TOEFL iBTテスト 新形式の解説と対策
2023年7月26日にiBTテストの試験形式がリニューアルされ、新形式になりました。この記事では新形式の内容と、新しく加わったライティング問題 Academic Discussion task について解説していきます。
※本記事は、2024年4⽉時点の情報に基づいています。受験の際は、TOEFLテスト日本事務局ウェブサイトで最新情報をご確認ください。
目次
リニューアル後の問題形式
大きく変わった点は
・試験時間の変更
・ライティング問題形式の一部変更
です。それぞれについて以下に解説します。
試験時間の変更
リニューアル前の2023年7月25日までは試験時間は約3時間でしたが、2023年7月26日からは約2時間になりました。以下の変更により試験時間が短縮されました。
・リーディングのパッセージ数と試験時間、ダミー問題の廃止
3~4つ/54~72分 → 2つ/35分*
スコアに加算されないダミー問題の廃止
*ETSによる公式発表では35分ですが、実際の試験時間は36分になる場合があります。
・リスニングの出題数と試験時間、ダミー問題の廃止
講義形式:3~4題 → 3題
対話形式:2~3題 → 2題
合計設問数:28~39問 → 28問
試験時間:41~57分 → 36分
スコアに加算されないダミー問題の廃止
・休憩時間
10分 → 廃止
・スピーキング
試験時間:17分 → 16分(Instructionとナビゲーションの簡素化による短縮)
・ライティング
出題形式:Independent task/30分 → Academic Discussion task/10分
試験時間:50分 → 29分*
*ETSによる公式発表では29分ですが、実際の試験時間は30分になる場合があります。
・全体の試験時間
約3時間 → 約2時間
全体の試験時間だけをみると一見楽になったかのように感じますが、ライティングには次で解説する新しい形式の問題が加わり、対策が必要です。
ライティング問題形式の一部変更
ライティングは従来のIndependent taskから、新しく Academic Discussion task という問題に変更になりました。形式は以下の通りです。
・リーディングとライティングの組み合わせ。教授と学生のやりとりを読んで自分の意見を書く。
・試験時間:教授と学生のやりとりを読む時間と解答時間(タイピングする時間)あわせて10分。
・解答語数の目安:100語以上。
詳しくは「Academic Discussion task とは」で解説しています。
変わらない点
一方、変わらない点もいくつかあります。リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング Integrated task の
・出題形式
・一問あたりの解答時間
・各設問の難易度
については、変更はありません。
また、スコアスケールや受験料、テスト日程と会場の選択肢などにも変更はありません。
変更点のまとめ
以下に変更点をまとめます。
旧形式(2023年7月25日まで) | 新形式(2023年7月26日から) | ||
リーディング |
パッセージ |
3~4つ |
2つ |
試験時間 |
54~72分 |
35分* |
|
リスニング |
講義形式 |
3~4題 |
3題 |
対話形式 |
2~3題 |
2題 |
|
設問数 |
28~39問 |
28問 |
|
試験時間 |
41~57分 |
36分 |
|
休憩 |
|
10分 |
なし |
スピーキング |
試験時間 |
17分 |
16分 |
ライティング |
変更された出題形式 |
Independent task(30分) |
Academic Discussion task(10分) |
試験時間 |
50分 |
29分* |
|
試験時間 |
|
約3時間 |
約2時間 |
*実際の試験では異なる場合がある。
※リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの Integrated task の出題形式、一問あたりの解答時間、各設問の難易度は変更なし。
※スコアスケールや受験料、テスト日程と会場の選択肢なども変更なし。
Academic Discussion task とは
ライティングでIndependent taskに代わって新たに加わった Academic Discussion task は、オンラインでの学びを意識したものとなっており、教授と学生2人のやりとりを読んで自分の意見を100語以上で書く問題です。やりとりを読む時間と解答時間をあわせて10分間という比較的短い時間で解答しなくてはなりません。ここでは、基本的な形式、よく出ると思われるテーマ、解答のポイントを解説します。
基本的な形式
まずは出題形式を見てみましょう。以下はサンプル問題です。
このような構成になっています。
解答は右下の解答欄にタイピングします。
Academic Discussion task のテーマ
公式サンプル問題を参照したり、旺文社編集部で実際に受験してみたりしたところ、教授からの質問は以下のカテゴリーで出題される傾向がみられました。
・教育
・政策
・ビジネス
・環境
いくつか具体例を挙げます。
・【教育】高等教育で必須にすべき教科は何か/課外授業は大事か
・【政策】公共交通機関は無料にすべきか/住宅不足の解決策は何か
・【ビジネス】大企業とスタートアップ企業のどちらがよいか/従業員に離職させない方法は何か
