この記事では、英検準1級の一次試験で出題される長文読解問題(大問2・大問3)について詳しく解説しています。はじめに、どのような問題が出されるのかなど、試験の概要を述べています。長文読解問題を解く上でのコツや日ごろの学習方法、参考書を使った対策も詳述しています。ぜひ参考にしてください。

※本記事は、2024年9月時点の情報に基づいています。受験の際は、英検ウェブサイトで最新情報をご確認ください。

英検準1級の長文読解問題の概要

以下では、英検準1級で出題される長文読解問題の概要と問題例、その解答例を挙げています。

概要

英検準1級の長文読解問題は、一次試験(筆記)の大問2と大問3で出題されます。出される長文は、社会問題・環境・自然・宇宙・医療・健康・人体などについての説明文や評論文が多く、時事問題から歴史的側面を述べる文章まで、多岐にわたります。特定の地域が話題になる場合、北米、特にアメリカ合衆国に関する話題が多く取り上げられる傾向がありますが、ヨーロッパやアジアなどほかの地域の話題が出題されることもあります。総じて、ニュースや新聞で扱われるような話題が中心です。読み解くには正確な文法知識や、やや専門的な語彙力が必須であり、非常に高い英文読解力が求められます。

大問2と大問3、それぞれの概要は以下の通りです。

  問題形式 ⻑⽂の種類 語数の⽬安 設問数 目標解答時間
大問2 長文の語句
空所補充
説明文、評論文など 250語程度 3 約15分
250語程度 3
大問3 長文の内容
一致選択
400語程度 3 約25分
500語程度 4

語句空所補充問題(大問2)の問題例

大問2は語句空所補充問題です。250語程度の長文を読み、文中の空所に当てはまる選択肢を選びます。1つの長文には3つの空所があります。この大問で出題される長文は2つです。空所に入るものには、文章の述部にふさわしい選択肢を選び出すものが多く見られますが、名詞句や前の名詞を修飾する節の部分を問うものなども出題されます。またほとんどのケースで1つの長文につき1題、文頭の接続表現(つなぎ言葉)を問う問題があります。大問2全体を、15分ほどで解けるとよいでしょう。

例題:

The Refugee Resettlement Dilemma

  The world now faces an unprecedented refugee crisis with over 20 million refugees, a growing surge that will likely keep increasing. Yet residents of the developed countries in the northern hemisphere are (  1  ) this crisis, except for those who fear an incoming flood of dependent refugees with differing values. Experts warn that the citizens of wealthy countries need to be aware of the plight of refugees.

(上記は第1パラグラフのみの例。以下略)

(1) 1 largely ignoring 2 keenly aware of
  3 increasingly concerned about 4 considering ways to solve

(中略)

(3) 1 Otherwise 2 In addition
  3 Consequently 4 For instance

『英検分野別ターゲット 英検準1級リーディング問題』より抜粋)

この例題では、(1)が述部を補うタイプの問題、(3)がつなぎ言葉を問う問題です。

内容一致選択問題(大問3)の問題例

大問3は内容一致選択問題です。1つ目の長文は400語程度で設問が3つ、2つ目の長文は500語程度で設問が4つです。設問の形式には、長文の内容に関する質問が提示され、その答えとして適切な選択肢を選ぶものと、英文が途中まで提示され、それに続く適切な選択肢を選んで文を完成させるものがあります。大問3全体を、25分ほどで解けるとよいでしょう。

例題:

Virgin Birth

  In 2006, at Chester Zoo in North West England, a special event occurred—the birth of seven all-male Komodo dragons, the giant meat-eating lizards found in Indonesia. What made the event a much bigger surprise was that the mother, named Flora, gave a virgin birth. In other words, she managed to get pregnant on her own without the help of a male counterpart. The zookeepers knew Flora was both the mother and father because she had never been in contact with a male Komodo. Later genetic testing of material in the eggs confirmed that she was indeed the mother and father.
  The production of offspring without fertilization by a male is referred to as parthenogenesis and is considered to be rare. Furthermore, research at the University of Liverpool has revealed that female Komodo dragons can actually switch between asexual and sexual reproduction. The method of reproduction depends on the availability of a mate, and the female has the ability to switch to either mode of reproduction. In contrast, other lizard species that reproduce asexually do not have the ability to reproduce normally. Parthenogenesis has been seen in about 70 species, including lizards and snakes. Researchers are unclear as to whether Komodo females have always had this ability or whether it is a recent evolutionary development. Theoretically, female Komodos could start a whole new colony on their own. One drawback is that all of the offspring would be male. So though they could grow up and mate with their mother to produce more young, in the long term, the colony of dragons could develop health problems due to low genetic diversity.

