多種多様な英語が飛び交うこの世の中で、私たちには、さまざまなタイプの英語を理解する力が必要とされています。
まずは2つの主軸となるイギリス英語とアメリカ英語の違いをしっかり理解することから始めましょう。このコラムでは、旺文社『オーレックス英和・和英辞典』編者の野村先生が、両者の違いを楽しくレクチャーしてくれます。

*本記事では、イギリス人の発言として用いられる場合は英式の綴り、アメリカ人の発言として用いられる場合は米式の綴りを採用しています。

寒い冬の夜だった…

  • It was a cold winter night. As I made my way from the city centre towards my flat, I suddenly realised I was being followed. I turned round but nobody was in sight. The houses in the street lay in darkness. There was a sinister odour in the air.
  • (寒い冬の夜だった。繁華街を抜けて私のアパートの方に向かって歩いていると、突然、誰かに付けられていることに気がついた。振り返ったが、誰も見えなかった。通りの家並みは闇に包まれていた。不気味な匂いがあたりに漂っていた。…)

この文章の英語について何か気づくことがありますか。
前回の拙稿をお読みくださった方はすぐにお分かりですよね? そう、イギリス英語で書かれています。flat(アパート)という言葉が用いられているところから判断できます。でも、それ以上に分かりやすい判定材料は綴りです。centre や realised などの形を見れば、イギリス英語であることが一目瞭然です。アメリカ英語に親しんでいる方にとっては、奇妙な綴りの語が並んでいるのではないでしょうか*1

*1 さらに city centre(繁華街)という表現自体がイギリス英語であり(米 downtown)、「~の方へ」の towards や「ぐるっと」を表す round も、アメリカ英語ではそれぞれ toward、around の方が普通です。

今回は英米の綴りについてお話しします。日本ではアメリカ式が一般的ですが、世界的に見ると、イギリス式も広く用いられているので、両者の対応関係を知っておくと便利です。ただし、自分が書く場合はどちらかで統一しておきましょう。パソコンの入力も英米のどちらかの設定なので、他方の綴りで書くとスペルミスの警告が表示されてしまいます。

■英米の特徴的な綴り

まずは英米の主な違いを実例とともに挙げることにします*2。「元のイギリス綴りからどのように変わったのか」の観点から大まかに分類してみました。基本的に米の方が短く、シンプルで、比較的発音に忠実な綴り方になっています。英式綴りに慣れていると米式はどことなく間抜けに見え、米側から見れば英式は古風で気取っているように感じると言われます。

*2 英米のどちらか一方に限定されない綴りもありますが、ここでは違いに焦点を当ててそれぞれの特徴的な綴りのみ示します(例えば、-ise は英独自の綴りですが、実際には英では -ize も用いられます)。

●二重の子音字を1つに

英→米 例:英/米
ll → l cancellation / cancelation(取り消し)
crueller / crueler(残酷な[比較級])
quarrelling / quarreling(けんかする[ing形])
travelled / traveled(旅行する[過去形])
woollen / woolen(羊毛の)
◆control は英米とも -lling; -lled。
◆元の形が英 l /米 llのfulfil / fulfill、enrol / enroll、instal / install[以上、英米とも -lling、-lled]や skilful / skillful、wilful / willful などにも注意。
pp → p kidnapped / kidnaped (誘拐する[過去形])
worshipper / worshiper(崇拝者)
gg → g waggon / wagon(配達用トラック)
そのほか omelette / omelet(オムレツ)※1
jewellery / jewelry(宝石類)
programme / program(プログラム)※2
※1 語尾の e も脱落。
※2 語尾の e も脱落。コンピューター用語では英でも program。

●二重の母音字を1つに

英→米 例:英/米
our → or colour / color(色)
favour / favor(好意)
flavour / flavor(風味)
honour / honor(名誉)
humour / humor(ユーモア)
labour / labor(労働)
neighbour / neighbor(隣人)
odour / odor(におい)
◆actor、author、error、 mirror、terror など、多くの語は英でも or。
ae → e aeon / eon(永劫)
aesthetics / esthetics(美学)
anaesthetic / anesthetic (麻酔)
archaeology / archeology(考古学)
encyclopaedia / encyclopedia(百科事典)
mediaeval / medieval(中世の)
primaeval / primeval(原始時代の)
◆aerobics、aerosol などは米でも ae。
◆aeroplane / airplane(飛行機)や aluminium / aluminum(アルミニウム)は綴りだけではなく発音も異なる別単語。
oe → e amoeba / ameba(アメーバ)
diarrhoea / diarrhea(下痢)
manoeuvre / maneuver(作戦行動、策略)
語尾も er に。
そのほか baulk / balk(妨害、(野球の)ボーク) mould / mold (型、かび)
moustache / mustache(口ひげ)

