、同趣旨の内容を言い方を変えて繰り返すことがあります。そのような繰り返し要素も除去しましょう。

各パラグラフから要素を抽出できているか

アカデミックな文章に無用のパラグラフはありません。必ず全部のパラグラフの内容を1、2文ずつで作成しましょう。「この段落の内容は盛り込まなくてもいいのではないか…」と感じるようなら、全体の主旨を取り損ねている恐れがあります。もう一度、先入観なしで読んでみてください。

元の文と同じ論理構造になっているか

アカデミックな文章は、文章もパラグラフも論理的に組み立てられています。その構造を維持していなければ、サマリーにはなりません。それぞれのパラグラフの働きを見極め、因果関係などに気をつけて、元の英文と同じ論理構造を保ちましょう。

ディスコースマーカー(つなぎ語)を適切に使っているか

ディスコースマーカー(moreover や however など)を適切に使えていると、明快なサマリーに仕上がります。元の英文の構成を理解できているというアピールにもなります。反面、誤って使うと「論理構造を読み取れていない」と判断されてしまうので、うっかりミスをしていないか、再確認しましょう。

同じ言い回しがないか

「できるだけ言い換えること」が要件の問題です。パラフレーズしたことでスペルや文法のミスが出ることのないよう気を配る必要はありますが、本文中の単語・言い回しをそのまま使うことは避けましょう。

スペルミスや文法・語法のミスがないか

焦るとスペルミスをしがちです。書き上げたあと、もう一度チェックしましょう。時制が合っているか、単数/複数が適切か、冠詞の付け忘れがないか、も忘れずに。

英文要約問題 学習方法

パラフレーズ力を磨く

パラフレーズ力とは、つまるところ語彙力です。ただし、単語の意味をただ覚えただけではライティング試験には通用しません。語彙の知識を、読んだり聞いたりしたとき意味がわかる passive vocabulary のレベルから、言ったり書いたりできる active vocabulary に格上げしましょう。具体的な事物を見たら総称的・抽象的に言い換えてみる、単語を調べたらコロケーションの知識も併せて覚えるなどのトレーニングもおすすめです。

アカデミックな文書を読んで訓練する

英検1級の英文要約問題は、重要そうな箇所を拾ってつなげただけではハイスコアにはなりません。元のエッセイの構造を読み取って反映させる必要があります。したがって、学術系の英語記事などを実際に読み、構成を分析する経験を積むとよいでしょう。アカデミックな単語の知識をためることにも役立ちます。

コラム記事を実際に要約してみる

新聞や雑誌には、分量が一定の連載記事が多く載っています。その中から300語前後の英文を選んで、要約する練習を重ねるとよいでしょう。その記事を ChatGPT など AI に要約させて見比べるのも一案です。主旨のつかみ方や、短縮・言い換えのコツがつかめるでしょう。

人に読んでもらう

要約文とは、元の文章を読んでいない人にも、元の文の本旨が伝わる文章のことです。ですから自分の書いたサマリーを、元の記事を知らない人に読んでもらい、コメントをもらうとよい練習になります。その人にとって読みやすい文になっていたか、意味は伝わったか、誤解されていたりしないかなどを、質問して確認しましょう。

意見論述問題 解答のコツ

型に沿って書く

模範的な形式

英検1級の意見論述問題には、以下の要件があります。
● 自分の主張を支える理由を3つ挙げる
● 序論(introduction)、本論(main body)、結論(conclusion)という構成で書く
● 語数の目安は200~240語

これらの要件に加え、英語のパラグラフ・ライティングの形式に従っているとさらに評価が高くなるでしょう。英語のライティングでは、核となるトピック・センテンスと、それを支えるサポーティング・センテンスでパラグラフを構成することが理想的とされています。以上を踏まえるとおのずから決まってくる、英検1級のエッセイとして模範的な形式は、以下のとおりです。

序論 第1パラグラフ 意見を主張する。TOPIC の背景の解説や本論の前置きも入れる。(2~3文程度)
本論 第2パラグラフ 各パラグラフとも、冒頭に理由を明示したトピック・センテンス(1文)を置き、続いてその根拠を述べるサポーティング・センテンス(2~3文程度)を配置する。
第3パラグラフ
第4パラグラフ
結論 第5パラグラフ 「本論」の内容をまとめ、「序論」で述べた主張を、別の言い方で表現して締めくくる。(2~3文程度)

(文の数はあくまで目安です。1文が長かったり、つなぎ語で文を連結したりした場合は、この限りではありません。トータルで指定の語数になっていれば大丈夫です。)

