NY発 Survival English #2 I’m on the market!

ニューヨーク在住18年の著者が、大都会を “Survive” する中で体得した英単語・フレーズをご紹介! どうしてその言葉が必要なのか、その背景にも迫ります。
「恋愛市場」に出ていますか?
「所変われば品変わる」とは言うもので、同じ大都市でもニューヨークと東京では、人々の習慣や価値観が異なることが多々あります。働き方、結婚・出産、資産の捉え方…など、私が実生活の中で体得したことは数知れず。そして、その中のひとつが、恋愛です。
今回紹介するのは、恋愛市場での Survival English。私が実際にトライアンドエラーを繰り返しながら学んでいるフレーズをご紹介します。
●Are you “single”? Or Are you “taken”?
ある夏、ジャズミュージシャンである友人の演奏を聴きに、ブルックリンのバーに出かけました。一人でテーブルについたこともあってか、向かいに座る男性と目が合い、軽い挨拶から会話がスタート。
What brought you here?(どうしてライブに来たの?)
Are you a neighbor in this area? (この地域のご近所さん?)
What do you do for a living?(どんな仕事をしているの?)
など、初対面同士がよくする会話をしました。
偶然にも彼と私は近所に住んでいることと、共通の友人(ジャズミュージシャン)の演奏を聴きに来ていたことがわかって意気投合しました。そしてひょんなことから恋愛・結婚観の話題に。
I’m currently single. I would like to get married someday, but it doesn’t seem to me my boyfriend is ready to commit.
(私は今 single だよ。いつか結婚したいと思っているけど、彼氏はまだ結婚に踏み切る準備ができてないみたい。)
と呟いた私。
当時、私には付き合っている相手がいましたが、未婚だったので自分のことを “I’m single.” と表現しました。日本でよく使われる「独身」とまさに同じニュアンスです。single を辞書で引くと、「独身の、1人用の、独身者」などと書かれていることが多いと思います。しかし、そのとき彼の表情が「???」となったのを、私は見逃しませんでした。
一瞬の沈黙のあと、彼はこう言いました。
So… are you single? Or are you taken?
(それで…君は single なの? それとも taken なの?)
続けて、
You say you’re currently single, but you are in a relationship…?
(今 single って言っているのに、付き合っている相手がいるってこと…?)
と、まだ「?」が頭から離れない様子。
そこで私は自分の考える “single” の定義を彼に説明しました。すると、“Ah, gotcha!”(そういうことね!)と彼は言って、次のように教えてくれました。
「single というと、独身(未婚)というより、恋人(特定の相手)がいないという意味で使われる方が一般的な気がするな。だから、君の場合は taken(恋人がいる) だね」
ちなみに、日本で特定の相手がいない状態を「私は今フリーです」と表現することがあると思います。それを “I’m currently free.” と直訳してしまうと、「私は今、時間があります」という意味になってしまい、相手に趣旨は全く伝わらないので、要注意です!
さてその後、私が彼に “So… are you single or taken?” と同じ質問を投げたところ、
I’m on the market!
((恋愛)市場に出ています=相手を探しています!)
と答えが返ってきました。
私はそれを聞き、いたく感動しました。映画でこのセリフを聞いたことはありましたが、実際に目の前で人が使っているのを聞いたのは初めて!
“I’m single.”(特定の相手はいないよ。)や “I’m looking for someone.”(誰か探しているところだよ。)ほど直接的ではないですが、自分のステータスをクリアに表現できるこのフレーズ。それ以後、気に入ってよく使う Survival English の1つとなりました。
●Available / Unavailable
ニューヨークの恋愛市場を語る際に注目すべきイベントの1つが、バレンタイン。一般的に欧米のバレンタインは、愛する人と一緒に過ごす日として知られており、日本でよくある女性から男性へチョコを渡して告白したり義理チョコを配ったりするイベントとは認識が異なります。
毎年2月14日、ニューヨークの街中は “Happy Valentine’s Day” の掛け声が溢れ、バラやハートの赤色に染まります。男女のカップルの場合は、男性から女性にバラの花、カード、チョコレートなどを贈るのが主流ではありますが、カップルの形もさまざまなので、お祝いの仕方も多種多様。
決まった相手がいる人向けのバレンタインではありますが、この街では毎年必ずどこかで single でも楽しめるユニークなイベントが開催されています。今年のバレンタインに私が参加した5kmのランニングレース Cupid’s Chase 5K Brooklyn もその一つ。
現在 on the market である私は、「フットワークは軽く、面白そうなイベントには一人でも足を運んでみること」と日々心に誓っているため、レースへの参加をすぐに決めました。さらに、参加の決め手となったのが、参加者用景品のTシャツがキュートであったこと!