・【環境】環境問題の解決策は何か/CO2削減のために公共交通機関を改善するか、EVに対して助成するか
その他、「これから大人の学びとしていちばん人気になるのは何か」「企業による科学的な発見の詳細を一般に公開しないことの是非」など、上記分類以外のカテゴリーから出題されることもあるようです。
押さえるべきポイント
Academic Discussion task では以下のことが求められます。
(1)メッセージの投稿により教授の質問に答える必要がある
(2)投稿の中で、裏付けとともに自分の意見を述べなければならない
(3)自分の考えを使って議論に付け加えなければならない
これらを踏まえて、解答するにあたり押さえるべきポイントをいくつか紹介します。
応答性
まずは、「指示」の1つ目にあるように、「教授の質問に答える」こと。当たり前のことに思えるかもしれませんが、試験本番でいざ自分の意見を書くとなると「あれもこれも」となってしまい、論点がわかりづらくなってしまうことがあります。教授からの質問に対し、まずは立場を明確に示し、自分の意見を端的にわかりやすく書きましょう。質問は「A or B」の2択型かWhat型が出る傾向があるようです。それに対して自分はどの立場をとるのか、何を主張したいのかを明確に書きましょう。
「指示」の2つ目にある「裏付けとともに、自分の意見を述べる」は、自分の意見の根拠となる具体例を書くとよいでしょう。何の根拠もなくただ主張するだけでは説得力がありません。学生2人がすでにそれぞれの意見を述べているので、それらを有効に活用するとよいでしょう。学生の意見が自分と同じ立場だったら「Steveの意見に賛成です。加えて〇〇という点もあります」というように、さらに具体例を挙げてサポートし、自分と反対の立場だったら、「Naomiは△△と言っていますが、それについては▽▽というマイナス面があります」というように反駁することで、逆説的に自分の意見を主張することができます。
また、そのように解答することで「指示」の3つ目にある「議論に付け加える」にもつながります。「議論に付け加える」とは、つまり「議論に貢献する」ことです。すでに述べられている意見を無視して、自分の意見を一方的に述べていたのでは、議論に貢献しているとは言えません。自分の意見をより説得力のあるものにするために、学生2人の投稿をしっかり読んでそれらを踏まえて解答するとよいでしょう。
展開の仕方
意見の展開の仕方も大事です。まず、自分がどの立場なのか、何を主張するのかを書きましょう。続けて、それを支持する具体的な理由や事象を書きます。そして最後にもう一度自分の主張を述べる流れにすると、話の展開がわかりやすくなります。読み手に分かりやすくスムーズに論理を展開するためには、接続表現をうまく使うとよいでしょう。
語彙・文法・表現力
極端に難度の高い単語を使う必要はありません。ただ、同じ単語を何度も使うと語彙力が乏しいと判断されてしまいます。繰り返しを避け、違う語句に言い換えたり、多様な構文を使ったりすることを意識しましょう。
文法ミスも評価の対象となります。Academic Discussion task の試験時間は10分ですが、教授からの質問や学生の投稿を読む時間、そして考える時間も含めて10分なので、解答に使える時間は実質7~8分です。時間を気にするあまり単純な文法ミスをしてしまわないよう、普段から制限時間を設けて素早く正確に書く練習をするとよいでしょう。三単現のsや複数形、時制など基本的な文法事項こそ注意が必要です。
以上、Academic Discussion task の解答のポイントを紹介しました。出題テーマは比較的身近な内容なので、ニュースやネット記事などを元に、自分の意見をまとめる練習をするとよいでしょう。
続けて、Academic Discussion task の対策もできるおすすめの書籍を紹介します。
対策にはこの2冊!
2024年2月刊行の『はじめてのTOEFLテスト完全対策』、『TOEFL iBTテスト本番模試』はともに、今回の試験リニューアルに対応しています。いち早く試験対策をすることができます。
『はじめてのTOEFLテスト完全対策』は、はじめてTOEFL iBTテストを受験する方におすすめです。受験情報・模擬試験・攻略法・著者からの学習アドバイス、すべてがこの1冊に収録されています。
『TOEFL iBTテスト本番模試』は模試が充実しているので、より多く模試を解いて対策したい方に最適です。まずは気軽に感覚をつかめるよう、1回目は短めの「ウォームアップ模試」となっており、2・3回目は本番どおりの「フル模試」です。また、試験の主催・運営団体ETSの公認トレーナーである五十峰聖先生にすべての問題を監修いただき、学習アドバイスも掲載しています。
加えて、2冊ともPCでできるWeb模試付きです。TOEFL iBTは試験でPCを使用します。本番で焦らないためにもPCでの練習は必須。この2冊ならバッチリ対策ができます!
まとめ
2023年7月26日からのTOEFL iBTテストの変更点や新しく加わった Academic Discussion task の解答のポイント、おすすめ書籍を紹介してきました。試験時間が約3時間から約2時間になり、取り組みやすくなったと言えますが、ライティングにはこれまでのIndependent taskに代わり Academic Discussion task が新たに登場したので、事前の対策は欠かせません。ここで紹介したポイントや書籍を活用し、こつこつと勉強すれば、本番でも落ち着いて取り組むことができ、目標スコアを取得できるはずです。みなさんが目標スコアに到達することをお祈りしています!