●語尾の発音しない文字を切り捨てる

英→米 例:英/米
ogue → og analogue / analog(類似物、アナログ)
catalogue / catalog(目録)
dialogue / dialog(対話)
monologue / monolog(独白)
そのほか axe / ax(斧)

●発音を連想しやすい形に

英→米 例:英/米
re → er centre / center(中心)
fibre / fiber(繊維)
litre / liter(リットル)
lustre / luster(光沢)
metre / meter(メートル)※1
theatre / theater(劇場)※2
◆acre、massacre、 mediocre、genre などは米でも re。
※1「計量器」の意味では英でも meter。
※2 劇場名としては米でも theatre とすることが多い。
ise → ize apologise / apologize(謝罪する)
civilise / civilize(文明化する)
organise / organize(組織する)
privatise / privatize(民営化する)
realise / realize(悟る、実現する)
recognise / recognize(覚えがある)
◆advise、advertise、 improvise、revise、 surprise などは米でも ise。
yse → yze analyse / analyze(分析する)
paralyse/paralyze(麻痺させる)
ce → se defence / defense(防衛)
licence / license(免許)
offence / offense(違反、攻撃)
pretence / pretense(見せかけ)
◆動詞の「練習する」は practise / practice。
動詞は英でも license。
xion → ction connexion / connection(接続)
inflexion / inflection(湾曲、語尾変化)
reflexion / reflection (反射、熟考)
そのほか cheque / check(小切手)※1
disc / disk(円盤)※2
doughnut / donut(ドーナツ)
draught / draft(隙間風)※3
gaol / jail(刑務所)
grey / gray(灰色)
plough / plow(鋤)
pyjamas / pajamas(パジャマ)
sceptical / skeptical(懐疑的な)
storey / story(階)
tyre / tire(タイヤ)
※1「チェック(する)」の意味では英でも check。
※2 コンピューター関係では英でも disk。
※3 「草稿、手形」などの意味では英でも draft。

●(接尾辞が続くとき)eを落とす

英→米 例:英/米
dge → dg abridgement / abridgment(簡約)
acknowledgement / acknowledgment(承認)
judgement / judgment(判断)
◆argument(英米とも e を落とす)にも注意。
eable → able likeable / likable(好ましい)
loveable / lovable(愛らしい)
saleable / salable(売れる)
sizeable / sizable(かなり大きい)
◆英米とも believable、 changeable。
そのほか ageing / aging [ing形] ◆英米とも lie は lying、die は dying、dye(染める)は dyeing。

■英語の綴り

なぜ大西洋の両側で綴りに違いがあるのでしょうか。その問いに答えるためには、英語の歴史に説き及ぶ必要がありますが、その前に、英語の綴りの特徴について記します。

1つの言語で用いられる音とそれを表記する文字が1対1の対応をしていれば話は簡単です。綴り通りに読めばよく、発音通りに書けばよいので苦労はありません*3。でも、英語は残念ながらそうなっていません。音の数が44程度であるのに対して文字が26しかないため、1つの音を複数の文字の組み合わせで表したり*4、逆に、1つの文字に複数の音を担わせたりして*5、なんとかまかなっています*6

*3 綴りと発音が比較的一致している言語には、フィンランド語、スペイン語、イタリア語、トルコ語、インドネシア語、韓国語などがあります。日本語もひらがなやカタカナは音と文字がほぼ対応しています(助詞の「は」「へ」などの例外あり)。
*4 〈例〉/θ/:think;/ð/:this;/ʃ/:ship、chef、passion;/tʃ/:chair、catch
*5 〈例〉u:put /U/、but /ʌ/、business /ɪ/、bury /e/; c:cake /k/、prince /s/、ocean /ʃ/
*6 フランス語のように、文字に特殊な記号を付けて文字と発音を対応させる工夫をしている言語もあります。例えば、naïve の i の2つの点は、「ai は2文字で/エ/と読む」という原則(〈例〉japonais(日本語)/ジャポネ/)に反して、/ア/と/エ/に分けて発音することを示す印です(つまり、/ネーヴ/ではなくて/ナイーヴ/と読む)。英語の naive(世間知らずの)はフランス語からの借入語ですが、今でも i の点を2つで綴ることがあるのはその名残です。

英語はいわゆる“ローマ字読み”ができず、しかも音と綴りの関係が気まぐれで悪名高い言語です。しばしば chaotic(無秩序な)、disorganized(混乱した)、mess(めちゃくちゃ)、unpredictable(予測できない)などといった言葉で非難されます。実際には大半の語がパターン通りの綴りであり、英語の語彙全体がカオスというわけではないのですが、日常的に用いられる語に不規則な綴りが多いので、そういう印象を持たれても仕方ありません。

