「数に関する英語」シリーズ、今回は「群れの数え方の英語」です。
日本語では、1匹、2匹、1羽、2羽、1頭、2頭など生き物の種類によって助数詞を使い分けますが、同じように英語でも生き物によって「群れ」を表す単語がさまざまに変わります。
日本語の助数詞は日本人にとっても使い分けが難しいですが、英語ネイティブにとっても英語の「群れ」の使い分けは簡単ではないようです。
ここでは一般的に使われる「群れ」の英語を中心に紹介します。
(文:Kan Andrew Hashimoto)

はじめに

新型コロナウィルスが大流行する直前、日本中に数多くの外国人観光客の姿がありました。
私の会社があるエリアも例外ではありませんでした。
あるとき観光客の集団が巨大な観光バスからレストランに吸い込まれていくのを見て、隣にいた友人が言いました。

    Look at the swarm of tourists! : 観光客の群れを見ろよ。

    Let’s try somewhere else. : 別の店にしよう。

英語には「群れ」を表す表現がさまざまあります。
あまりに多すぎて、英語を母語とする人間でさえ「こんな表現は使ったことがない」「知らなかった」と思うものがいくつもあります。

flock

ヤギや羊や鳥の群れ、人の集団にも使います。

    a flock of sheep : 羊の群れ(sheepは複数形もsheepです)
    a flock of ducks : アヒルの群れ

    Without tradition, art is a flock of sheep without a shepherd. :
    伝統を無視するなら芸術は羊飼いのいない羊の群れのようなものだ。(英国の政治家Winston Churchillの言葉)

herd

大型の草食動物(牛、象、鹿、トナカイ、カバ、ヘラジカなど)や鯨に使います。

あと、なんとウニもherdを使います!
BBCの自然探検番組で herds of sea urchins と何度も言っていて、そのあと気になって調べ確認しました。

    a herd of deer : 鹿の群れ(deerも単複同形名詞です)
    See, there’s a herd of whales! : 見て、鯨の群れだよ!
    I ran into a herd of reindeer. : 私はトナカイの群れに遭遇した。
    they followed the herd of animals. :
    彼らは動物の群れを追った(動物を限定せずただ草食動物という場合はherdです)。

pack

コヨーテ、オオカミ、猟犬、シャチなど狩りをする肉食獣の群れに使います。
暴力的なイメージを持つ語です。

    a pack of wolves : オオカミの群れ
    a pack of coyotes : コヨーテの群れ
    a pack of hounds : 猟犬の群れ

Wisconsin州の田舎にはコヨーテの群れがよく現れたので私の実家には10頭以上の犬がいて家畜を守っていました。
a pack of wolves は小説や映画のセリフなどにもよく登場しますが「悪者たちの集団」のように比喩的に使うことも多い表現です。

    Did you see the pack of hyaenas? : ハイエナの群れを見ましたか?(hyaena は発音注意 /haiíːnə/)
    a pack of thieves : 泥棒の一味(人にも使います)

school, shoal /ʃóul/

魚、イルカや鯨のような泳ぐ生き物に使います。

    a school of fish : 魚の群れ
    a school of sardines : イワシの群れ
    I swam by a school of dolphins. : イルカの群れの傍を泳いだ。
    They live in schools. : 彼らは群れで生活をする。

メダカの学校、という歌がありますね。英語を意識した歌詞ではないと思いますが興味深い偶然です。

swarm

バッタの大群、蜂、アリ、蛾、蚊など群れを成す昆虫に使います。

    a swarm of bees : 蜂の群れ
    a swarm of moths : 蛾の群れ
    Don’t step on the swarm of ants. : アリの群れを踏まないで。
    Drive away the swarm of mosquitoes. : 蚊の群れを追い払って。

雑学

    a pride of lions : ライオンの群れ
    a gang of turkeys : 七面鳥の群れ
    a tower of giraffes : キリンの群れ
    an army of frogs : カエルの群れ
    a flight of swallows : ツバメの群れ
    a gaggle of geese : ガチョウの群れ
    a game of swans : 白鳥の群れ

    人に対してはflock/pack/swarmなどを使うのですが、どれを選ぶのかに大きな意味があります。

  1. I see a flock of people coming!
  2. I see a pack of people coming!
  3. I see a swarm of people coming!
    どれも「人が集団でこちらに向かっている!」という意味ですが、それぞれの意味合いは大きく異なります。

  1. は、ただ状況を伝えています。
  2. は、「暴力を振るいそうな、暴徒になりそうな集団」
  3. は、「暴力のような直接的なアプローチはなさそうだが群れている、何だか面倒くさそうな連中」
  4. というニュアンスを含みます。

本来1.はヒツジ、 2.は肉食獣、 3.は虫などの群れを表すことからそのニュアンスをそのまま引き継いでいると言えます。
冒頭の友人のセリフ、flockでもpackでもなくswarmと口にしたことに彼が言外に伝えたかったこと(彼のフラストレーション)を感じます。

次回もお楽しみに。

Kan Andrew Hashimoto 米・ウィスコンシン州出身。英・日バイリンガル。英語教育関連の音声、映像、書籍などの制作を手がける(株)ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。公益財団法人 日本英語検定協会、文部科学省、法務省、警察庁などの教育用映像(日・英版)の制作などを行う。著作に「雑談力が伸びる英語の話し方」(斎藤孝と共著・アルク)などがある。