この形式を、前項で挙げた「意見論述問題の解答例」に当てはめると、以下のようになります。各パラグラフの核となる部分には、下線を引いてあります。

序論 第1パラグラフ Though Japan operates under a free market economy, in which private spending has the largest impact on the economy, the Japanese government does exercise considerable control. The government has numerous tools at its disposal to adjust the direction of the overall economy. I will highlight three of the most powerful of these.
本論 第2パラグラフ The Ministry of Finance influences the Bank of Japan (BOJ), which controls the availability of credit by adjusting interest rates. The BOJ lowers interest rates when the economy requires stimulation, and raises them when inflation needs to be suppressed. Access to cheap credit enables companies to purchase, invest and hire employees, all of which boost the economy.
第3パラグラフ The Ministry of Finance also prepares the budget, including suggestions for setting tax rates and outlining government spending. Lowering tax rates and increasing government spending also stimulate the economy. The government willingly goes into debt during times of recession to provide a boost to the economy.
第4パラグラフ Finally, the Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) actively steers business activity in Japan, including production, trade and distribution of products. METI works closely with businesses to shape trade policies, predict future economic trends and identify growth industries for investment.
結論 第5パラグラフ All of these government measures are taken with the goal of maintaining steady growth and price stability while keeping unemployment at a minimum. We can see from recent events that the government is not always successful in its efforts, but it still maintains a powerful hold on the economy nonetheless.

このように、模範的なパターンに当てはめて自分の意見を展開すれば、問題文の指示に沿った、理想的な構成のエッセイを書くことができます。

書き方の手順を把握する

自分の主張と、それを支える3つの理由を手際よくまとめるコツは、以下のとおりです。
まず、キーワードを書き出してメモを作成しましょう。英語でも日本語でも構いません。自分の意見と、その根拠となる理由について、思いつくまま書いてみます。それから理由のそれぞれをチェックして、補強となる具体例や根拠を思いつくものを3つ選びます。

TOPIC: Does the Japanese government have much control over the economy?

メモ例
意見:Yes
理由1:財務省が日銀に影響(MOF influences BOJ.)
理由2:財務省が予算を編成(MOF prepares the budget.)
理由3:経産省が経済活動を操縦(METI steers business activity.)

ここまでを、2分ほどでこなせるとよいでしょう。
次に、この構成で書けるかどうか検討します。具体的には、前項「模範的な形式」の表に当てはめてみて、論理展開に無理がないか検討するのです。サポーティング・センテンスとして書く内容も、ここで決めましょう。具体例として客観的な事実を挙げると、知識の多さを示せます。自分の主張とは対照的な意見に軽く触れると、視野の広さをアピールできるでしょう。所要時間の目標は3、4分です。

序論 第1パラグラフ (対照的な意見)a free market economy
The Japanese government exercises considerable control.
本論 第2パラグラフ MOF influences BOJ.
BOJ controls interest rates.
Cheap credit for companies boosts the economy.
第3パラグラフ MOF prepares the budget.
Lowering tax rates and increasing government spending stimulate the economy.
The government goes into debt during recessions.
第4パラグラフ METI steers business activity.
shapes trade policies, predicts economic trends and identifies growth industries
結論 第5パラグラフ (本論のまとめ)maintaining steady growth and price stability
(対照的な意見)The government is not always successful.
(再主張)The government maintains a powerful hold.

次に、解答用紙に記入していきます。この段階で内容を変更しようとすると、矛盾したり散漫になったりしがちなので、迷わず一気に書き上げましょう。目標時間は17~18分です。
最後に、2分程度を使って見直しをしましょう。見直す事項は、あとの「意見論述問題 解答のチェックリスト」を参考にしてください。

表現しやすい理由を選ぶ

英検1級の意見論述問題は、語学の試験です。説得力や専門性があった方が好印象ではありますが、最優先事項は正しく論理的な英文で自分の主張を展開することです。ですから自分の意見を支える理由は、内容の高度さよりも書きやすさを基準に選びましょう。
例えば、「名目 GDP が過去最高の水準だと書いて知識をアピールしたい」と思ったとしましょう。しかし、「名目 GDP」や「過去最高の水準」を英語で即座に表現できなかったら、別の理由に切り替えるべきです。英検1級の一次試験は時間との戦いになります。言いたいことを表現できるのが理想ですが、無理な場合は固執せず、英語にしやすい理由を採用しましょう。