(上記は第2パラグラフまでの例。以下略)

  • (1) The zookeepers at Chester Zoo
  •  1 felt positive that the female Komodo was solely responsible for the birth of her young.
  •  2 were unaware that the female Komodo had been in contact with a male shortly before she laid the eggs.
  •  3 were surprised that the female Komodo was already pregnant when she was found in Indonesia.
  •  4 used the genetic material taken from a male Komodo to fertilize the female at their zoo.
  • (2) Why is the reproduction process of the Komodo dragon particularly unusual?
  •  1 The two methods of reproduction used by the female are not found in any other species of lizards.
  •  2 The female has just begun to use this kind of reproduction even though it has long had the ability.
  •  3 The female is able to alternate between reproduction methods, depending on whether a suitable mate can be found.
  •  4 This form of reproduction actually allows the female to choose the sex of the offspring.

(以下略)

『英検分野別ターゲット 英検準1級リーディング問題』より抜粋)

この例題では、(1)が適切な選択肢を選んで文を完成させるタイプの問題、(2)が質問への答えを選ぶタイプの問題です。

長文読解問題 読解のコツ

以下では、長文読解問題を読み解く上で重要な点を述べています。

英文の構造・特色を知ろう

英語の文章には、定まった構造があります。

英文の一般的な構成

●英語の説明文・評論文の一般的な構成

①序論(Introduction) 説明⽂のトピックを提⽰する導⼊部分。
②本論(Body) トピックを、具体例などを⽰しながら論じる部分。
③結論(Conclusion) 説明⽂のまとめ。

英語の説明文、評論文では、最初に序論(Introduction)が語られ、続いて本論(Body)が、最後に結論(Conclusion)が述べられる、という構成が一般的です。また、各パラグラフは、多くの場合、最初にトピックセンテンスが置かれて要点を明示し、続くサポーティングセンテンスでその根拠などが述べられる構成となっています。序論と結論、特に結論が、作者の最も言いたいことなので、しっかり読み、誤りなく趣旨をつかみましょう。

タイトルとつなぎ⾔葉に注目しよう

英検準1級の長文読解問題では、長文の頭にタイトルが明記されています。タイトルは内容を読者に端的に伝えるためのものですから、重要なヒントになります。最初に注目し、どんなテーマについての文章かすばやく把握するようにしましょう。

また、「つなぎ⾔葉」(「ディスコースマーカー」「シグナルワード」などとも呼ばれる)の意味を正しく知っていると、英文の展開が予想できます。読みに必要な時間を短縮できるので、意識して活用しましょう。

効率的な読み方を知っておこう

スキミング(Skimming)

skim(~をすくい取る→情報をすくい取って読む)に由来する語で、英文の内容をざっくりと把握する読み方を言います。各パラグラフのトピックセンテンスや繰り返し出てくるキーワードに力点を置く読み方で、大意を短時間でつかむことができます。英検準1級の場合、英文に最初に目を通すときは、タイトルおよび各パラグラフの最初と最後の文を読む程度のスキミングをして、大意を把握するとよいでしょう。

スキャニング(Scanning)

scan(~を探すために見る、精査する)に由来する語で、特定の情報を見つけ出すための読み方です。英検準1級の内容一致問題の場合、質問を読んで何が問われているかを明確にした上で、答えを探して本文をもう一度読むことがよくあります。そのときに役立つ読み方です。

長文読解問題の効率的な解答の仕方

以下では、英検準1級の長文読解問題を解くためのコツを挙げています。

答えが書かれている箇所の探し方

『英検分野別ターゲット 英検準1級リーディング問題』「どのように読み進めるか」イメージ図より)

