「ジャーナリング」というメンタルケアの方法をご存じですか? 長沼奈絵子先生と一緒に、英語でのジャーナリング×ポジティブ心理学の世界をのぞいてみましょう。英語で書くからこそ、自分の心に向き合えるこの方法、みなさんの生活にも取り入れてみませんか。

「よいこと」と「それが起きた理由」を書いてみよう

Welcome to the second episode of the Journaling Journey series!
前回は、「ジャーナリング」「ポジティブ心理学」「ウェルビーイング」について、また「英語でのジャーナリングがどうしてウェルビーイングの向上に役立つか」について説明しました。今回のコラムでは、「3GT(3 Good Things)」について、またそれを取り入れた英語でのジャーナリングについてお話ししていきます。

■「3 Good Things(3つのよいこと)」とは?

2005年、『American Psychologist』誌に、ポジティブ心理学の提唱者の一人であるマーティン・セリグマン博士らによる論文が掲載され、ポジティブ心理学介入*1 の実験結果が紹介されました。

*1 ポジティブ心理学介入……ポジティブ感情の向上、主観的幸福度の上昇やうつ症状の緩和などを目指して行う科学的根拠のある活動やエクササイズ。

実験では、参加者をランダムに2つのグループに分け、5つの介入方法の効果を検証しました。検証の結果、最も安定して効果が長く続いた介入方法が「3 Good Things (3GT)」だったのです。

具体的には、3GTを行ったグループは「その日に自分に起きたよかったこと3つ」と「そのよいことがどうして自分に起きたのか」について書くという作業を、夜寝る前に1週間続けるように指示されました。もう1つのグループには「小さい頃の思い出」について夜寝る前に1週間続けて書くという指示が出されました。介入期間終了直後、1か月後、3か月後、6か月後に幸福度とうつ症状を計測し、その結果の分析を行いました。

結果として、3GTを行ったグループは、介入直後の計測で幸福度がかなり上昇し、その効果が1か月後、3か月後、6か月後と上昇し続けました。うつ症状の数値も下がり、6か月後も下がったままでした。もう一方のグループでは、直後の計測で幸福度の上昇とうつ症状を示す数値の下降がある程度見られたものの、1週間以内に研究参加前の数値に戻ってしまいました。さらに、3GTを行ったグループの参加者の中には、介入が終わった後にも自主的に3GTを続けた参加者がいて、その参加者らの幸福度は特に高かったと報告されています。

■3 Good Things x Journaling in Englishの効用とは?

「3 Good Things(3つのよいこと)」を英語でのジャーナリングに取り入れることで、どんなよい効果が期待できるでしょうか?
私たちには「ネガティビティ・バイアス」「選択的注意」が脳の仕組みとして備わっています。「ネガティビティ・バイアス」の影響で、無意識的にネガティブな物事に目がいったり、それが心に強く残ったりすることがあります。一方で、「選択的注意」のおかげで、日常に多く存在する刺激の中から必要な情報だけに注意を向けることができるという側面もありますが、これと「ネガティビティ・バイアス」の影響が組み合わさると、否定的なことばかりに注意が向いてしまう場合もあります。ネガティブなことばかり考えてしまう自分を責めてしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。
3GTを英語のジャーナリングでやってみよう、と決めたとしましょう。そのことで、まず、ジャーナリングのために「自分に起こったよいことを見つけておこう!」という小さなタスクが自分に課されます。忙しい一日を送る中でも、ふとした瞬間に「よいこと」に目を向けるように脳を訓練するイメージです。気がついたときに手帳やスマートフォンのメモ機能を使って「よいこと」を書き留めてみるのもいいですね。忙しすぎて書いている暇はない! という人もいらっしゃるかもしれませんが、それでも大丈夫です。自分に起こった「よいことを探そうとする」ということ自体、そして、その視点の変換を起こそうとすること自体に効果があるのです。