意見論述問題 解答のノウハウ

何行めまで書くべきか把握する

英検で使用される解答用紙の見本は、英検ウェブサイトからダウンロードできます。解答欄は28行あり、指定の語数は200~240語です。1行に8語書くとすると200語に達するのは25行めですから、解答欄をほとんど埋めるほど書く必要があります。事前に実際に書いてみて、自分の書き方なら1行にだいたい何語入るか、従って何行程度書く必要があるかを把握しておきましょう。語数カウントの時間の節約にもなります。
また、前項の「書き方の手順」のように、メモを作成してから記入すれば、自分が今、どのあたりを書いているのかわかります。ですから解答欄のスペースを目分量で測りながら書き進め、過不足があるようなら調整しましょう。
語数が足りなくなりそうだ、と感じた場合におすすめなのは、自分の主張とは対照的な意見を挙げ、それを打ち消すことです。例えば「意見論述問題の解答例」の場合、第4パラグラフの文章、
METI works closely with businesses to shape trade policies, predict future economic trends and identify growth industries for investment.
の前に、
Some people might say that METI is not as influential as it may seem, but
を入れて微調整を加え、
Some people might say that METI is not as influential as it may seem, but it works closely with businesses to shape trade policies, predict future economic trends and identify growth industries for investment.
とするのです。すると1文追加できるだけでなく、異論を踏まえた上での主張だということで、説得力も増し一石二鳥です。
逆に語数が超過しそうだ、と感じた場合は、内容の重複や修飾表現の過多など、冗長な部分を探し、削除しましょう。それでも語数が減らない場合は、サポーティング・センテンスの一部や、引き合いに出すつもりだった異論を省略しましょう。「意見論述問題の解答例」を例にとると、第5パラグラフの文章、
All of these government measures are taken with the goal of maintaining steady growth and price stability while keeping unemployment at a minimum.
の一部である、
while keeping unemployment at a minimum
をカットすれば、文を短縮することができます。

解答の英文を解答欄の外にまで書いてしまうのは絶対にNGです! また、解答欄に収まるからといって長々と書き、内容や構成に悪影響を及ぼすのも好ましくありません。問題文に指示された語数と、しっかりした構成の両立を目指しましょう。

使える表現

英検1級の意見論述問題で役に立つ表現は以下のとおりです。

序論で役立つ表現

前置きや、TOPIC の背景の説明に使える言い回し

Many people believe that . や It is often pointed out that . が使えます。While . も、「」の部分で自分の意見とは異なる立場に軽く触れることができて便利です。Although . は、「」の部分に自分の主張とは対照的な意見を入れると、賛否がかなりはっきり分かれる TOPIC について、自分の意見を強調することができます。

自分の意見を言い表す

TOPIC が Agree か Disagree かを選ばせるタイプだった場合は、I agree that . や I do not agree that . 、自分の主張を述べる場合は I think . や I believe . などが使えるでしょう。

本論で役立つ表現

理由を挙げる

定番の First(ly), . の代わりに、To begin with, . や In the first place, . を使ってもいいでしょう。Second(ly), . は、Next, . や Another reason is that とも言えます。Third(ly), . の代用には、Finally, . があります。Furthermore, . や Moreover, . は、Second(ly), . と Third(ly), . の両方の代用になります。

結論で役立つ表現

結論の書き出し例

In conclusion, . が一般的です。To sum up . も使えるでしょう。英検1級ライティング問題の模範的な形式を踏まえるなら、I firmly believe that for the above three reasons. とも言えます。

その他の使える表現

その他のつなぎ語

逆接の however や nevertheless を使って対抗意見への反論をすると、自分の主張を補強できます。典拠を示すときは、According to . が便利です。原因・理由を述べるときには、because of や due to を使いましょう。

その他の定型表現

論点を示すには The problem is that . が使えます。客観性を持って予測する場合は It is likely [unlikely] that .、物事の原因と結果を明示するには This leads to . という表現があります。

意見論述問題 解答のチェックリスト

問いに適切に答えているか

与えられた TOPIC からはずれた内容を書いていないか、「理由を3つ挙げる」という要件を満たしているか、この2点は特に重要です。

意見と矛盾する理由や説明がないか

エッセイの趣旨が「わかりやすく論理的であること」も採点のポイントの1つです。意見に対する理由、また理由を補強する具体例や説明に矛盾する内容はないか、注意して点検するようにしましょう。

理由に対する説明や補足があるか

理由に対する説明や補足がないと、説得力を欠く内容になってしまいます。また、目安の語数も満たしにくいでしょう。ですから、問題文で挙げるよう求められる理由3つのそれぞれに対して、具体例や事実、追加の説明などを2~3文ずつ加えて、その内容を補強するようにしましょう。