この例題は空所補充問題(大問2)ですが、読み方の基本は内容一致問題(大問3)でも変わりません。まずはタイトル、それから設問(選択肢)を見ましょう(①②)。それから、本文に目を通します(③)。大意がつかめたら、空所補充問題(大問2)の場合は、空所の前後をもう一度念入りに読んで話の流れを分析し、それに合う選択肢を選びます。内容一致問題(大問3)は、設問中のキーワード、つまり固有名詞や具体的な数値などを念頭に、スキャニングで本文を読み返しましょう。そして、「答えに直結する内容が書かれている」と思われる箇所を見つけたら目を止め、その辺りを入念に読んで解答します(④)。

英検準1級の空所補充問題(大問2)では、空欄があるパラグラフを集中して読み込み、話題の展開を把握すれば解けることがほとんどです。内容一致問題(大問3)では、⽂章の流れと設問の順序がほぼ対応しています。また、大問3の長文は分量が多いので、パッセージ全体を読み終えてから答えるやり方では、細部を忘れてしまう恐れもあります。したがって、パッセージを全部読んでから解答するより、設問を解くのに必要な1ないし2パラグラフを読んでは選択肢を選ぶという、「そのつど読んで解答していく」方法のほうが効率的でしょう。

キーワードや疑問詞から絞り込む

空所補充問題(大問2)にも内容一致問題(大問3)にも共通して言えることですが、人名や地名などの固有名詞には、大文字から始まるため目立ち、スキャニングしやすいという特徴があります。設問や選択肢の文章に固有名詞が含まれていたら、本文からその語をピックアップし、前後をよく読むようにしましょう。

内容一致選択問題には、文を完成させるタイプのほか、設問が質問文であるタイプが一定数出題されます。この質問文は疑問詞を用いているので、「Why から始まる設問だから、本文中の理由を述べている箇所の辺りに答えがあるかな」などと、解答が書かれている場所を絞り込むことができます。

選択肢の選び方

空所補充問題(大問2)は、空欄の前後の文章をしっかり読み、全体の構成を考え合わせて選ぶのがコツです。選択肢を一つずつ入れてみて、内容が合わないものを外す方法もあります。選択肢はいずれも、空所にあてはめても文法的には問題のない語句なので、純粋に内容を考えて正解を選びましょう。

内容一致選択問題(大問3)では、本文中の表現をそのまま使っている選択肢は、引っかけの可能性があるので要注意です。本文内で使われている言葉が、設問や選択肢の中では異なった表現で使われていることが多々あります。そのような言い換え(パラフレーズ)にも注目して、引っかからないように気をつけましょう。

よく出るテーマごとの覚えておきたい単語

準1級に出題されやすい各分野のキーワードを以下に挙げるので、テーマの把握やレベル感の参考にしてください。そこから連想することを日本語でWeb検索してみたり、英語でならどう言うか調べたりするのも、背景知識を身に着けることと単語力の強化に有効です。

自然・環境

atmosphere(大気圏、大気)、biodiversity(生物多様性)、carbon neutrality(カーボンニュートラル、炭素中立)、fossil fuel(化石燃料)、hereditary(遺伝的な、先祖代々の)、molecule(分子、微粒子)organism(生物、有機体)、renewable(再生可能な)、sterile(不毛の、不妊の)

医療・テクノロジー

antibiotic(抗生物質)、compound(化合物)、drone technology(ドローン技術)、genetic engineering(遺伝子工学)、hygiene(衛生)、interface(橋渡し、境界面、インターフェース)、methodology(方法論,研究方法)、practitioner(開業者、実践者)、singularity(技術的特異点)、3D printing(3Dプリント)、live stream(生配信)

文化・歴史

absorption(吸収、併合)、ally(同盟国)、cultural property(文化財)、endangered languages(消滅危機言語)、relic(遺跡、遺物)、civilization(文明)、rite(儀式)、usage(語法、使用法)、intruder(侵略者,侵入者)、dictator(独裁者)

教育・心理

alternative education(代替教育)、anonymity(匿名性)、deduction(推論、控除)、interdisciplinary(学際の、異なる学問分野間の)、learning disability(学習障害)、tolerance(耐性、寛容)、tuition(個人教授、教育、授業料)