■3GTからより高い効果を得られる秘訣

3GTからより高い効果を得るためにはコツがあります。それは、「よいこと」を思い起こすときに「自分の思考や行動で起こったよいこと」を思い出して書いてみることです。例えば、「今日はお天気がよかった」という「よいこと」を思い出したとしましょう。確かにこれは「よいこと」なのですが、そこから視点を変換して、「自分の思考や行動で起こったよいこと」がなかったかな? と考えてみてほしいのです。こうすると、例えば「今日はお天気がよかったから、お弁当を外で食べることにした」のように、自分の選択した行動を思い出せそうですね。このように、自分が選択した思考や行動に目を向け、その選択をしたことで「よいこと」が自分に起こったと認識することが、3GTの効果を高める秘訣だと言われています。「どうしてそのよいことが自分に起こったのか」を考える過程で、自分が選んだ自分の行動によって「よいこと」が起こっているという事実を脳に学習させているような感覚です。

実践編:Let’s Write 3GT in English!

さて、いよいよ3GTを英語で書いてみましょう。寝る前の5分~10分を使い、一日を振り返ります。もしメモを取っていたらそれを参照してもいいですね。どんな「よいこと」があったでしょうか? そのよいことは「どうして自分に起こった」のでしょうか? 自分が選んだどんな行動や思考が「よいこと」が起こるきっかけや要因になったのか、考えてみましょう。それを英語で書いてみます。
一例として、次のような順番で書いてみましょう。
 (1)[よいこと]と[理由]を、それぞれ <主語+動詞> の形で書く
 (2) <主語+動詞> で書いた[よいこと]と[理由]を、because や so でつなぐ
さっそく例を見てみましょう。

  • ① Because[理由], [よいこと].
  • Because it was very warm today, I enjoyed my lunch outside and felt refreshed.
    今日はとても暖かかったので外でランチを楽しんで、気分がすっきりした
  • Because I came home earlier than usual, I tried a new recipe for dinner, and it tasted amazing!
    いつもよりも早く家に帰ったので夕食に新しいレシピを試して、それがすごくおいしかった!
  • ② [理由], so[よいこと].
  • It was very warm today, so I decided to have my lunch outside and felt so happy.
    今日はとても暖かかったので外で昼食をとることにして、とても幸せな気分になった
  • The weather was very beautiful this afternoon, so I took a 10-minute walk and was able to clear my mind.
    午後、とても天気がよかったので10分間の散歩をして、気分をすっきりさせることができた

いかがでしょうか。
別の方法として、次の③のように、[理由]の部分を名詞の形にしてもいいですね。
[よいこと]は <主語+動詞> の形で書いてください。そこに、thanks to[理由(名詞)]をくっつけるイメージです。例を見てみましょう!

  • ③ [よいこと]thanks to[理由]. / Thanks to[理由], [よいこと].
  • My colleagues and I were able to enjoy lunch outside thanks to the great weather today.
    今日は天気がよかったおかげで同僚たちと外でランチを楽しむことができた
  • Thanks to my co-workers’ help, I came home earlier and enjoyed reading my favorite books after dinner.
    同僚たちの助けのおかげで早く家に帰り、夕食後にお気に入りの本を読んで楽しんだ

今回は、自分に起こった「3つのよいこと」と、それが「どうして自分に起こったのか」を振り返って、一日の終わりに英語で書いてみるということにどんな効用があるかについてまとめました。よいことを3つも英語で書くのが難しければ、まずは1つだけでも英語で書いてみませんか?
一日を振り返って「よいこと」探しをしてみると、心地よく眠りにつけるかもしれません。ぜひ試してみて下さいね。

次回は「Not yet ジャーナリング」を取り上げます。
I hope you will enjoy writing “3 good things” in English! See you next time!

参考文献:
Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive Psychology Progress: Empirical Validation of Interventions. American Psychologist, 60(5), 410–421. https://doi.org/10.1037/0003-066x.60.5.410