背中にプリントされたストレートなメッセージ “Available / Unavailable” は、バレンタインに着ることでその意図が一瞬にして分かるのも粋な計らいです。レース登録時、Tシャツについての説明は以下のように書かれていました。
“Select WHITE if you’re single and ready to mingle. Select RED if you’re taken and off the market.”
(特定の相手がおらず、出会いを求めている方は、白を選んでください。すでに交際相手がいて、恋愛市場から降りている方は、赤を選択してください)
つまり、白の Available は on the market(恋愛市場で売り出し中)の人用、赤の Unavailable は off the market (恋愛市場で売約済)の人用というわけです。ちなみに、ここに出てくる mingle とは、「(~の)仲間に入る、(~と)付き合う」という意味を持ちます。「混ざる」という意味から発展して、 社交的なニュアンスを含んでおり、パーティーや社交の場で人と打ち解ける際によく使われる表現です。また、off the market は on the market と対照的な表現で、「恋愛市場にいない」=恋人や配偶者がいて現在 single ではない、恋愛市場において「売り切れ」の意味を持ちます。
これに沿うと、一緒に参加することになった友人と私は、共に single, on the market なので、白の Available Tシャツということになります。一方で、バレンタインを象徴する赤色に一目惚れしていた私たちは、「赤のデザインが欲しい!」とも思っていました…。しかしながら、赤を着て Unavailable(交際相手アリ)と思われることで on the market(恋愛市場売り出し中)と思ってもらえないのも…と、真剣に悩みました。そこで私は、赤いシャツの Unavailable の文字を細工して(Un を白いビニールテープで覆って)Unavailableとすればよいのでは!? というアイディアを提案したのですが、そんな小細工は誰も見ないと言う友人の力強い一言、
Remember the reason why we participate in the race. “We are on the market!”
(なぜこのレースに参加するのか、目的を忘れてはダメよね。「私たちは売り出し中!」なんだから。)
に説得され、正直に白(Available)のシャツを受け取りました。
レース当日、約1,500人の参加者の多くが Available / Unavailable のシャツを着ており、コース上は紅白で染まっていました。
ニューヨークが舞台のラブコメディやロマンス映画・ドラマを観ては、「そうなのよ!」と強い共感を覚えたり、「こういう表現をするのか!」と新たな発見があったりします。一方で、恋愛は生身の人間が触れ合うもの。私自身、その喜怒哀楽の中で出会ったフレーズだからこそ、深く心と脳に刻まれ、自分の言葉として噛み砕いて使えるようになったと実感しています。マッチングアプリの利用が主流になっている恋愛市場ですが、こと “恋愛 Survival English” においては、生身の人間と触れ合うことの方が学びの近道ではないかと思います。

ニューヨーク観光ガイド・プロジェクトコーディネーター・編集&ライター・New York Road Runners(NYRR)フロントスタッフ
神奈川県藤沢市出身。日本大学 芸術学部 放送学科卒業後、一般企業での総務経理、編集プロダクションでの編集・執筆、旅行代理店での手配・添乗業務を経て2007年単身ニューヨークへ。以降、フリーランサーとして活動。FIFA W杯、オリンピック、ワールドマラソンメジャーでの現地帯同をメインにスポーツツーリズムにも従事。マラソンランナー。NYRRのスタッフとして世界最大のマラソン「ニューヨークシティ・マラソン」の運営に関わる。「好きを仕事に」を自分へのスローガンとし、ニューヨークでサバイバル中。