  • a. ghoti
  • b. Though I coughed roughly and hiccoughed throughout the lecture, I still thought I could plough through the rest of it. (講義の間中、激しく咳としゃっくりをしたが、それでも最後まで何とか乗り切れるだろうと思った。)

a.の単語は何と読むと思いますか?
答えは/フィッシュ/(=fish)。実は、同じ音がいろいろな文字列で表記される英語の綴りを皮肉るために作られた造語です。gh は laugh の gh /フ/、o は women の o /イ/、ti は nation の ti /シュ/の音なので、それらをつなぎ合わせれば/フィッシュ/となる理屈です*7

*7 「発音なし」という答えも正解です。though/ðoU/、people/pi:pl/、ballet/ bæleɪ/、business /bɪznəs/ の発音しない下線部の文字を結び付ければこの語ができるからです。

今度は、b.の文*8を声に出して読んでみてください。

*8 https://youtu.be/A8zWWp0akUUより引用。

こちらは逆に、同じ文字列がいろいろな音を表す節操のなさを茶化している文です。ough が8回出てきますが、何とすべてが異なる発音になっています*9

*9 though/oU/、coughed/ɔf/、roughly/ʌf/、hiccoughed/ʌp/、throughout/u/、thought/ɔː/、plough/aU/、through/uː/ (※日本の辞典で一般的に用いられている発音記号で表記)

■不規則性の原因

発音と綴りの間にそんなズレが生じたのはなぜなのでしょうか。

●内因

英語の綴りは、かつては書き手が自分の発音に即して勝手に文字をあてたため方言差も大きく、長い間、百花繚乱といえば聞こえがいいですが、要は何でもありでした。例えば、through は trghug、thrwght、thwrw、thrvoo など500を超える数のバリエーションがあったといいます。しかし、15世紀末に登場した活版印刷によって、ようやく一定の形に収斂(しゅうれん)するようになりました*10

*10 綴りがほぼ固定したと言えるようになるにはサミュエル・ジョンソン(ジョンソン博士)の辞書 A Dictionary of the English Language(1755年)の刊行まで待たなければなりませんでした。他国は国やアカデミー(学士院)が標準化の旗振り役でしたが、英語は英米とも権威ある辞書がその役目を果たしました。

ところが、綴りの標準化に時間を要しているうちに、一方の発音も大きく変貌を遂げていました*11。例えば、name(名前)や knight(騎士)の発音は、昔は/ナーメ/、/クニヒト/だったのですが、そこから何段階かの変化を経て、今の/ネイム/*12、/ナイト/になりました。
印刷物によって一定の綴りが普及してからも発音の揺れは続きましたが、その変化は文字の方には反映されませんでした。発音が定まらないうちに正書法が固まってしまったわけで、name や knight はいわば歴史的仮名遣いがそのまま残っているのです*13

*11 特に15世紀から17世紀にかけて、「大母音推移」と呼ばれる現象により母音体系が劇的に変化しました。
*12 ドイツ語のName(名前)はそのまま/ナーメ/。
*13 現代の日本語でも、助詞の「は」や「へ」は、「わ」、「え」と発音するのに文字は古い表記のままです。

●外因

英語にはさまざまな言語から英語らしくない綴りの外来語が流入してきましたが*14、外からの影響はそれにとどまらず、既存の単語の綴りが外国語に倣って改変されることさえありました。

*14 〈例〉bizarre(奇怪な)、brusque(ぶっきらぼうな)、canoe(カヌー)、chaos(カオス)、moustache(口ひげ)、pneumonia(肺炎)、psychology(心理学)

フランスに征服され(1066年)、英語の社会的地位が低かった時代に、支配階層のフランス語の綴りを真似ることが流行しました。古典語が礼賛されたルネサンス期(16世紀頃)には、すでに定着していた綴りを語源のラテン語に近づけるための手直しも行われました。例えば、queen は元の英語は cwēn だったのにフランス語に合わせて qu- と綴られるようになり、debt、receipt の b、p はラテン語にならって挿入されたものです。

■綴り字改革

これらの要因が絡み合って複雑怪奇な綴りが出来上がったわけですが、さすがにこれはまずいということで、綴り字改革が幾度も提起されました。綴りの改革にまつわる議論は日本語の表記法や漢字制限の論争に通じるものがあって興味深いものです。

