数えられる名詞と数えられない名詞、多くの日本人はその区別に迷うことがあるのではないでしょうか。
この「数に関する英語」シリーズでは、不可算名詞、長さ・重さ・量の単位、群れの数え方など日本人が苦手とする英語特有の語句・表現を紹介していきます。
(文:Kan Andrew Hashimoto)

数えられないものの英語の数え方2

アメリカの子どもは不可算名詞をどうやって覚える?

実は日本人にとって不可算名詞が分かりにくいように、アメリカ人の子供にとってもそれらを間違って使うことはままあります。
そのたび先生や家族から直されて、一つひとつ覚えていく・・・のでは実はなく、時間をかけて可算名詞・不可算名詞のイメージを作っていくように思います。

実際の生活では

どんなに学校で water, juice, coffee, beer は数えられない、と習ったとしても教室を出てしまえば同じ先生が cafeteria で Two coffees, please. (コーヒー、2つお願いします)
と注文していますし
私が子供のころ、家では父が母にこのように言っていました。
“Will you give me a beer?(ビール1つくれない?)”

two cups of coffee : コーヒー2杯
a bottle of beer : 瓶ビール1本
がもちろん正しい表現です。

不可算名詞を可算名詞として使うときのイメージ

しかし受験英語では時に間違いとされる two coffees/a beer という言い方は生活の中では確かに存在します。
そしてそれらは不可算名詞のときとは意味が異なります。

coffee と言えばあの香り高い茶色の液体、 beer は泡と共に金色に光る魅惑的な液体です。
それ自体は数えられるものではありません。
単位や容器などを介して数えます。

one liter of coffee : 1リットルのコーヒー
one pint of beer : 1パイントのビール
two cups of coffee : カップ2杯のコーヒー
a bottle of beer : 瓶1本のビール
のように。

しかし cafeteria や restaurant では通常コーヒーはカップで出てきます。
a coffee と言うことで「香り高い茶色の液体」から「カップに入った1杯のコーヒー」と頭のなかでイメージするものが変わります。
不可算名詞の beer は金色の液体のことです。
しかし父は、母にビールを頼むときに、 a beer と言いました。
それは beer とは別のものです。
当時、実家の巨大な冷蔵庫には小瓶ほどのサイズの瓶ビールが数え切れないほど入っていました。
a beer はその1本のことです。
家庭内で a beer と言えばそのことだとイメージを共有できます。
それが理由で父は a beer と言いました。

可算名詞を不可算名詞として使う場合

どんな違いがあるのでしょう。

I like horses. : 私は馬が好きです

好きな動物として馬を想像すると、個体としての馬が複数頭思い浮かぶ。だから可算名詞で複数形である、というのが horses である理由です。

これが不可算名詞になると数えられないものとしての horse が思い浮かびます。
それは馬ではなく馬肉です。
I like horse. : 私は馬肉が好きです
と意味が変わります。
これは他の動物でも同じです。

I like dogs. : イヌが好き
I like dog. : イヌの肉が好き

I like chickens. : ニワトリが好き
I like chicken. : 鶏肉が好き

cow/pig は牛肉/豚肉を表す言葉として beef/pork という別の単語があるので通常はそちらを使いますが、もしも誰かが I like cow. と言ったとすると英語圏の人間は動物としての牛を思い浮かべたりはせず、その人が cow meat (牛肉)のことを言っていると思います。

apple/lemon/roseの場合

I like apples. : 私はリンゴが好きです
I like lemons. : 私はレモンが好きです
I like roses. : 私はバラが好きです

これは上の例と同じです。
I like apple. ではどういう意味になるのでしょうか。

冠詞なしの apple,
これは「数えられないリンゴのイメージ」です。
「数えられないリンゴ」と言われてあなたは何を思い浮かべますか?
それは例えば「味」です。または「匂い」です。
例えばアイスクリームを選んでいる状況で「何の味が好き?」などの質問に対しての答えが考えられます。

I like apple. : リンゴ味が好き
I like lemon. : レモン味が好き

またはルームフレグランスの話をしている場面ならこんな意味になります。

I like apple. : リンゴの匂いが好き
I like lemon. : レモンの匂いが好き
I like rose. : バラの匂いが好き

可算名詞・不可算名詞のイメージを少しでも共有できたらうれしいです。

Kan Andrew Hashimoto 米・ウィスコンシン州出身。英・日バイリンガル。英語教育関連の音声、映像、書籍などの制作を手がける(株)ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。公益財団法人 日本英語検定協会、文部科学省、法務省、警察庁などの教育用映像(日・英版)の制作などを行う。著作に「雑談力が伸びる英語の話し方」(斎藤孝と共著・アルク)などがある。