大岩秀樹先生の「あいまい英語」にサヨウナラ! #5 似ている前置詞、byとuntilを使いこなせ!
よく見かける表現だけど、実は使い方が「あいまい」な英語ってありませんか? そんな「あいまい英語」を、東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科の人気講師・大岩秀樹先生がスッキリ整理整頓してくれるコラムです。もうこれで「あいまい英語」とサヨナラできる!
「誤差のウチ」では済まされない!
てやんでぃ! ウチが「本家」だってんでぃ! おととい来やがれ!
なにぃ!? ウチは「元祖」だぞぉ! そっちこそ、おととい来やがれってんでぃ!
まだ私がテレビっ子だった頃、同じ商売で同じ屋号の店が出てきて「どちらが最初にはじめたのか」という話題になると頻繁に耳にした「本家」と「元祖」という言葉。初めてそれらの言葉を聞いたときは意味の違いがわからず、国語辞典をひいた記憶が今も残ります。
・本家:血筋のはじまり
・元祖:ある物事をはじめること(血筋は無関係)
なるほど。血のつながりの有無という違いはあれど、伝えたいメッセージは「ウチが最初にはじめたのだ」ということらしい。使い方も意味も似ているこれらの言葉は、例えるなら「ポークカレー」と「ビーフカレー」みたいなものでしょう。確かに両者に違いはあっても、「カレー」という主軸が同じなのです。言葉の専門家には激怒されそうですが、こういった類の言葉は、使い間違っても「誤差のウチ」だと私は思います。
しかし言葉には、似ているのに全く伝わる内容が異なるものも存在します。例えるなら、「カレー」と「ハヤシライス」みたいなものです。これらはときに、見た目だけでは区別できないことさえありますが、香りと味の違いは歴然としており、両者は全く異なる食べ物であることは一口食せば説明の必要さえありません。こういった類の言葉の誤使用は「誤差のウチ」では済まされません。「今夜はカレー」のつもりで買ったルーがハヤシライスだった(実話)。そう、「誤差のウチ」では済まされないのです。実生活で、このような苦い経験をしないためにも、こういった言葉は正確に使い分けられるようにしておく必要があります。今回は、その代表選手として名高い「前置詞の by と until」を一緒に確認したいと思います。まずは、それぞれの代表的な意味から見ていきましょう。
「by ~」
1:~によって(動作主)
The window was broken by Hide.
(その窓はヒデによって壊された[その窓はヒデが割った])
2:~によって、~で(方法・手段)
Can I pay by credit card?
(クレジットカードで支払いはできますか)
3:~のそばに、~のわきに(位置)
There is a desk by the window.
(窓のわきに机がある)
4:~までに(期限)
I will be back by seven.
(7時までに戻ります)
「until ~」
~まで(継続の終了時)
I waited for him until noon.
(私は昼まで彼を待った)
お気づきですか!? そうなんです。by も until も「~まで(に)」の意味があるんです。どちらも「~まで」なので、「ポークカレー」と「ビーフカレー」みたいな違いでしょ? と思っている人も少なくないのですが、実はこれこそ「カレー」と「ハヤシライス」タイプなんです。では、別の例文を並べますので、意味の違いを考えてみてください。
・I can read the book by noon.
・I can read the book until noon.
いかがでしょうか? byは「期限」を伝えるので、「私は昼までにその本が読めますよ=昼までには読み終わる」という内容が伝わります。一方で、until は「継続の終了時」を伝えるので、「私は昼までその本が読めますよ=お昼の時点でその本を読み終わってなくても、昼まで読書を続けることができますよ(=昼以降は読めません)」という内容が伝わります。
こわっ! ビジネスで「I can do it until noon.(昼までならできますよ(=昼以降はできません)」のつもりで「I can do it by noon.(昼までにできますよ)」なんて言ってしまったら・・・・・・とか考えただけでも胃が痛くなりそうです(なので、考えないようにしましょう)。
では、胃痛同好会に入会しなくてもいいように、最後に3問ほどトレーニングをしてもらいたいと思います。では、日本語に合わせて by か until を入れ、英文を完成してみてください!
(1)私は2000年までニューヨークに住んでいました。
I lived in New York( )2000.
(2)4月24日までにレポートを終わらせる必要がありますよ。
You need to finish your report( )April 24.
(3)彼女は7時までに来ることはないでしょう。
She won’t come( )seven.
答えは、(1)が until、(2)が by、そして(3)が until となりますが、いかがでしたでしょうか!? (1)は「2000年が継続の終了時」なので、until でいいですよね。(2)も「4月24日が期限」なので、by で問題ないですよね。しかし、(3)は by にした人も多かったのではないでしょうか。「~までに・・・ない」のような否定文の場合は、示されている日時・出来事は期限ではなく、「それより前に、それより早く」という意味になるので by は使わないんです。こんなときは、until です。until を使えば「7時に来ない状態の継続が終了する=7時を過ぎたら来るかも」という内容が伝えられますからね。
さて、今回の内容はいかがでしたでしょうか? by と until は様々なところで目にする表現ですので、ぜひこの違いに注意を向けてみてくださいね。最後にもう一度、これだけお伝えして、今回はおしまいにしたいと思います。「今夜はカレー」のつもりで買ったルーがハヤシライスだった・・・・・・は、「誤差のウチ」では済まされません。それでは、お疲れ様でした!
東進ハイスクール・東進衛星予備校英語科講師
全国配信される映像授業講師に23歳で大抜擢。以来、20年以上もの間、大学受験生を中心に中学生~大学生・社会人を対象とした講座を幅広く担当。とくに、基礎力養成を目的とした授業は「得点力だけでなく、将来につながる英語力が身につく」と定評がある。著書は『高校 とってもやさしい英文法』(旺文社)『大岩のいちばんはじめの英文法 超基礎文法編』(東進ブックス)など40冊以上。