関係のない内容が含まれていないか

主張や理由とは無関係な文章や、論理展開からはずれる内容が入っていると、「わかりやすく論理的であること」という採点の観点からはマイナスとなります。

つなぎ語を適切に使っているか

つなぎ語(therefore や in addition など)を適切に使えていると、エッセイの内容がわかりやすくなります。また、英語のエッセイで理想とされる構成を理解できているというアピールにもなります。

同じ言い回しがないか

同じ単語・言い回しの繰り返しは、語彙力が不十分だと見なされる可能性があります。また、文構造のバリエーションがとぼしいと、「文法」の観点から評価が低くなります(「採点の観点と配点」参照)。同じ表現・言い回しの繰り返しはできるだけ避けるようにしましょう。

スペルミスがないか

焦ると思わぬミスをしがちです。パソコンのオートコレクト機能に慣れて、スペルへの注意力が落ちていることがあります。書き上げたあと、もう一度チェックしましょう。

英語ではない単語を使う場合、その語の説明があるか

日本語特有の表現などを使う場合は、英語話者に理解できるよう説明を加える必要があります。その場合は、a kimono, a traditional Japanese dress, のように、コンマで切って解説する表現が便利です。和製英語などのカタカナ語は正しい英語に直しましょう。

省略形になっていないか

口語に多い短縮形は、英語のエッセイには相応しくありません。wouldn’t などは would not と省略せずに書きましょう。

文法のケアレスミスがないか

時制のミスがないか、単数/複数が適切か、冠詞の付け忘れがないか、確認しましょう。

意見論述問題 学習方法

英検1級の意見論述問題は、経験がものを言います。社会性の高い問題について論じることや、制限時間内に書き上げることは、慣れによって上達するからです。また、英検ウェブサイトからダウンロードできる解答用紙サンプルを使って適切な分量を把握しておくと、語数を数える時間を省略できます。本番でスペルを忘れたりする事態を防ぐためにも、怠らず手書きで練習して慣れておきましょう。
まとまった文を書くことがそもそも苦手だという人は、過去問や問題集の解答例を熟読することから始めましょう。そのうち、模範的な形式や、論理の展開のしかたがわかってきます。大体のパターンがつかめたら、前述した「書き方の手順」どおりに書く練習を、できるだけ多くこなしましょう。そのうち、習慣化されて手際よく書けるようになります。
英検1級の意見論述問題の場合、社会問題についての知識を増やすことも、重要な対策です。どのような TOPIC が出題されても、自分の意見とその理由3つを、即座に思い浮かべられなくてはいけないからです。TOPIC には、国内あるいは国際的にニュースとなっている時事・社会問題がよく選ばれます。ジャンルは政治・社会が多く、国際関係、環境、テクノロジーも頻繁に出題されています。TIME、Newsweek、The Japan Times など、頻出ジャンルの記事が多い新聞・雑誌・ウェブメディアを読み、社会と時事的な英単語の知識を蓄えましょう。記事を受動的に読むだけでなく、「この問題を自分はどう思う? そう思う根拠は何?」と能動的に問いかけてみて、前述の「書き方の手順」のように、エッセイのメモを作ってみる訓練も必要です。余裕があったら、今度は自分の意見とは逆の意見を支持すると仮定してみて、その立場から主張やその根拠を考える頭脳トレーニングもするとよいでしょう。

賛否両論ある TOPIC が出題され、それについて自分の意見とその理由を表明しなければいけない、という点で、英検1級の大問5と面接はよく似ています。しかし、面接では5つの TOPIC の中から1つを選んで答えることができますが、ライティングでは TOPIC を選ぶことができません。したがってライティング対策としては、できる限り幅広い分野の英語記事に日頃から目を通し、知識を蓄えておくことが必要です。

参考書

英検1級のライティング対策には、要約問題・意見論述問題5セット分の予想問題を収録した『英検1級 予想問題ドリル』がおすすめです。本試験に近い形式の問題を各大問につき5問ずつ実際に書いてみることで、語数の感覚やライティングの手順が身につきます。解答例と解説も収録されているので、自分の解答の出来ばえをチェックするのにも最適です。また言うまでもないことですが、作文に不可欠なのは語彙力です。特に英検1級の場合、社会性の高い話題にかかわる単語を知らなければいけません。単語集『英検1級 でる順パス単』などを使い、日本語の意味を見て見出しの英単語を即座に思い出せるよう、訓練を積みましょう。旺文社リスニングアプリ「英語の友」を使えば音声を無料ダウンロードして、空き時間に耳で学習することも可能です。

まとめ

英検1級のライティングについて把握できたでしょうか? ライティングという分野の特性上、高スコアをとるには、単語・熟語・文法の幅広い知識と地道な練習が不可欠です。日々の努力を重ねて、合格を勝ち取ってください!