イギリスでは、特に19世紀以降、綴りを発音に合わせて簡略化しようとする運動が活発になりました。不規則性を少しずつ減らす穏健な提言がほとんどでしたが、新しいアルファベットを作るべきだという極端な論者もいました。しかし、伝統や慣習を重視する根強い反対に遭ったため、いずれの案も一般に広まることはありませんでした。

一方のアメリカでは、不合理な部分を一部とはいえ正すことに成功しました。
最大の功労者は、トータルで1億部も売れた The American Spelling Book(初版1783年)を著わした辞書編纂家ノア・ウェブスターです。アメリカ英語の自立を目指した彼は、綴りについてもイギリスの衒学(げんがく)趣味から英語を解放しようとしたのです。
特に問題視したのは、余分な文字があることと、綴りと発音が乖離していることでした。彼の改革案は一部から抵抗を受けたものの徐々に普及し、アメリカ英語の標準と目されるようになりました。その集大成が、アメリカ英語の独立宣言とも言える An American Dictionary of the English Language(1828年)です。

しかし、ウェブスターの主張は不規則性を一掃するような過激なものではなく、その後の唱道者たちの提案もほとんど顧みられることがなかったため、アメリカ式の綴りでも文字と発音の不一致はほとんど解消されていません。かくて英語の綴り字改革は未完のままです。

イギリスは英語の本家として伝統的な綴りを墨守しているのに対し、本家からの独立を図るアメリカが合理化のための改革を施したので、両者の間に違いが生まれた――これが「なぜ大西洋の両側で綴りに違いがあるのか」に対する答えです。

■最近の工夫

情報の伝達手段は時代とともに変化し(中でも文字、印刷技術、インターネットの発明は革命的)、言語もそれに合わせて変化してきました。文字言語の最前線の動きとしては、メールやSNSなどで一般化してきているテキストスピーク(textspeak)があります。遊び心や入力の手間を減らすために略された表記法を指します。
〈例〉cuz(=because)、luv(=love)、tho(=though)、thru(=through)、w/o(=without)、aka(=also known as)、asap(=as soon as possible)、BTW(=by the way)、CU(=See you)、4 U(=for you)、FYI(=for your information)、IMO(=in my opinion)、LOL (=laughing out loud)、OMG(=Oh my God)、THX(=thanks)

■綴りの間違い

皆さんは綴りを覚えるのが得意ですか?
正直に言うと、私は tomorrow と書くとき、m が1つでよいのかいつも迷います。ゼミ生の卒論では、learn が lean、cultural が cultual になっていることがよくあります(lean の場合は英語として存在するのでスペルチェックには引っかからない!)。ある教材を作っていて、brake(ブレーキ)が break と綴られているのに、私も英米2人の校閲者もスルーしてしまい、校了間際に気づいて冷や汗をかいた経験も。

私たちが漢字で悩むのと同じように、英語の母語話者も綴り相手に苦戦しています。そのことに英米差はなく、grammar(文法)を grammer、所有格の its を it’s と書いて平気な人や、to と too の区別がつかない人などざらにいます。ある調査*15によると、embarrassed(恥ずかしい)、millennium(千年間)は英米とも半数以上の人が正しく書けなかったといいます。だからこそ、綴りの正確さを競う spelling bee*16などの競技が成立するわけです。

*15 The English Spelling Society の委託により、英(2008年)と米(2009年)の両国でそれぞれ1000人を対象に実施された調査。
*16 正しい英単語の綴りを子供たちが競う米国発祥の競技会。bee は「会合、集い」の意味。

最後に、母語話者が犯しがちな間違い(typo)を挙げておきます。スペルミスは英語を使う者が一生付き合っていかなければならない宿痾(しゅくあ)なのでしょう。でも、英米人も私たちと同じような間違いをするんだと思うと、なんだかほっとしますね! 

●誤字

×accomodate → accommodate
×acheive → achieve
×beleieve → believe
×definately → definitely
×goverment → government
×neccesary → necessary
×occured → occurred
×publically → publicly
×recieve → receive
×seperate → separate
×untill → until

●同音異義語(音は同じでも綴りが異なる単語)の混同

stationary(静止した)― stationery(文房具)
discrete(別個の)― discreet(慎重な)
their(彼らの)― there(そこに)― they’re(=they are)
your(あなたの)― you’re (=you are)

著者の紹介
野村 恵造
元東京女子大学教授。専門は英語学。旺文社の英語辞書LEXシリーズの編集主幹。
検定教科書『Vision Quest Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(啓林館)の監修のほか、著書に『ジョンブルとアンクルサム―イギリス英語とアメリカ英語』(研究社 2013)、『英語のスタイル―教えるための文体論入門』(共著 研究社 2017)、『言葉にこだわるイギリス社会』(共訳 岩波書店 2003)など。