2020年の初頭には想像もしていなかった世界が私たちの目の前に広がっています。

この「今を生き抜く英単語」シリーズは、私たちの考え方や生き方の転換が起こっている今、それでもこの世界を生き抜いていけるようなメッセージを、英単語を切り口に、さまざまな分野で活躍する著者から発信していただきます。

最近耳にするカタカナ英語

世界中が大変な危機に直面しています。コロナウイルスに罹患された方や経済的被害を受けられた方、そのほかにもさまざまなご事情で大変なご苦労をされている方も多いことでしょう。まずは皆さまにお見舞い申し上げます。

今回のことで働き方もずいぶん変わりましたね。私もスタッフとの打ち合わせはリモート会議になり、英会話教室は対面でなくなり、オンラインレッスンの需要が増加しました。今年は新たに民泊事業に挑戦する計画がありましたが、コロナ禍で予定が狂い、少々落ち込んだりもしました。

ただ、ステイホームしながら静かな日々を過ごすうちに、心と体のメンテナンスができ、実はネガティブなことばかりではないかもしれない、と考えるようになりました。

社会全体で考えてみても、これまでの固定概念をくつがえし、発想の転換をするなど、今まであたり前だと思っていたことを見直す、よいきっかけになったのではないでしょうか。

そんな中、新聞やニュースではなにやら耳慣れないカタカナ英語が聞こえてくるようになり、期せずして、新しい言葉が生み出され、広がっていく過程を目撃することとなりました。ただ、ネイティブ目線で見ると、やや違和感をおぼえるフレーズや若干補足したほうがより伝わりやすいのでは、と思える言葉も。

コロナ後の新たな時代を生き抜く一助になれば、との思いを込めて、最近耳にするカタカナ英語たちを改めて取り上げ、皆さんとともに理解を深められればと思います。

overshoot(オーバーシュート)「爆発的感染による重大局面」

私自身、いちばん違和感があったのがこの言葉です。本来、overshootは動詞として「(目標を)通り越す、多く見積もる、過度に期待する」などを意味する言葉。そもそもは「(相場や有価証券価格の)行き過ぎた変動」を指す金融用語です。その「過度な変動のイメージ」から、今回の「(爆発的感染による)重大局面」を表す言葉として使われるようになったのかもしれません。英語では「ウイルスが overshoot する」というのは一般的な使い方ではなく、海外の関連サイトでは、同様の状態を表現するのに in a critical phase(due to an explosive transmission)といったフレーズが使わることが多いようです。

lockdown(ロックダウン)「都市封鎖」

lockdown は本来、安全のため生徒を帰宅させずに避難させる「(学校内の)避難」、または刑務所内で暴動が起きた後に安全のため囚人を閉じ込める「(囚人などの)監禁、(刑務所内の)封鎖」などの意味で用いる単語です。そこから「市民の安全のため、都市内に閉じ込める」「市民の安全のため、都市を封鎖する」意味で用いられたのでしょう。封鎖する範囲を「都市」と限定するのであれば、citywide lockdown や citywide shutdown などにすると、より明確になります。

cluster(クラスター)「集団感染」

cluster は、名詞では「(同種類のものの)群れ、集団 」、動詞では「(…の回りに)密集する、群がらせる」を意味します。a cluster of cases「感染者の一団」のような表現はできますが、cluster という単語そのものが「感染する・させる」のような意味を持つわけではありません。「集団感染」を英語で表現する場合は、「(疫病などの)急激な増加、大流行」を意味する outbreak でOK。海外の報道を見ると coronavirus outbreak で「コロナウイルスの集団感染(大流行)」という表現が多いようです。

今回のことで、人とのかかわり方は大きく変化しました。握手やハグは永遠に世界から消え去るかもしれません。でも私たちにはsmileがあります。遠くからでも好意を伝えらえるsmileを絶やさず、コロナ後の新たな時代を共に生き抜いていきましょう。