社会・ビジネス

criminal accusation(刑事告発)、disclosure(暴露、情報開示)、ethical consumption(エシカル消費)、fintech(ITを利用した革新的金融サービス、フィンテック)、recession(不況、景気後退)、vocational training(職業訓練)

長文読解問題 日ごろの学習法

英検準1級の長文読解対策には、分量のある英文をふだんから読んで慣れるようにしましょう。レベルとしては、The Japan Times、The Japan News、Time、Newsweekなどがおすすめです。これらのニュース英語を読む手助けとして、旺文社「英語の友メディアサイト」のコラム「写真で読み解くニュース英語」も役立ちます。毎回1つのテーマを取り上げ、そのテーマについて解説しながら、関連する単語や表現を紹介しているので、英語でニュースを読む際に知っておくべき知識が身につきます。

また、多読と精読の両方を意識してトレーニングしましょう。試験では読むスピードが重要です。ですからわからない単語があってもとにかく読み切り、その語の意味を前後や大意から推測する力をつける必要があります。かといって多読ばかりしていると、「実は細部が読めていない」という事態に陥ったりします。時には和訳をしてみて、正確に読めているか確認するとよいでしょう。

語彙力に関しては、時事問題、健康、医療、自然、科学など、専門性の高い単語を積極的に覚えましょう。英検準1級では、かなり専門的な語彙・話題が出題されます。専門的な書籍・雑誌を読める必要はありませんが、英字新聞を読んで問題ない程度の語彙力があるとよいでしょう。また、日本語でもよいので、新聞や社会派の雑誌には日ごろから目を通すようにしましょう。社会問題についての幅広い知識が読解を助けてくれます。北米、特にアメリカ合衆国に関する話題が多く出される傾向がありますが、ほかの国や地域についても出題されます。世界の国々の英語の名称や位置や文化、産業を知っておくと、理解に役立つ可能性があります。

参考書

2024年に英検がリニューアルされ、長文読解問題に関しては準1級では長文1つが削減されました。しかし長文読解の空所補充問題と内容一致問題が出ること、説明文や評論文が出題されることには変わりがないので、勉強すべき内容は従来と変わりません。

英検準1級の長⽂読解問題の傾向を知るには、『2024年度版 英検準1級 過去6回全問題集』がおすすめです。2024年に行われたリニューアルについても特集ページが設けてあるので、変更ポイントを調べたい方にもおすすめです。本番の一次試験と同じ形式で読解問題を演習したい方には、『7日間完成 英検準1級 予想問題ドリル』が向いています。英検準1級の一次試験に向けてじっくりと対策したい方には、『DAILY26日間 英検準1級 集中ゼミ』が向いています。英検準1級のリーディング対策に専念したい、とにかくたくさんの英⽂を読んで演習したいという⽅には、『英検分野別ターゲット 英検準1級リーディング問題』がおすすめです。

『英検分野別ターゲット 英検準1級リーディング問題』

英検準1級の合格には、長文読解力が欠かせない!

本書は、英検準1級のリーディング(長文読解)問題に特化した対策書です。英検の出題形式に即して、長文の読み方、問題の解き方、日頃の学習法などを詳しく解説しています。41のオリジナル⻑⽂問題を解いて実⼒を培うことができます。巻末には重要単語のリストもついていて、英検準1級の長文を理解するのに役立ちます。Chapter 3「模擬テスト」の読み上げ音声は、旺文社リスニングアプリ「英語の友」でも無料で聞くことができ、読む・解く・聞くの3方面から学習することが可能です。

また言うまでもないことですが、リーディングには語彙力が不可欠です。特に英検準1級の場合、多岐にわたるジャンルの単語を知らなければいけません。単語集『英検準1級 でる順パス単』などを使い、こまめに覚えるようにしましょう。分野別に単語を覚えながら長文に慣れたいという方には、『英検準1級 文で覚える単熟語』がよいでしょう。旺文社リスニングアプリ「英語の友」を使えば音声を無料ダウンロードして、空き時間に耳で学習することも可能です。

まとめ

英検準1級のリーディングについて把握できたでしょうか? 分量があり、難度も高い英検準1級の長文読解問題の対策は、一朝一夕にはできません。日々の努力を重ねて、合格を勝ち取ってください!